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逆ハーに巻き込まれた幼馴染を助けるために、群がるハエは一匹残らず駆逐します!  作者: 花宵
第3章 ローレンツ公爵家のレオンハルトを駆逐せよ!

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第23話 オリエンテーションの真意

「それにしても、暗いですね」


 迷路で視界が悪いとか、一番厄介な奴じゃないか。

 壁を覆うように雷が走っているものの、周りを照らせる程の明るさはない。

 壁のギリギリを歩いていけば視界が見えない事もないが、触れれば強制的に入口に戻される。

 安全のためには通路の真ん中を歩くに越したことはない。だが、そうすると足元が暗くておぼつかない。


「そうなんですよ。私一人では辺りを照らす事が出来なくて。罠に引っかかってしまい、入口へ戻されてしまいました」


 なるほど。周りを明るく照らせるような火属性の魔法持ちが居ないと、この迷路を抜けるのはキツいだろうな。

 ちょっと待て、そういえばさっき北方では火を消せるような水属性の魔法持ちが居ないとサンドリア様の罠を抜けれなかった。

 仲間を見捨てていったら通過できないってエレインが言ってたのは、この事だったのか。

 各地点のスタンプ場に至る道筋に張り巡らされた罠を抜けるには、適した魔法の属性持ちの力が必要というわけだ。

 この迷路で多くの奴等が立ち往生してるのは、辺りを照らす魔法が使えない生徒達だろう。照らせる奴等は罠さえ気を付ければ多分、自力でゴールへ辿り着ける。

 そうすると、火属性の魔法持ちばかりがスタンプ場へ集まっている事だろう。スタンプ場へ辿り着いた奴等が戻って来ないのはきっと、火属性の魔法持ちが不利な罠が張り巡らされているせいだ。西方のフィールドは湖って書いてあったし、多分待っているのは水属性魔法の使い手と思って間違いないだろう。

 ほんとえげつないな、このオリエンテーション。でも、何となく仕組みは分かってきたぞ。


「ヘンリエッタ様。歩きやすいように、俺が周囲を照らします」


 とりあえず、視界を明るくするために俺は創造魔法でミニ太陽を作った。俺達の上を常に照らし続けるように特性をかけて。


「すごいです、ルーカスさん! 太陽を創ってしまうなんて……でもこれで、ゴールまでいけそうです! 私が案内しますので付いてきて下さい」

「ヘンリエッタ様はどこにゴールがあるか、ご存知なのですか?」

「はい。大地の声が教えてくれますので」


 これはラッキーだったな。無駄に歩き回らなくて済む。

 だが道筋を知っているとはいえ、罠があると分かっている道を女の子に先に歩かせるのは忍びない。


「ヘンリエッタ様、罠があると危険なので俺が先頭を歩きます。後ろから道順を教えて頂いてもよろしいですか?」

「はい、勿論です! お気遣いありがとうございます」


 本当に丁寧な子だな。エレインにヘンリエッタの爪の垢を飲ませたら、少しは腹黒さが緩和されるだろうか。なんて失礼な事を考えながら、ヘンリエッタの指示に従って迷路を抜けていく。


「そこに段差がありますので、お気を付け下さい」

「はい、ありがとうございます!」


 途中、足場が滑りやすい箇所や、段差があったりなど、視界さえ見えれば何てこと無い罠をくぐり抜けた所で、何度目かも分からない分岐点に来た。


「ルーカスさん、時間はかかりますがなだらかで平坦な道と、短いですが危険が多い道、どちらを選びますか?」

「出来れば早い方がいいですが……」


 ヘンリエッタの息がかなり上がっている。無理もないだろう。罠自体はそこまで危険なものではなかったが、無駄に段差が多かったり、障害物を飛び越えたり、乗り越えたりなど、小さな身体の女の子には結構ハードな道のりだった。


「なだらかで平坦な道を行きましょう。急がば回れと言いますし」

「ルーカスさん、私に気を遣って下さっているのなら大丈夫ですよ」

「いえ、そういうわけでは……」


 否定したその時、ぐーと何ともしまりのない音が俺の腹から鳴った。

 くそっ! 魔法使いすぎて腹減った。何でこのタイミングで鳴るかな、めちゃくちゃ恥ずかしい!


「す、すみません! お見苦しいものを聞かせてしまって……」

「少しだけ、休憩にしませんか?」


 そう言ってヘンリエッタは、腰に下げたポーチから、アイテム保管用の魔道具を取り出した。中に入れたアイテムを小さくして持ち歩ける便利道具だ。

 中央にあるボタンを押して魔道具を元のサイズに戻したヘンリエッタは、蓋を開けると「よかったら、こちらを召し上がって下さい」と差し出してきた。

 甘いチョコレートの香りがふわりと舞い、俺は思わず喉をゴクンと鳴らした。まさかこれは……


「父が持たせてくれた保存スイーツです。品質保持効果のある魔道具に保存してましたので、鮮度はばつぐんです。体力と魔力回復効果もありますので、よかったらどうぞ」

「も、もしかしてこれは、製菓長のガルシア公爵が秘伝のレシピで作られたザッハトルテ、ですか?」

「はい、そうですよ。しばらく寮生活になる私を心配して、父がたくさん作って持たせてくれたのです」


 秘伝のレシピで作られたザッハトルテだと?!


「お、俺なんかが……そんな貴重なもの! い、頂いても、いいんですか?!」

「はい。ずっと太陽さんを維持し続けるのは魔力を消費してお辛いですよね。すみません、ルーカスさんにばかり負担をかけてしまって。せめてこのくらい、させて下さい」

「ありがとうございます。で、では! いただきます」


 味覚、嗅覚、 触覚、視覚、聴覚と、五感の全てを研ぎ澄まし、一口一口大事に味わい記憶に努めた。

 忘れるな、この至高のスイーツを。これを再現できるかどうかで、俺の未来が決まる。

 エレインのご機嫌を取るにはもう、この至高の美味さのザッハトルテを作って食わせるしか、俺に残された道はねぇ! 


「よかったらこれ、使って下さい」


 何故かハンカチを差し出された。そこで初めて、あまりの美味さに感動して泣いている事に気付いた。

 秘伝レシピのザッハトルテ……恐るべき美味さだった。

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