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逆ハーに巻き込まれた幼馴染を助けるために、群がるハエは一匹残らず駆逐します!  作者: 花宵
第3章 ローレンツ公爵家のレオンハルトを駆逐せよ!

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第22話 ガルシア公国第二公女ヘンリエッタ

 西方は確かA組の半数がスタンプ取りに行ってたな。だが引き返してくる生徒と全くすれ違わない。

 基本、スタンプまでの道のりは中央地点から一本道に設定されている。必ずそこを通ってトラップを解除したり避けたりしなければならない仕様だからだ。

 これはまた、厄介な罠が張り巡らされてると思ったがよさそうだな。


 西方のスタンプを目指して進むと、空が暗くなってゴロゴロと嫌な音がし始めてきた。

 雷を操る魔法が使えるのは王族と先祖返りの平民だけだ。

 生徒会役員と各委員長交代で待機しているとエレインは言っていた。つまりこの先のスタンプ場に待ち構えているのは、第一王子のハイネルか? でもさっき、中央のゴールエリアにある台座の所に居たのを見たし違うよな。


 ん……この雷の感じ、なんか俺知ってるぞ。まさか……


「いらっしゃい、ルーカス。ようこそ雷の迷宮へ。ゴール出来れば西方のスタンプ場へ行けるぞ」

「ダリウス! こんな所で何やってんだ?!」

「西方のスタンプ場を守る番人ってとこだな。スタンプが欲しいなら頑張れ」

「超簡単な特別ルートとか、ない?」

「ないに決まってるだろ。そんな不真面目なこと言うなんてルーカス、兄ちゃんは悲しいぞ。昔はあんなに何事にも一所懸命で可愛かったのに……」

「じょ、冗談だってば!」


 恥ずかしいからそれ以上やめて!

 昔のこと言われんの地味にくるから!


 ダリウスが、不正に協力してくれるはずなんてないよな。余計な失言しなきゃよかった。


「いいか、ルーカス。ここはスタンプ場を囲むようにドーナツ状に迷路が張り巡らされている。中は入る度に迷路が変わる特殊形状だ。出口は二つあるから、自力で頑張れ!」

「分かったよ」


 しゃーない。行くしかないか……迷宮の入り口に足を踏み入れようとした時、「キャ!」という可愛らしい悲鳴と共に上から人が降ってきた。

 何この迷宮、上から人が降ってくる仕様なの?

 そういうの先に言ってよ、イタタタタ……

 誰かの尻にひかれた俺は、その場で無様にうつ伏せに倒れた。


「す、すみません! お怪我はありませんか?!」


 野郎だったら文句の一つや二つ言ってやろうかと思ったが、女には言えない。


「大丈夫ですよ、これくらい」


 顔をあげた瞬間、俺は驚きで固まった。

 緩くウェーブのかかった淡いピンク色の長髪に、大きな真紅の瞳を持つ美少女がこちらを心配そうに見つめている。

 小柄で華奢な体系のその少女は、A組で姫のように大事に守られていた人物そのものだった。

 何故、ヘンリエッタがここに居る?

 しかも、周りを守っていた騎士みたいなクラスメイトもつけずに。


「言い忘れていたが、雷に触れると入口に戻される仕様だ。入口で止まってると、上から次々と人が降ってくるから気をつけろよ、ルーカス」

「マジ? そういうのは、最初に言ってくれよな!」


 「うわっ」とか「またかよっ」とか野太い男共の声が聞こえた瞬間、危険を感じた俺は急いで迷宮内に入った。咄嗟に近くに居たヘンリエッタの腕を掴んで。

 次の瞬間、やはり男子生徒が降ってきて、被害に遭わずによかったと安堵のため息を漏らす。


「重ね重ねすみません。ありがとうございます」

「いえ。こちらこそ急にすみませんでした。お怪我はありませんか?」


 慌てて掴んでいたヘンリエッタの腕を離す。


「はい。私は大丈夫ですよ。一年A組ヘンリエッタ・ガルシアと申します。あの、貴方は……」

「一年C組のルーカスです」

「ルーカスさん、よろしければ一緒に出口を目指しませんか?」

「え、俺とですか? クラス違いますけど、いいんですか?」

「この迷宮は中へ入ると、どうやら一人一人違う迷路へ飛ばされるみたいなんです。多分私達は一緒に入ったので、同じ迷路へ飛ばされたんだと思います。向かう所は一緒ですし、その……早くスタンプを取りに行かなければ皆が無理をしてしまうかもしれませんし、心配なのです。私一人では途中に仕掛けられた罠を抜ける事が出来なくて、よろしければお願いします」


 ヘンリエッタはそういって頭を下げた。


「勝手を知っているヘンリエッタ様が同行して下さるのは、逆に俺の方がありがたいので、どうか頭を上げて下さい。その、俺は平民ですし、そんな丁寧にして頂かなくても大丈夫ですよ」

「すみません、つい癖みたいなものでして。ガルシア公国では、スイーツの前に身分は関係ないのです」

「はい……?」


 ここにスイーツはありませんが、何を言ってるんだこの人は。

 ガルシア公国は確か、南方の離れ小島にある「スイーツの聖地」と呼ばれる領土だ。

 エルグランド王国に属してはいるものの、かなりの独自文化があるとエレインは言っていた。


「私の身分はまだ見習いでして、製菓長である父に一人前とは認められていません。見習いのうちは、誰に対してであろうと丁寧に接しろというのが父の教えでして」


 ちょっと待て。ガルシア公国の仕組みが俺には分からない。

 公爵が製菓長ってどういう事?

 お貴族様がお菓子作るの? 自分で?

 秘伝レシピのザッハトルテ食べるには、ガルシア公爵に作ってもらわないといけないって事だよな……ハードルたかっ!


「癖なら仕方ないですね。俺は気にしないので、ヘンリエッタ様の好きな様になされて下さい」

「はい、ありがとうございます」


 なんか調子の狂うお貴族様だな。色々探りを入れたい所だが、がっついて聞くわけにもいかないし、最初はまず信頼してもらう所から頑張るか。

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