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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第四章 時空の放浪者/時を越える想い
59/95

4-2

「そうか……地球……俺、戻ってきたんだな」


 異世界からの帰還……しかし、素直には喜べなかった。リミルやイオス、お世話になった人達に別れの言葉一つ言えていない。そもそも、コスモ・ドラグーンとの戦いがどうなったのかも……結局、俺は何もかも中途半端に投げ出して帰ってきてしまった。


「コホン……さて、それではいいかな? タツヤ、君はあの尋問の時こう言っていたね? そのスーツは黒龍からの物で、脳についてはドラグーンからの物だと。この黒龍……つまり黒いドラゴンだね。それとドラグーンというのは同一の個体かな?」


「あ、はい。そうです。……そう言えば、さっきスーツへの指示をカットって……どうしてこのスーツについて、ここの人達はそんなに詳しいんですか?」


 それらは全て、向こうの世界でイオスがくれた物だ。しかし、女は人差し指を口に当て、静かにとジェスチャーしながら、イタズラっ子のように笑う。


「待ちなさい、タツヤ。答え合わせにはまだ早いさ。よし、君の話を聞かせてくれ……君のこれまでの人生……出来れば、そのドラグーンに関わる話を詳しく、ね」


「わかりました……信じてもらえるかわかりませんが……」


 女に促され、自分の人生を振り返りながら喋りだす。

 簡単な自己紹介を踏まえ、育った日本の事を話すと、何故か女の眉がピクリと動いたが、何も言われなかったので、そのまま続けた。

 そして、異世界に行ってからの話に移る。

 異世界で途方に暮れていた俺は、リミルとヤルバ爺に助けられ、イオス……ドラグーンと契約する。そして、いくつもの出会いと戦いと別れ……最後に気付いたら何故かこちらで倒れていた所で俺の話は終わる。


「なるほど……随分苦労をしたようだね」


「っ! 信じてくれるんですかっ!?」


「ああ、こちらにはこちらの、君の言い分を信じるに足ると判断するのに十分な物があるのでね」


 そう言うと女はパイプ椅子に座り直し、コホンと咳払いする。


「さて、タツヤ。冷静に聞いてほしいのだが、先ずここは……この地球は君が慣れ親しんだ地球ではない」


「えっ!?」


「君の言い分が全て正しいならば、ここは君の居た地球から数百年後の地球だ」


「数百っ!? そんな……馬鹿な!?」


「事実だ。既に使われなくなって久しいが、旧暦……確か西暦だったか? それで表現すると今は二千六百年を過ぎ、二十七世紀になるはずだ」


「二十七世紀……」


 つまり、俺は六百年先の未来に来たって事なのか……。


「さて……何から話すか……そうだな」


女が腕輪のような物にブツブツと何か喋ると、しばらくして一人の女がドアを開け入って来た。


「アイナ博士、お呼びですか?」


「ああ、ヨウコ。ちょっと、そこに立っていてくれたまえ。さて、タツヤ。彼女を見て何か思う事はあるかね?」


 ヨウコと呼ばれた女は、俺より少し年上だろうか? 肩くらいの黒髪を後頭部でキュッと束ね、軍服らしい服に身を包み、無表情でビシリッと立っている姿は、まさに軍人といった感じだ。しかし、何より目を惹かれるのは、彼女の頭頂部にある……。


「……うさ耳です」


「うむ、そうだね。ちなみにあれは実際に生えている彼女の耳だ。では、何故彼女にキュートな耳が生えているか、歴史のお勉強といこうか」


 女……アイナ博士は立ち上がり、パイプ椅子にヨウコを座らせると、まるで講義のように語り出した。


「タツヤ、君の居た時代にも、その兆候はあっただろうが、それから二百年程後、人類はだいぶ行き詰まっていた。各国の文化レベル上昇に伴い、エネルギー資源の消費もひたすらに増え続け、遂には少ないパイを奪い合う戦争が珍しくなくなった。しかし、ここにきて追い詰められた人類は、奇跡的にある発見をし大きなパラダイムシフトを迎えた。中原という日本人による全く新しいエネルギーの発見だ」


「新しいエネルギー……」


「そうだ。かつては暗黒物質などとも言われた、この宇宙全てに存在する粒子だ。この粒子は通常であれば、ただそこにあるだけだが、一定の操作を加えると様々な働きを見せる、まさに万能粒子と言っても過言では無い。その粒子を中原は《魔素》と名付けた」


「魔素!? それって……」


「まだ話の途中だよ、タツヤ。……魔素はある種の思考波、簡単に言うとテレパシーの様な物で操作できる事がわかった。だが、人類にはテレパシーも無ければ、そもそも肉眼では魔素を見る事すら出来ない。そこで、だ」


 アイナ博士がヨウコの肩にポンッと手を置く。一瞬うさ耳がピクリと震えたが、ヨウコは変わらず無表情のままだ。


「彼女の様に、魔素を観測しそれを操れるよう人為的に設計された、新たな人類である《デザイエンス》が造られ、爆発的に普及する事になった。ちなみにデザイエンスには人類と区別するため、動物的な見た目が付与されている……見たまえ」


 アイナ博士が腕輪を弄ると、そこから浮かぶように立体的な映像が空中に現れる。

 何処かの街だろうか、人間と獣人……デザイエンス達が生活している姿が見える。


「デザイエンスにわざわざ獣の姿を与えてまで、彼等は自分達とは違う、自分達こそが人間だと主張したかったのだろうね。もちろん、それによって、いつまでもデザイエンスに対する偏見の根は残り続けている。同じ人類として、頭が痛いよ」


「博士は……違いますから」


 ポツリと呟いたヨウコの顔に、一瞬だが感情の色が見える。それはアイナ博士に対する、厚い信頼に思えた。

 しかし、それよりも……魔素にそれを操れる獣人デザイエンス……。


「すみません、えっと……アイナ博士。それじゃあ、もしかして……」


「ああ、タツヤ。それでは答え合わせといこうか。君が転移したという異世界。おそらくそれは、我々の地球と地続き……つまりはここより更に未来の地球だと私は考えている」

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