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正反対

胸キュン賞に出すための作品なので改稿しながらの作品で読みにくくてすみません

「翔華、この飾りどこに着ける予定?」


親友であり、生徒会副委員長の春風が金銀のボール型の飾りを両手に持って私の目の前でうろちょろしていた。


「それは三年の教卓の上の飾りにしよう」


再来週に迫った文化祭の用意に学校内は大慌てで動き回っている。

普通の生徒でさえ、こんなに忙しいのだから、生徒会長である私一ノ瀬翔華はこの中の誰よりも忙しく動いている。

うちの中学校の文化祭はここいらでは結構有名で、かなりの来場者がやって来る。


「一ノ瀬先輩、これはどこに?」


「一ノ瀬、文化祭の特別ステージって結局どこでやるんだっけ?」


同級生から後輩まで、一気に私に言ってくるから、いつもは冷静を装っている私もさすがにパニックになりそう。

でも、頼まれるとイヤとは言えない性格が災いして次から次へと仕事が押し寄せてくる。


そんな中、女の子たちの他愛ない会話が耳に入ってきた。


「てか、あの伝統本当なのかな?」


「あれでしょう?文化祭の最終日にうちの学校のシンボルとも言われている銀杏の木の下で想い人に告白するとうまくいくって言う例の伝統」


「そそ、その告白目当てで文化祭に来る人たちもいるみたいだよ、しかも、その告白のタイミングって夕方が一番確率高いみたいよ、オレンジ色のグラデーションを浴びている銀杏の木の下で告白とかそれだけでもロマンチックなのに、文化祭の最終日とか、考えるだけでもドキドキじゃない?」


うちの学校の校庭の中央にはかなり大きな銀杏の木が植わっていて、うちの学校のシンボルとされている。

そのシンボルにそんな伝統あるなんて知らなかったけど。

恋愛とか全く興味の無い私には全く関係のない伝統だわね。



「ちょっと、翔華、あれ見て」

春風にトントンと肩を叩かれて驚いた。


「え?」


ああ…。


春風の指差す方向には。

教室の片隅で両足をバサッと伸ばして、スナック菓子を食べている男子生徒がいた。

彼には周りの慌ただしさなんて全く目に入っていないようだった。


彼の名前は、飯田敦。

自分に興味のあること以外は全くしない。

常にマイペースでいつも一人でいる。


「もう…」


私は彼に近付き、お菓子を取り上げた。


「あー、何すんの?」


飯田はかなり不満そうな声を出して、上目使いで私を見ていた。


「何すんの?じゃないでしょう?今はみんな文化祭のために一生懸命動いてるの。それなのに、あなたは何してるの?」


ちょっと、きつく言い過ぎてしまったかな?

セーブしているつもりだったが、みんなの手前もあり、つい厳しい口調で言ってしまった。


「あ…と、その…」


「お菓子返してー」


言い過ぎた言葉を撤回しようとした私と飯田の言葉が重なる。

飯田は私の言葉なんて聞こえてなかったように、私の手からお菓子を取ると、残りを全部口に放り込んだ。


「生徒会長って大変な仕事だねぇ。んじゃ、頑張ってね」


平均的な身長の私より40センチ以上も身長の高い彼は、大きな手でポンポンと私の頭を叩いた。

バスケ部のエースである彼はその恵まれた体型のおかげでチームの要となっている。

私はバスケ部の試合を見に行った事は無いが、飯田の圧倒的なプレーがチームを勝利に導いているらしい。

私の目に写る彼はいつも眠っているかお菓子を食べているかなので、そんな姿想像できないが…。


てか、本当、大きい手だったなー。


私は叩かれた自分の頭に触れてみた。



***********


「早くしてくれよ、何やってんだよ」


早朝のバスの中、背後からおじさん達のやじがより一層私を焦らせる。


『どうしよう?定期が見つからない。置いてきちゃったのかも、こんな日に限って財布も見付からないし、この私が定期もお財布も忘れるなんてあり得ないでしょ』

いつも眠る前に前日の用意をしてから眠りにつくのに。


運転手さんもイライラしたようにこっちを見てきた。

そりゃー、そうだよね。私だってこの忙しい朝、他の人がこんなことしてたら、この人たちと同じ態度取るわ。


『今日はもう遅刻でいいや』


今まで一度だって学校を遅刻なんてしたことなかったけど。仕方ない。

バスを乗るのを諦めようとして、向きを変えた時。


チャリン。

軽快な音が奇跡を運んできてくれた。


「彼女の分のお金入れたよぉ」

後ろに並んでいた一人の同じ学校の男子生徒が運賃箱にお金を入れてくれたのだ。


え?

束の間の沈黙。


「早く乗らないと間に合わなくなるよぉ、生徒会長」


表情を変えないまま、私にそう言って先に席に着いたのは、あの飯田敦である。


「あ…。あの…。ありがとう」


突然のことでどうしていいか分からず、二人用の席に腰掛けた彼を見下ろしていると、


「何見てんの?座れば」


「あ…うん、ありがとう」


飯田が空いてる自分の横の席に目をやった。

彼とは三年間クラスが一緒だったけど、こんな近距離で接したことなかったから。

何を話していいのか分からず。


「い、い、飯田はいつもこのバスじゃないよね?」


当たり障りの無い話しをしてしまった。


「うん。…朝起きたら自転車がパンクしてるのに気付いて、バスにした」


相変わらず間延びした感じの言い方で答えて、、ふわぁーと大きな欠伸をする飯田を見ていた。


「なに?」


私の視線に気付き、不審気に目を向けられた。


「飯田って何て言うか、全部大きい。手も足も体全体も欠伸も大きいのね」


「は?何言ってんの?」


「ほら私の手と比べてみて、こんなにも違うよ」


何の気も無しに私は自分の右手を飯田の前に出した。

すると、彼は私の手の平に自分の手の平を重ねた。

彼の温かい手が重なり、頭の中がまっ白になった。

確かに自分から手を出したけど、こんな状況になるなんて思わなかった!


------------------!


突然の事に言葉を奪われた。



「どうしたの、生徒会長、顔真赤だよ」


どうしたの、どうしたの、私?

飯田の言葉に何も言い返せない。


何でこんなに鼓動が速くなるの?


き、きっと。コイツが予想外の事をしてきたせいよ。

うん、そうよ、それ以外何もない。


飯田はもう一度大きく欠伸をすると窓に凭れて眠り始めた。

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