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文化祭最終日

文化祭が始まると、いつもの日常とは違いあわただしく時間が過ぎていく。


私はクラスの出し物と生徒会の出し物の掛け持ちのため、ずっと自分のクラスにいる事ができない。

そのため、なかなか飯田をつかまえる事ができなかった。


正確に言えば、飯田と話すチャンスぐらい何度もあった。


だけど、勇気の無い私は声を掛ける事さえもためらってしまった。


こんな事してたら、どんどん時間が無くなってしまうのに。


この一時だけでも時間の流れがゆっくり過ぎてくれればいいのに、と思う私の気持ちと反比例して時間はどんどん進んでいく。


そんな状況で光陰矢のごとしのはよく言った物で、あっと言う間に文化祭最終日になってしまい、私の心は焦りでいっぱいになっていた。


今日こそ、飯田に話し掛けないと。

チャンスは今日しか無いんだよ。

私は拳を胸に当て、深呼吸して気合いを入れる。




『翔華、今日はこっちの事は私に任せて、翔華はクラスの方にずっと行ってていいよ』


まだ飯田に何も言っていない事を察した春風は、頑張ってと言うように私の背中を押して教室へと送り出してくれた。



文化祭は常にたくさんの人たちがいて。


飯田は人混みが嫌いなのだろう。

なるべく人のいない方いない方へと場所を移動していった。


これはチャンスなのでは?


私は飯田の後を追ってみた。


飯田はスナック菓子を片手にするりするりと人混みを通り抜けていく。


あんな巨体なのに、意外にも動きが素早くて見失いそうになる。


"今日しか無い"


その言葉が私を追い詰める。


体育館倉庫の裏でやっと飯田に追い付いた。

飯田は小さな石階段に腰を降ろしていた。



「あれー?生徒会長ー?こんなとこで何してんのー?」


ゼィゼィと息切れをさせている私に気付いた飯田がキョトンとした顔をこっちに向けている。


「生徒会長がサボりなんて珍しいねー」


サクサクとスナック菓子が軽快に砕ける音が緊張を和らげてくれている。



「い、い、飯田…」


「なに?」


「あ、あの、その…」


沈黙の圧が私の胸をぎゅっと締め付ける。


「あのね…」


「…。最近の生徒会長って何かおかしいよねー。働き過ぎなんじゃないの、たまには休憩も必要だよ」


スナック菓子を食べ終えた飯田は立ち上がり、大きな手で私の頭を包んだ。


ああ…。

飯田の事を意識した瞬間が甦る。

飯田の大きな手に頭をポンポンされるとすごく安心した。


そうだ。やっぱり、私は飯田が好きなんだ。


「今日文化祭終わったら銀杏の木の下に来てくれないかな?」


言えた!

取り合えず第一目標通過できた。


「今日の放課後…、うーん、覚えてたら行くよー…」


曖昧な返事が飯田らしかった。



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