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逆ハーに巻き込まれた幼馴染を助けるために、群がるハエは一匹残らず駆逐します!  作者: 花宵
第3章 ローレンツ公爵家のレオンハルトを駆逐せよ!

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第20話 公私混同しない主義

「生徒会の仕事だよ。ルーキー君達に楽しんでもらおうと思ってね、可愛い魔獣を仕入れたんだ」


 断じて、全然可愛くない。


「てか、生徒会の役員だったんですか?!」

「あれ、知らなかった? 会長はハイネル、副会長はシリウス、僕は会計で、レオンが書記だよ。ただいま庶務を絶賛募集中。君は僕の侍従なんだから、それくらい把握しておいてよね」


 マジで学校を牛耳るエリート集団だな。おい。


「粋がる一年生をしめるのには、もってこいのイベントなんだよ、これ。そういうわけでルーカス、死にたくなかったらスタンプは諦めようね」


 命がけなの? このイベント……やだ俺、まだ死にたくないよ。

 中央のあんな分かりやすい所にスタンプが置いてあるのに、一歩でも足を踏み入れたらもれなく魔獣の餌になる。

 棘の庭園の横には、全身ドロッドロの粘膜に包まれた生徒の姿がチラホラ見えた。

 俺の視線を辿ってご丁寧にエレインが説明してくれた。


「食べられた生徒は一定時間、ああやって足止めをくらうんだよ」


 必死に粘膜を破ろうとしている生徒の中には、先ほど見事な統率を取り指揮をとっていたノワールの姿があった。ほんと容赦ないな、我が主様は。


「あの、エミリオ様。ちなみに他のスタンプ場に待機していらっしゃるのは?」

「生徒会役員と各委員長達が交代で適当に番人してるよ。新入生と親睦を深めようって、皆張り切ってるからね」


 何やってんのこの人達。暇なの? 暇なんだよね?! 上流階級の人達は遊んでてもいいんだ、畜生うらやましいな!

 でも、よくよく考えてみるとエリート集団に接近できるまたとないチャンスじゃないか。


「エミリオ様、俺……そこのスタンプが欲しいんです。少しばっかりハンデとかもらえませんか?」

「残念だね、ルーカス。僕、公私混同はしない主義なんだ。スタンプが欲しいなら、自力で何とかしなよ。それくらい、君なら出来るでしょ?」


 た、楽しんでやがる。


「頭を使いなよ。魔法使うのは禁止してないからさ」


 むしろ、魔法を使わないと突破できない仕様だろ、これ。

 中央にあるスタンプまでおよそ十メートルといったところか。

 正方形の庭園内を食虫植物の魔獣が二体ほど、のっそのっそと闊歩している。

 スタンプ台の近くにはそれとは別に、一際大きいリーダーっぽいやつが居て、上にはエレインがのっている。

 俺の目的は、このカードにスタンプを押すだけだ。別に中の魔獣を倒す必要はない。

 スタンプを押す間だけ、気をそらす事が出来れば十分というわけだ。


「いいか、まずは確実に最初のスタンプをゲットするぞ! お前達が囮になっている間に俺がスタンプを押す。分かったか?」

「かしこまりました、ゲルマン様」


 その時、我がクラスのリーダーゲルマンが手下を引き連れて進軍してきた。俺より先に出て行ったのに、今頃着いたの?!

 まぁ、少しお手並み拝見といこう。


「よし、行け!」


 手下三人が配置についた所でゲルマンが指示を出す。

 一人一体引き付けている間にゲルマンと付き人がスタンプ台を目指す。エレインが乗った大きな魔獣がすかさず彼等の邪魔をするも、付き人が大きな魔獣を引き付けゲルマンから引き離す。


「今です、ゲルマン様!」

「思ったより簡単な試練だったな。これなら楽々……」

「僕の前で、そう簡単にスタンプ押せると思ってるの?」


 いや、それ反則じゃない?

 そんな暴君上位貴族様が剣もって飛び降りてきたら、大抵の奴らはスタンプ押せないでしょ。


「え、エミリオ様……」


 可哀そうに、ゲルマンは顔面蒼白になって立ち尽くしてるし。


「チームプレイは結構だけど、友達を犠牲にして君だけ助かっても、他の試練は突破できないよ。だったら君が今すべき事、分かるよね?」


 あのサディスト腹黒エレイン様が、恐ろしくまともな事を言っている。俺の耳はおかしくなってしまったんだろうか。


「ルーカス、彼は君のクラスのリーダーだろ? リーダーのスタンプカードが破棄された時点で、君達のクラスは失格になるよ」


 エレインの持つ剣の切っ先が、ゲルマンのスタンプカードに向けられている。

 嘘だろ、何その連帯責任仕様。ルール適当にしか聞いてなかったから知らなかった。

 だが、ここで失格になるのはまずい。正攻法でエリート集団に接近できる機会をみすみす逃すなんて事、してたまるか!


 創造魔法、発動!

 棘の庭園の隅に魔獣用の大きなテーブルセットと、エレイン用の豪華なテーブルセットを作成。

 テーブルの上には、魔獣が好んで食べるパイルの実のてんこ盛りと、散々練習して創ったザッハトルテとカモミールティーが置いてある。

 すかさずエレインの所まで足を進めた俺は、礼をして主に声をかけた。


「エミリオ様、お疲れではございませんか? 僭越ながらあちらに、小休憩のご準備をしております。いかがでしょうか?」


 ザッハトルテを見た瞬間エレインの目がキラーンと輝いた。


「そうだね。喉が渇いた事だし。君達もおいで、ご飯の時間だよ」


 ゲルマンの手下達を追い掛け回していた魔獣達も、エレインが口笛を吹くと付き従ってテーブルへと集まってきた。


「ルーカス、もう作れるようになったんだ?」

「はい。昨晩、寝る間を惜しんで練習致しましたので。どうぞ食べてみて下さい」


 ガルシア公国秘伝のレシピで作られたザッハトルテを作れるようになれば、この腹黒ご主人様の扱いが楽になるかもしれない。なんて事を考えながら、呆然と立ち尽くしているゲルマン達に声をかける。


「今のうちにスタンプを!」

「助かった。恩に着るよ、ルーカス君」


 早くしないと、エレインがザッハトルテを口に入れた瞬間アウトだからな。

 急いでスタンプを押した俺達は、全力疾走でその場を後にした。

 その後「ルーカス!」という怒りの声が後方から聞こえてきたけど、聞こえてないフリして逃げた。

 製菓の本でザッハトルテの見た目はしっかり覚えたけど、食べた事ないから味は分かんねぇし適当に作ったから仕方ない。

 エレインが食べたのは、見た目はザッハトルテ、味は今朝俺が食べたトーストだった。あーあ、後が怖ぇぜまったく。

少しでも面白い、続きが気になると思った方は、ブックマークや評価を入れて頂けると大変励みになります。よろしくお願いします<(_ _*)>

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