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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第四章 時空の放浪者/時を越える想い
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4-終


 ミンバ本陣にてブライアン王より伝えられたのは、やはりこちらの圧倒的な勝利だった。

 早々に帝国の主力である白騎士を大幅に削れた事は勿論だが、やはり五聖輝将とドミニアスを討ち取れた事が何より大きかったようだ。

 帝国軍としてだけではなく、国家としても枢軸を失い、投降を申し出る部隊も多く出ている。


「以上だ、タツヤ。今回の大戦おおいくさ、君達が帝国を打倒したに等しい。ここに居並ぶ各国の王を代表して、礼を言わせてくれ」


 ミンバの王ブライアンは、話終えると深々と頭を下げる。それに続いて、周囲の王や将軍達も同様に頭を下げた。


「いえ、皆さん頭を上げて下さい! 皆さんだけでは不可能だった勝利かもしれません。ですが、それは俺達だってそうなんです。皆さんが俺達を信じて力を貸してくれたから、こうして帝国に勝利する事が出来たんです」


「タツヤ、君がそう言うならば、そういう事にしてもらえると、我々も面目が立つというものだ」


 ワハハと笑いながら、ブライアン王が頭を上げる。


「さて、それでは堅い話はここまでとして、我等の大勝利を祝して、ささやかながら酒宴の席を設けよう。なに、明日からまた戦後処理で嫌というほど働かねばならん。その景気付けだな」


 パンパンとブライアン王が手を打つと、奥から侍女達によって酒や種々様々な料理が運ばれてくる。

 俺達も中心の席に半ば強引に座らせられると、盃になみなみと酒が注がれた。


「我等を勝利へと導いたタツヤ率いる黒龍様一行に、乾杯っ!!」


 ブライアン王の音頭で、盃の酒を口に含み飲み込む。


「……あ、美味いぞ、これ」


 王達が口にするだけあって、上品な口当たりで飲みやすい酒だ。 俺もつい、二度三度と盃を口に運んでしまう。

その結果……。


「の、飲みすぎたな……」


 天幕をこっそりと抜け出し、手頃な場所に座ると、酒で火照った体を平原の夜風に吹かれ冷ます。

 風に乗ってあちらこちらから、楽しげな声が聞こえてきた。おそらく、当直を除く他の兵達も、皆勝利の美酒に酔っているのだろう。


「なんだ、こんな所にいたのか、マスター」


 後ろから声がかかる。振り返るとリミルの体のイオスが一人、腰に両手を当てこちら見ていた。


「イオスか……ちょっと飲み過ぎちゃってね。マシロは一緒じゃないのか?」


 確か、少し前にリミルとマシロと三人で天幕から出ていったはずだ。


「ふふん、マシロなら慣れない酒で酔い、我等のテントで眠っている。それに眠ってしまったのはリミルもだな」


 俺の隣に座ると、自分の結晶を撫でながら、イオスがクスリと笑う。そして、チラリとこちらを見ると、コホンと咳払いを一つした。


「マ、マスターも随分酔っているようだ。どうだ、我の膝を枕にでもして、少し横になってみないか?」


 ポンポンと自分の膝を叩き、またチラリチラリとこちらを見る。


「いや、それじゃあイオス重くて大変だろう? 別にいいよ」


「ぬっ……ええい、我が良いと言っているのだから、さっさと頭を乗せないか!」


 やんわり断ると、ムッとした顔で袖を引っ張ってくる。俺は苦笑しながら、申し出を受け入れる事にした。


「よっ……重くないか?」


「うむ……平気だ」


 満足気な声が上から聞こえてくる。


「なぁ、マスター」


 右手を俺の体に置き、左手で俺の髪をサワサワといじりながらイオスが口を開く。


「ん? なんだい?」


「あの時……ハイパーノヴァを撃った後、我とマスターの接続が切れた。あんな事は本来無いはずだが……あの時何があったのだ?」


「ああ……その話か。実はな……」


 そうして俺が飛ばされた時代の事を話す。

 人類の歴史、リミル達デザイエンス誕生とCの襲来、魔装甲冑が生まれ、俺はアイナ博士と出会い、ドラグーン開発に協力した事……。


「……そうか……我は既に、マスターと出会っていたのか……」


「そうだな、考えてみるとイオスのその喋り方、俺が指示していたからかもしれない。それに、俺がヤルバ爺とリミルの家で、イオスの結晶を起動出来たのも、俺の遺伝子情報が既に登録されていたから……とか?」


「我は全く記憶に無いがな……ふむ、我はそのCとかいうのと戦う為に生まれたのか」


「俺はすぐにこちらに戻ってしまったから、事の顛末はわからないけれど、今そいつ達が居ないって事は、博士やヨウコさん上手くやったんだろうな……」


 俺の言葉に、ピクリと髪をいじっていたイオスの左手が反応する。


「マスター、ヨウコとは誰だ? 今初めて名前が出てきたぞ」


「ヨウコさんっていうのは、さっきの博士の部下で義理の娘のような……」


 思い出すままにヨウコの話を聞かせる。最後の別れの瞬間を話終えた時、俺の頬を冷たい物が流れた。


「イオス……泣いてるのか?」


 ポタリポタリと俺の頬に落ちる雫……イオスの真紅の瞳から零れ落ちる涙を、イオスが慌てて拭う。


「あ、あれ? ……何故我は泣いているのだ? 何故こんなにも哀しい……わからん、全然わからんぞ」


 拭っても拭っても、涙は後から後から流れた。俺は起き上がると、思わずイオスの体をかき抱く。


「マ、マスター……?」


「大丈夫だ、イオス。お前が泣き止むまでこうしていよう」


 おずおずとイオスが両腕を俺の体にまわし抱きつく。俺はイオスが落ち着くまで、そのままイオスを抱きしめ続けた。


「マスター……もう大丈夫だ」


 どれくらいそうしていただろう……イオスが俺の胸に手を置き、そっと離れる。

 心なしか上気させた顔で、照れたように笑う。


「すまない、マスター。みっともない姿を見せてしまった」


「構わないさ、イオス。俺で良ければ、またいつでも胸を貸すぞ」


「馬鹿者め……しかし、そもそもマスターが異界では無く、大昔から来ていたとはな」


「ああ、それには俺も驚いたよ」


「うむ、だがこれでマスターの生まれた世界の時空間位相がわかったぞ。マスターが望むなら、我が結晶の力で送り出す事も可能だ」


「そういえば、そうだな…………いや、まだこちらに居るさ」


「……良いのか?」


「この間、時間移動して思ったんだ。俺は中途半端に投げ出して帰って来たんだって。あの黒づくめの言った破滅云々も気になるし、今度は中途半端にならないように、俺はまだしばらくこちらに居ようと思う」


「そ、そうか! ふふん、そうであるならば仕方ないな!」


 どこか安心したような顔で笑うイオス。その笑顔を見て、俺もまた微笑んだ。


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