表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
逆ハーに巻き込まれた幼馴染を助けるために、群がるハエは一匹残らず駆逐します!  作者: 花宵
第3章 ローレンツ公爵家のレオンハルトを駆逐せよ!

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

26/43

第25話 伝説を作った男

 白い水蒸気が階段を覆うベールのように流れ出ている。まるで雲の上を歩いて上っていくかのような、幻想的な階段だった。

 絵本の中に出てくるようなメルヘンな氷の城。だが不思議と寒さは感じない。壁に触れても冷たくはない。


「ルーカス、どうしてA組のスタンプカードを預かったのですか?」


 ヘンリエッタに預かったカードにスタンプを押そうとした時、バルコニーからこちらへ戻ってこられたアリーシャ様に、唐突にそう尋ねられた。


「え、も、もしかして、別のクラスのスタンプを押すのは、ルール違反だったりします?!」


 やっべ、そこまで確認してなかった。自分で押したスタンプしか無効って言われたら、ヘンリエッタに申し訳が立たない。


「あくまでも四つのスタンプを集めてくること。ルールはそれだけですよ。安心して下さい」


 慌てふためく俺を見て、アリーシャ様は優しく目を細めて微笑みかけて下さった。


「ヘンリエッタ様には雷の迷路で助けて頂きましたし、恩を借りたまま返さないのはフェアじゃないって思いまして。クラス対抗イベントなのに、変なのは分かってるんですが……」

「どのような手段を使っても、最初に四つのスタンプを集めて提出したクラスが一番なのです。そのためカードを奪って破棄し、他クラスの生徒を失格にさせたりと、過去には血気盛んな学年もあったそうです」

「妨害行為も許されるんですか?」

「はい。あくまでもルールは四つのスタンプを集めてくる事ですから。ですが、考え方次第では全てのクラスが一位となる方法もあるのですよ」

「マジですか?!」

「ええ。過去に一度だけ、そうやってクリアした学年があるそうです」


 お貴族様同士がそこまで結託するって、よっぽどの仲良しか、すごく統率のとれるリーダーが居たのか。何れにせよ、入学したばかりで学年一つをまとめ上げてそんな事が出来るなんて、普通の奴には中々出来る事じゃない。だが一人だけ、そんな事をやってのけそうな人物に心当たりがある。


「約二十年ほど前、リシャール公爵家のアレクシス様が、全クラスのスタンプカードを重ねて同時に提出されたそうです。前代未聞の展開に、その時は皆さん大変驚かれていたそうですよ」


 やっぱりか。アリーシャ様の言葉に、妙に納得させられた瞬間だった。アレク先生ならやりかねないなと思ったから。

 先生の成す事は基本、奇想天外な事が多い。まじめにやってたら、逆にどうしたんですかって心配したくなるレベルの人だった。

 それでも不思議と、この人について行けば間違いないって安心感を与えてくれるのだ。


「アレク先生のカリスマ性は、学生時代から健在だったんですね。本当にすごい方だと思います」

「そうですね。『切磋琢磨して学んでこそ、人は向上心を持って取り組める。だからこそ学び舎にまで身分制度を持ち込む必要は無い。我々はライバルであると同時に、苦楽を共にする大切な仲間なのだから』というアレクシス様の残された格言は、本当に素晴らしいものだったと私も思います」


 アレク先生は、俺達が平民だからと馬鹿にする事なんて一度もなかった。魔法の楽しさと、正しく使う事の重要さ、そして互いに支え合う事の大切さを教えてくれた。


「誰もが平等に上を目指して頑張っていたあの頃のように、学園を変えていかねばなりませんね」


 ダリウスがアリーシャ様に憧れる理由が、よく分かった気がした。強い意志の籠もった眼差しは、どこまでも綺麗に美しく澄んでいた。この方は本当に、それを望んでいるのだと容易に見てとれるくらいに。


「引き止めてしまってごめんなさいね。今年の一年生は希望が持てそうだったから、つい長話になってしまったわ。残りのスタンプも頑張って集めて下さい」

「はい、頑張ります! ありがとうございました。それでは、失礼します」


 A組の分までスタンプを押した俺は、一礼してその場を後にした。幻想的な透き通った氷の階段を降りて向かうのは勿論、A組の所だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
書籍1巻が『角川ビーンズ文庫』より発売中です!
呪われた仮面公爵に嫁いだ薄幸令嬢の掴んだ幸せ
(クリックでAmazon作品ページへ)

『B's-LOG COMIC』より、コミックス1巻が7月1日(火)に発売します!
呪われた仮面公爵に嫁いだ薄幸令嬢の掴んだ幸せ
(クリックでAmazon商品ページへ)

コミカライズの試し読みは下記のリンクをご利用ください!(1話無料でお読みいただけます)
カドコミ

+ + +
「第11回ネット小説大賞」で小説賞受賞
書籍1巻が『ブシロードノベル』より発売中です!
訳あり令嬢は調香生活を満喫したい! ~妹に婚約者を譲ったら悪友王子に求婚されて、香り改革を始めることに!?~
(クリックでAmazon商品ページへ)

『コミックグロウル』で、コミカライズの連載始まりました!
訳あり令嬢は調香生活を満喫したい! ~妹に婚約者を譲ったら悪友王子に求婚されて、香り改革を始めることに!?~
コミカライズの試し読みは下記のリンクをご利用ください!(1話無料でお読みいただけます)
コミックグロウル

+ + +
「第1回BKコミックスf令嬢小説コンテスト」で佳作受賞
コミカライズ単行本1巻が、『BKコミックスf』より、発売中です!
汚名を着せられ婚約破棄された伯爵令嬢は、結婚に理想は抱かない
(クリックでAmazon作品ページへ)

コミカライズの試し読みは、下記の先行配信先をご利用ください!
ピッコマ作品ページ

+ + +
COMICスピア コミカライズ原作大賞で、
準大賞と特別賞を頂きました!
2月22日(土)より、コミカライズ連載開始!
異世界転生して幻覚魔術師となった私のお仕事は、王子の不眠治療係です
(クリックでRenta!販売ページへ)

小説の電子書籍はコチラ↓ 異世界転生して幻覚魔術師となった私のお仕事は、王子の不眠治療係です
(クリックでRenta!販売ページへ)
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ