表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第五章 ブエラリカを覆う影/終焉の龍神機現る
75/95

5-8

「何っ!? 馬鹿なっ! 奴らの力は封じたはずだぞっ!」


 檻から溢れ出る黒い閃光に、混沌卿が驚きの声をあげる。その隙を俺は見逃さない。


「余所見かよっ!!」


「がっ……!」


 俺の拳をまともに受け、混沌卿が大きく後ろへ吹き飛んだのと、光の圧力に負けた檻が弾けるように壊れたのは、ほぼ同時だった。

 ひしゃげ壊れた檻の中から、一人の少女が歩み出てくる。


「……リミル……いや、イオスなのか?」


「ふふ、今はどちらも我、ですよ。マスター」


 そう言って柔らかな笑顔を見せる少女の姿は、しかし俺の知る二人から大きく変わっていた。

 肩までだった青い頭髪は腰まで長く伸び、先端に向かう程、漆黒へと変色していく。

 褐色の肌の額と、腰から生えた尾には、より強く光沢を放つ青い鱗と漆黒の鱗が左右に分かれて存在し、瞳の色は左が真紅で、右が青だ。

 そんな、まるでイオスとリミルを混ぜ合わせた様な身体を、見た事も無い黒い豪奢な和風のドレスとも言うべき衣装で包み、少女は俺の前に立つと、俺の両手をそっと握り、もう一度微笑んだ。


挿絵(By みてみん)


「我も共に戦わせて下さい。混沌卿を倒して、一緒に家へ帰りましょう、マスター」


 少女の表情が、まるで幻燈の様にクルクルと変化する。一瞬リミルかと思えば、すぐにイオスの印象に変わり、またリミルの表情を見せる。一種の神秘性すら感じさせるその変化に、俺は息をのんだ。


「イオスとリミル……さしずめ、イミル……いや、イスミルって所だな」


「ふふん、それはなかなか良い名前ですね」


 腰に手を当て、イスミルはニッと笑う。


「くっ…………なるほど、本来あり得ない事だが、バグが完全にイオスと適合したのか……だが、そうなった所で、この俺は倒せんっ!」


 俺に倒された混沌卿が、立ち上がりこちらに向かって跳躍する。

 前に出て庇おうとする俺を手で制すと、イスミルは突き出した両手をパチンと打ち鳴らした。

 その瞬間、術式詠唱もしていないのに、地面を割いて黒い水で形作られた三メートル程の東洋風の龍が現れる。

 イスミルが舞う様な仕草で指先を動かし、混沌卿を指差すと、黒水龍は猛然と奴に襲いかかった。


「ええぃ! 邪魔だっ!」


 混沌卿が襲い来る黒水龍に攻撃する。しかし、拳や蹴りはおろか、スーツを変形させた刃でも、黒水龍はまるで流れる水そのものであるかの様に、スルリと通り抜けてしまう。

 反面、黒水龍の尾や爪による攻撃は、混沌卿に確実にダメージを与えていた。


「す、凄いじゃないかっ!」


 思わず出た言葉に、しかしイスミルは首を振る。


「あれは只の時間稼ぎです、マスター。もう一度、あの姿に……三眼になって下さい!」


「……けれど、あの姿だと、また俺は……」


 制御を失い、暴走した姿が脳裏をよぎる。


「大丈夫です! 今の我等に不可能はありませんっ!!」


「わ、わかった!」


 力強いイスミルの言葉に頷く。そして、再度スーツに向かって、強く念じる。

 お前の力を全て寄越せ、と。

 スーツが泡立ち、頭部を完全に覆う。奴と同様にヘルメットの様な形状へと変化し、三眼が光ってなお、俺の意識は俺の体から弾かれる事は無かった。

 いや、それだけじゃない。全身を巡る力が一気に増大し、背中から溢れ出す。

 

「これは……?」


 溢れ出たエネルギーは形を変え、蝙蝠に似た翼の形状を取る。見ようによってはドラグーンにも似ていた。

 変化が終わると、黒水龍と戦っている混沌卿目掛け、大地を軽く蹴り進む。

 たったそれだけの動作でも、以前のスーツとは大違いの加速を感じた。


「その姿……イオスの全力を引き出す事に成功したのかっ!」


 一旦離れた黒水龍の影から現れた俺を見て、混沌卿が叫ぶ。


「イオスの全力? 違うなっ!」


 飛びかかる様に接近し、混沌卿の肩を左手で掴むと、腹部目掛けて渾身の右突きを放つ。


「がっ……!」


「イオスとリミル……お前が嘲笑った二人の力だっ!!」


 混沌卿を上空へ蹴り上げる。そこに追い打ちとばかりに、上昇した黒水龍がその強靭な尾で叩き落とした。

 凄まじい土煙を上げ、混沌卿が墜落する。しかし、半ば地面に埋もれる程の衝撃にも関わらず、混沌卿はフラフラと立ち上がった。


「……ぐぅぅぅっ!」


 唸るように叫ぶ混沌卿にすかさず走り寄ると、左右の拳で連撃を叩き込む。今の混沌卿に俺の攻撃を防ぐ手立ては無い。

 全ての攻撃をまともにくらい、流石の混沌卿も片膝をつく。


「今です、マスター! 水龍の力をマスターに!」


「これは……そうかっ!!」


 イスミルの声に従うように、黒水龍が縮小された姿で俺の右腕に絡みつく。直感的にその意味を知った俺は、動けない混沌卿に向かって、全力で右拳を打ち込む。

 その瞬間、解放された黒水龍が元の姿に戻り、混沌卿の体を大きく吹き飛ばした。


「がっ……ぐっ……」


 黒水龍による超高速の一撃をうけ、地面をゴロゴロと転がり、それでも混沌卿は生きていた。ダメージの為か、スーツの三眼状態は既に解除され、再び現れた俺そっくりの顔を歪める混沌卿。


「……がふっ……もういいっ……やめだっ! 計画なんて知ったことか! 今すぐ貴様達を殺してやるっ!!」


「……計画?」


 俺の疑問の声に応える事なく、混沌卿はゆっくりと立ち上がると、その黒衣を脱ぎ捨てる。

 中から現れた俺と同様のスーツを纏った身体、その胸元にはイオスのそれに良く似た結晶が怪しく光っていた。


「いけません! マスター、離れて!!」


「今すぐ来いっ! ディマイズ・ドラグーンッ!!」


 イスミルが叫ぶのと同時に、混沌卿も叫び胸の結晶に触れた。その瞬間、結晶から真紅の閃光が溢れる。

 眩い閃光が収まった時、そこに居たのは混沌卿では無く、巨大な血のように赤いドラゴンだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ