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逆ハーに巻き込まれた幼馴染を助けるために、群がるハエは一匹残らず駆逐します!  作者: 花宵
第2章 テオドール公爵家のエミリオを駆逐せよ!

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第17話 本当の試練はここからだった

「お初にお目にかかります、エミリオ様。スノーリーフ村出身のルーカスと申します。よろしくお願い致します」

「エミリオだ、こちらこそよろしく。それにしても大丈夫かい、ルーカス君。レイは恥ずかしがりやでね。男に褒められると免疫がなくて、つい手がでちゃうんだ」


 さっきの、恥ずかしくてついってレベルじゃない。俺の命を奪いに来るような一撃だったぞ、確実に。


「この容姿だから周りの男共は放っておかないだろう? それでいつも血祭りになっちゃって、中々大変なんだよ。その上レイについた侍従は一日を待たずして脱落していくからね。いくら親戚のハイネやレオンが居るって言っても、学園に侍従の一人もつけずに行ってしまって、僕は心配していたんだよ」


 サラッと怖いこと言ったぞ、この人。血祭りって何?

 エレインに殴られて、クラウスにナイフで滅多刺しにでもされたの?

 脱落した人たち、生きてるよね? ちゃんと今、息してるよね?!


「でも可愛い妹の傍に悪い虫けらが近付く(仕える)のも、僕は我慢出来ないんだ。クラウスの試練は耐えれたようだけど、君に資格があるかどうか、今度は僕が直々に試してあげるね」


 本物のエミリオも怖ぇ……この兄にしてあの妹ありだ。

 エレインに婚約者が居ないのも、侍従が居ないのも九割は多分、コイツ(シスコン)のせいだろ。

 婚約者が出来なくて本人があれだけ悩んでいる事を、縛り付けているこの人は多分知らないんだろうな。

 自分にはサンドリア様という最愛の人が居て、膝にのせて話して疲労骨折……それもそれでエレインが可哀そうな気がした。


「分かりました、エミリオ様。俺はエレイン様に借りがあります。それを返すまでは誠心誠意仕えさせて頂くつもりです。それで、何をなさるのですか?」

「僕より弱い男に、エレインの侍従は務まらない。この通り今は足を怪我してるから決闘は出来ないけど、力比べくらいならここでも出来るからね。アームレスリングでもやろうか」


 身体能力特化しやすい火属性魔法の使い手とまともにやっても、勝てる気がしない。だが、何の秘策もないわけじゃない。


「兄様! それではあまりにも、ルーカスに不利です」


 珍しく主が俺のことを心配してくれているようだ。だけど、不安に揺れる女の子の瞳をただ眺めてる趣味はない。


「エレイン様、心配には及びませんよ。貴女に仕える侍従と認めてもらえるよう、誠心誠意頑張らせて頂きます」

「ルーカス……」


 備え付けの四角いテーブル席について、お互いに右手を出す。

 案の定手を握った瞬間エミリオにものすごい握力で締め付けられたけど、前例があるからそれは魔法でガードして難無く防ぐ。


「第一関門突破ってとこかな。でも、この先はどうかな? エレイン、合図をかけて」

「……分かりました」


 エミリオの魔力をそのまま跳ね返すか?

 でもそうすると、反動でエミリオが怪我しかねない。次期公爵様に怪我させたとなっては、侍従どころか物理的に俺の首が飛びそうだ。

 ここはやはり、魔力を吸収する方向でいこう。身体強化さえ無効化出来れば、後は単純に力勝負だ。


「レディーゴー!」


 エレインの合図を皮切りに、エミリオが一気に攻めてきた。それと同時に俺は手のひらに魔力を吸収できるフィルターを創り出す。触れていると、魔力が奪われる仕様だ。


「くっ……力が……」


 エミリオの力が弱まった所で一気にいこうかと思ったが、見た目に反し地の力もどうやら強いらしい。後少しが中々倒せない。


「君に、レイが守れるの? 僕は認めない。僕はレイが傷つく姿を見たくない!」


 嘘だろ?!

 後少しでテーブルにつきそうだったのに、持ちこたえて最初の状態まで戻しやがった。

 エミリオの瞳には、必死に大切なものを守ろうとする強い意志が宿っていた。

 だが俺だって、ここで負けるわけにはいかない!


 純粋な力勝負だった。額からはポタポタと汗が流れ落ちる。それでも、お互い一歩も譲らなかった。

 その時、エミリオがこちらに向けてくる敵意むき出しの鋭い眼光が微かに揺れ、苦しそうに口元を歪めているのが目に付いた。

 このまま続けると、踏ん張りをきかせているエミリオの足によくない。


「何をそんなに、恐れられているのですか?」


 これ以上の長期戦は勘弁願いたくて、俺は心理戦をしかけてみることにした。

 そこまでエミリオを焚きつけるものが何なのか、今なら吐かせる事が出来そうな気がしたから。


「非力な男達が、酷い暴言を浴びせてレイを傷つけてきた。バイオレンス女だの、怪力化物女だの。勝手にくだらない幻想を抱いて、見た目と能力の乖離を見た瞬間手のひらを反して逃げていく」


 心にグサリとその言葉が突き刺さる。心の中で思ってたなんて今、口が裂けても言えねぇ。 

 だが、ただのシスコン野郎かと思ったらそうでもないらしい。


「洗礼を受けたので、よーく知ってますよ。エレイン様の力が強いことくらい」

「そう。でも……僕に負けるようじゃ、暴走したレイを止めれるわけない。非力な男は、侍従とは認めない!」


 なるほど、だから自分より強い奴じゃないと認めないというわけか。


「確かに俺は、止める事は出来ないでしょう。ですがこうして、受け止める事は出来ます」


 火属性の魔力が身体強化に適しているとすれば、光属性の魔力は心に巣くった不安や闇を照らして浄化させる精神安定の効果がある。

 エミリオから吸収した膨大な火属性の魔力を、光属性の魔力に変えて返す。温かな光で、俺はエミリオを包み込んだ。


「エミリオ様の抱える心配は、俺が代わりに引き受けます。だからどうか早く足を治されて、エレイン様とサンドリア様を安心させてあげて下さい」

「くっ、何だこれは……不思議な男だね、君は……そうか、これが光魔法……選ばれし者の力というわけか」


 そう言って口元を緩めたエミリオは腕の力を抜いた。必然的にエミリオの手の甲が台面につき、俺の勝ちが決定した。


「認めてあげるよ。でも、レイを泣かせたら許さないからね」

「ありがとうございます。誠心誠意仕えさせて頂きます」


 差し出された手を力強く握り返し俺はその日、晴れて正式なテオドール公爵令嬢エレインの侍従となった。

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