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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第一章 目覚めたら異世界/復活の邪龍神機
9/95

1-8


「う、うわっ!」


 感覚を失ったのは一瞬だったのか……俺が目を開けると突然、眼前に飛来する火球が現れ必死に避ける。

 どうやら、前方に居る全身鎧姿の騎士達の一人が発射したらしい……などと考えていると、盛大なため息が天井からでは無く脳内に響く。


「はぁ〜〜……まったく。我がマスターならば、その程度の炎で情け無い声を出すな」


「イオスか? 一体どうなってるんだ?」


「先ほど言った通り、マスターと我の意識が繋がったのさ。まあ、簡単に言うならば、我が黒龍の体が、今はマスターの体……そう思えばいい」


 そう言われ、左手を見る。

 そこには見知った人間の腕では無く、漆黒の鱗と甲殻に覆われ鉤爪の生えた腕があった。なるほど、ドラゴンと言われればドラゴンの腕に見える。

 そのまま右手を見る。やはり左手同様、ドラゴンの腕だ。

 俺は左右の指を一本一本動かしてみる。

 まるでさっきまでの俺が、そのままドラゴンに変身したように、それは違和感無く自由に動く。

 下を見ると、縮小されたようなヤルバ爺の家や畑が、所々燃えている。

 周囲では、あのアライグマや猪男と同じような装備の小人達が大勢居て、何かを叫びながらこちらに細かい何か物を当ててくる。

 目を凝らすと、それは弓や投石、あるいは術式と思われる火球や雷撃による攻撃だった。

 一つ一つが細かすぎて、ダメージどころか衝撃一つ伝わってこないが。

 ん〜……あれが、あのアライグマ達と同じ人間サイズの兵だとすると、今の自分と、自分より一回り小さな鎧騎士達は相当のサイズだ。

 と、いう事は、あの鎧騎士達がヤルバ爺の言っていた魔装甲冑だろう。


「なるほど……何となくわかったよ」


「うむ、ちなみにマスターに元々ない翼や尾を動かすには、自分にそれらがあるとイメージすれば良い。さて……次が来るぞ、マスター」


 イオスの警告で再び前方の魔装甲冑を見る。

 どうやら、俺が先ほど慌てて避けた事で有効な手段と判断したらしい。

 さっきと同じ火球の術式を、今度は五体の魔装甲冑が同時に発動する。


「ど、どうすればいい?」


「そうだな……ふふふ、奴らの熱い想いだ。せっかくだから、あえて動かず全て受け止めてやれ。マスターには我が身の堅牢さを多少なりとも知ってもらわないとな」


「おい。そんな事して、本当に大丈夫なんだな?」


「ははっ! くどいぞ、マスター。何も心配要らんわ」


「……わかった」


 イオスの言う通り、同時に発射される火球を全て棒立ちで受ける。着弾と同時に激しい火柱が起こるが、俺……というか黒龍の身体には全く影響無いようだった。


「と、いう感じだ」


 自慢気なイオスの声が響く。

 確かにこれを必死に避けてちゃ、イオスとしてはため息の一つも出るだろうな。

 幾分緊張が解れ、俺は軽く笑う。


「イオスが凄い事はわかったよ。それでこれからどうする?」


「むぅぅ……マスターが望むならこのまま退く事も難しくは無いが、我としては少々暴れたりないな」


 俺の脳裏に笑顔のリミルと、力なく呼吸するリミルの姿がチラつく。

 同時にあの沸騰しそうな感情が蘇り、それが帝国兵と……何より何も出来なかった無力な自分への、今まで感じた事もないやるせない怒りだと気づいた。

 このまま退くと、俺はきっと一生、今日の事を悔やむだろう……直感でそう感じる。


「そうだな、イオス……少し暴れてみるか」


「はっはっは、それでこそ我がマスターだ! では、高らかに唱えるといい! 《人龍合神じんりゅうがっしん》と!!」


「お、おう! ……人龍合神!!」


 俺の叫び声を合図に、黒龍の身体が黒い光を放つ。

 各部が大きく振動し、どういう原理でかは不明だが、全身の甲殻が、骨格が、その配置と形状をゴキゴキと変えていく音が響く。

 意識を繋いでいる俺からすれば、痛みも無く体中の構造が変わっていくのは、なかなか強烈な経験だ。


「うぅ……! お? おおー!」


 動きが収まり、体を見回した俺は、思わず感嘆の声をあげる。

 いかにもドラゴン然としたさっきの姿から、ほぼ人に近い形状へと手足が変わっているのだ。


「ふふふ、どうだ! これぞマスターと我が真に融合した証、《神機ドラグーン》だ!!」


 イオスの高らかな声と共に、脳内にイメージが流れ込む。

 帝国の魔装甲冑にも似たこれは、おそらくはイオスが見せた今の黒龍の姿だろう。

 蝙蝠を思わせるような一対の飛膜翼と龍の尾を持つ、さながら漆黒色の甲殻鎧を纏った竜騎士といった姿だ。

 頭部も人を思わせる形状で、兜を形作る甲殻の間からは、イオスの瞳と同じ紅い結晶が二つ光っていた。


「……何というか黒龍って、アニメの巨大変形ロボみたいだな」


 竜騎士の見た目から受ける印象はアニメのロボよりも、もっと生物的だったが。


「あに……ろぼ……? よく分からないが、マスターなりの褒め言葉か何かか?」


「あ〜。いや、なかなか格好いいなと思ってね」


「ふふふん、そうだろうとも! さあ、マスター! 存分に暴れようじゃないか!」

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