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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第五章 ブエラリカを覆う影/終焉の龍神機現る
72/95

5-5


 奴の言った、俺の良く知る遺跡跡……そんな物は一つしか無い。

 夕闇のブエラリカを駆けて、タービュレンスが眠っていた、あの遺跡跡に到着した。


「よう、必ず来るだろうとは思っていたが、存外早かったじゃないか? 覚悟は出来ているようだな。それに……俺に斬られた腕も、無事繋がってるようで何よりだ」


 月明かりの下、転がる岩に腰掛け混沌卿が笑う。その脇には、不思議な光を放つ金属で造られた巨大な、目の細かい鳥籠の様な檻に入れられたイオスとリミルが見えた。

 心の中で小さく安堵する。良かった……二人共まだ無事な様だ。


「イオスッ! リミルッ!」


「っ! ……タツヤさんっ!」


「マスター、すまない! この檻の発する力場で、我の力が……」


「ははは、勿論封じさせてもらったさ。当然だろう? ここでドラグーンを呼ばれちゃ面倒なのでね。ついでにそっちの嬢ちゃんの術式も、今は使えないはずだ」


 大袈裟に広げた両腕を空に向け、高らかに笑い続ける混沌卿。その芝居掛かった仕草は、心底今の状況を愉しんでいるようだ。


「……約束だ、混沌卿。さっさと二人を解放してもらおうか」


「おい……おいおいおいおいっ! 勝手にルールを変えるなよっ!」


 岩から飛び降り、首を鳴らしながら混沌卿が近づいて来る。


「これは俺とお前のゲーム。そしてクリア条件は、これから俺にお前が勝ったら、だ」


「……そうだったな。イオス、リミル、悪いな。必ず助ける……もうしばらく、そこで待っていてくれ」


「馬鹿っ! 我等の事はいいっ!!」


「タツヤさん、気をつけてっ!」


「ははは、涙ぐましいねぇ……それじゃあ、早速始めようか!」


 言い終わるや否や、一気に加速した混沌卿が、深く腰を落とし、下方から抉る様な右拳を放つ。

 俺は上体を逸らし、その拳を躱すと、そのまま後ろに仰け反り地に腕を着く。

 伸びきった混沌卿の右腕に両脚を絡め、バク転の要領で混沌卿を大地に叩きつけるように投げた。


「ふんっ!」


 咄嗟に左手を地面に着くと、腕一本の力で飛び上がり、半回転で立ち上がる混沌卿。どうやら上手く衝撃を殺したようだ。

 しかし、それを見越していた俺は、バク転の勢いのまま、体を捻りながら跳躍すると、混沌卿の頭部目掛けて脚を振り下ろす。


ーーガッ!ーー


「ふはっ! 予想以上にやるじゃないかっ!」


 俺の脚を頭上でクロスした両腕で防ぎ、混沌卿が嬉しそうな声を漏らす。


「そりゃ、どうもっ!」


 混沌卿の肩を蹴り、後方へと飛ぶ。

 やはり、こいつは手強い……せめて、何か隙があれば……。


「どうしたっ! まだまだ、休むには早いだろ?」


 考える余裕すら無く、すぐに混沌卿が距離を詰めてくる。先のお返しとばかりに、拳と蹴りが休みなく襲ってきた。

 混沌卿の攻撃は決して受け切れない速度では無い。だが、こちらから繰り出す攻撃も有効打にはならない……このままでは手詰まりだ。

 打開策が見つからない打撃の応酬がどれほど続いただろう。混沌卿の右正拳を俺の左拳が撃ち払った瞬間、奴の体が一瞬ぐらついた。


「今だっ!!」


 その一瞬を見逃さず、すかさず右ストレートを放つ。

 しかし、混沌卿の反応も早く簡単に拳を脇にいなされる……はずだった。


「グフゥッ!?」


 混沌卿が悲鳴とも困惑とも取れる声を漏らし、後方へ倒れる。俺の全力の拳擊が奴の顔面をまともに打ち据えたのだ。


「……ぐぅぅ……、どういう事だ……お前の拳は今、完全にいなしたはず……」


 ヒビ割れた仮面を抑えながら、混沌卿がフラリと立ち上がる。例え奴の仮面がいくら頑丈だったとしても、無傷では無いことをフラつく脚が教えていた。

 ヒビ割れた仮面の奥の瞳が俺の右手、拳の先からダラリと伸びたスーツに止まる。


「くっ、なるほど……スーツの囮か!」


「ご名答っ!」


 混沌卿に拳を放つ直前、拳周りのスーツを勢い良く伸ばし、奴が伸びたスーツを拳そのものと誤認し、いなした後に実際の腕で殴ったのだ。

 正直、大した事は無いフェイントだったが、猛スピードでの戦いの中で、思いの外効果があった。

 さっきまでの攻防が一転し優勢となった俺は、このチャンスに混沌卿が立ち直る暇を与えないよう攻め立てる。

 ガードに徹する混沌卿の腕を蹴り上げ、空いた胴へトドメの拳を構える。

 その時、奴の仮面が完全に割れ落ち、乾いた音を立てて地面に転がった。


「なっ!?」


 放とうとした拳が完全に止まる。それだけ奴の素顔は衝撃的だった。

 褐色の肌や真紅の瞳……そんな違いを除けば、そいつは俺の一番見慣れた人間……つまり、俺自身だったのだから。


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