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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第三章 激戦・熱戦・超決戦!/黄衣の王誕生
52/95

3-9

『む……何をするつもりだ?』


『ふんっ、何をするにせよ、儂等の敵では無いわ』


『……そいつはどうかな? シルフィ!』


『いくよ、ゴルディ兄っ! 術式発動! 疾風!』


 たちまち虎楼閣の周囲に強風が吹き荒れる。タービュレンスが一声唸ると、その風がまるで生きているように、虎楼閣の背、タービュレンスの両脇の筒へと吸引される。


『術式発動! 空縮陣っ!』


 続けて発動した術式は以前虎楼閣の動きを止めたものだ。しかし、今回その矛先は敵へは向けられなかった。吸引を続けたまま、筒内部の大気が急速に超高圧縮されていく。


『ウォォォォッッ!!!』


 それを待っていたかのように、ゴルディは雄叫びを上げ、虎楼閣をゴブルとダイトルめがけ走らせた。


『風爆っ!!』


 筒の内部で圧縮された大気が一気に爆発し後方から噴出、一気に加速した虎楼閣は長槍を馬上兵のように構え、ダイトル達に突撃した。


『グゥッ!!』


 盾を円錐状に変形させ受け流そうとするダイトルごと後方のゴブルに追突する。が、しかしダイトルの盾を抜けず、そのまま脇を走り抜けた。


『ダイトル殿……今の攻撃……』


『うむ、形は違えど間違いなかろう……ボガード殿の奥義、風爆一閃だな』


『むぅ……』


『風の霊王結晶、やはり奪われていたか……ゴブル殿』


『心得ました』


 ダイトルをゴブルが右脇に抱えると、その右腕とダイトルを包み込むように、ダイトルの盾が変形し覆う。先頭が大きく膨らんだ、まるで一本の巨大な攻城槌のようになった腕を構え、ゴブルが吠える。


『ミンバの戦士よっ! 我等が盟友ボガードの技を己の物にするとは見事! しかし、我等とて聖光龍帝国最強の盾と矛なりっ! いざ尋常に勝負!!』


『おいおい、暑っ苦しいオッサンだな……しかし、ぶっつけ本番にしては、上手くいったな』


『そうだね、タツヤ兄から聞いて、イオスちゃんに手を加えてもらったの、つい最近だもんね』


 事実、二人がこの技を発動するのは、これが初めての事だった。しかし、狼牙以上に霊王結晶と親和融合したタービュレンスの力と、元々の巨体と能力の高さに加え、黒龍の組織を多く体に含む虎楼閣の力によって、ボガード以上の威力を発揮していた。

だが……


『甘いっ!!』


『ぐあっ!』


『ゴルディ兄っっ!』


 二度目の風爆一閃は、踏ん張るゴブルとダイトルの攻城槌に完全に防がれ、逆に虎楼閣がゴブルの左拳の直撃を受け大きく吹き飛ばされる。


『ゴルディ兄、大丈夫!?』


『ああ、シルフィも無事みたいだな……さすがは五聖輝将、そう簡単にはいかないか』


『まだまだっ! まだ始まったばかりだよ!』


『そうだなっ!』


 再度、風爆一閃を発動する。が、今度もゴブルの右腕で防がれた。


『ええい、鬱陶しい! 術式発動、絞石呪!』


 ダイトルが術式を発動させ、地上から虎楼閣を絞め殺そうと三本の石柱が伸びる。間一髪伸びる柱を飛び越えた虎楼閣の前に、ゴブルが跳躍しその拳を振るう。


『うっ!』


 ゴブルの拳を重ねた長剣二本で何とかガードするも、その衝撃でズリズリと後方にずり下がってしまう。見ると左右の長剣は根本から砕け折れ、もはや使い物にはならなかった。


『ふむ、なかなか粘るな……なら、これならどうだ』


 長剣を投げ捨てる虎楼閣を見ながらゴブルが呟くと、その魔装甲冑の背面から巨大な……まるで槍の穂先のように尖った金属が二本飛び出した。


『くっ…次は何だ!?』


 動きを止めたゴブルに警戒していると、突然バチバチと尖った金属が数度スパークする。スパークは激しさを増し、遂には強力な雷撃となって放出され、虎楼閣を襲った。その余りの速さに虎楼閣は躱す事も出来ない。


『これは! マズイッ!』


 雷撃は魔装甲冑内で保護された操手である、ゴルディとシルフィにまでは届いていない。しかし、確実に両魔装甲冑の肉を焼き、また痺れさせる事で正常な操作をする事すら許さなかった。

 雷撃の放出が止み、虎楼閣がグッタリと膝をつく。その体からは白煙が立ち上り、雷撃の凄まじさを物語っていた。


『ゴルディ兄っ! タービュレンスが!』


『ああ……あれを何度も喰らうわけにはいかないな。まだ、動けそうか? シルフィ』


『うん。……あっ、ゴルディ兄、タービュレンスに考えがあるって!!』


『考え? だけど、俺にはタービュレンスの言葉なんて……』


 わからない……そう言おうとしたゴルディの頭にイメージが流れ込む。黒龍の組織を通じて接続されたタービュレンス自身から、虎楼閣を介して送られたものだ。


『なるほど……殆どカケみたいな策だが……やってみるか!』


『うん! 頑張ろうねっ、タービュレンス!』


『ほう……』


 構えた虎楼閣を見て、魔装甲冑内でゴブルがニヤリと笑う。


『我が雷撃を受けて尚立ち上がるか……しかし、次で終わりだ』


 走り出す虎楼閣。周辺の魔素の動きで、ダイトルは風爆一閃の気配を察した。


『ほっほっほ、愚かな。何度やろうと我が盾は抜けんよ』


 発動される風爆一閃、その一瞬に合わせるように二回目の雷撃が放たれた。

 虎楼閣へ再び直撃する雷撃。しかし、既に発動された風爆一閃の加速は止まらない。

 高圧電流に焼かれながら、ゴルディは無理矢理虎楼閣を動かす。左右一本ずつ持っていた長槍を束ね持つと、その上に、背に居たはずのタービュレンスが飛び乗る。


『いっけぇぇぇぇっっ!!!』


 ゴルディとシルフィが叫び、タービュレンスの蹴り足に合わせ、虎楼閣が大きくしなった長槍を全力で振った。

 虎楼閣の加速と風爆一閃の超加速、そして虎楼閣の力とタービュレンスの力、全てが一直線上に乗った超超加速でタービュレンスが飛ぶ。


『グッ!』


『ば……馬鹿なっ!』


 無限に引き伸ばされた刹那の交差の後……ダイトルを抱えたまま、ゴブルが地に倒れた。

 獣が毛を逆立てるように、そのエメラルド色をした装甲を動かし前面に集中させたタービュレンスは、まるで一本の緑の矢のように飛び、ダイトルの盾もろともゴブルを貫いたのだ。

 地に転がり、既にその機能を失った魔装甲冑二体をタービュレンスが見下ろす。それを見上げたダイトルが言葉を発するよりも早く、発動

された鋭利な風の術式が何重にも切り刻んだ。


『終わったか?』


 戻ったタービュレンスにゴルディが声をかける。


『うん。でも、捕虜に出来たかもしれないのに……良かったの?』


『いや……あれだけの強さを持った奴だ。倒せるうちに倒さないと、後々困る事になる。あれで良かったさ。……まだ子供なお前にトドメをささせたのはすまないと思うが、許してくれ』


『あのねぇ、ゴルディ兄。僕だって、そりゃあまだ小さいかもしれないけれど、王族の一人なんだよ? これはミンバを守る王族の責務。子供だとかは関係無いの』


『そう……だな。ところでタービュレンスはまだ戦えるか?』


『うん、黒龍の組織と虎楼閣が守ってくれたから、大丈夫だよっ』


『そうか、ならタツヤ達に加勢して欲しい。向こうも五聖輝将が二人、タツヤは一人だ。こちら以上に苦戦しているかもしれない。悪いが、虎楼閣はあの雷撃で、もうしばらく戦えそうにないんでね』


『わかった! ゴルディ兄はここで休んでいて。僕行ってくるよ!』


 そう言うとシルフィとタービュレンスは、タツヤ達に向かって駆け出していく。その後ろ姿を眺めながら、ゴルディは微笑んだ。


「王族としての責務……か。小さかったあいつも言うようになったじゃないか。俺達も負けてられないな……なあ、虎楼閣?」

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