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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第一章 目覚めたら異世界/復活の邪龍神機
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1-4


「ところでヤルバ爺」


 とりあえずの目標と当面の居場所確保に安心した俺は、気になっていた事をヤルバ爺に尋ねる。


「さっきから話に出ている黒龍様や白龍様っていうのは……」


 俺は地図のルーディア山上空を飛んでいるような二頭のドラゴンの絵を見る。


「左様。この絵は黒龍様と白龍様じゃな。ふむ……全ては遠い昔の話じゃ」


 そう言って、ヤルバ爺はこの世界の成り立ちと二頭の龍について話出した。


「この世界は最初、何も無い荒地ばかりが広がる無の大地だった……」


 囲炉裏の薪がパチパチと音を立てる中、静かにヤルバ爺が語る。


「その世界にある日、二頭の龍神が降り立つ。此方には白き龍。命と創造を司る始めの龍。彼方には黒き龍。死と破壊を司る終いの龍。二頭はルーディア山を挟むように睨み合うと、嵐よりも激しく争いだした……」


 ヤルバ爺が地図の向かい合うドラゴン達を指す。


「いつ終わるとも知れぬ闘いの最中、二頭の持つ生と死、破壊と創造の力が、ルーディア山を中心に混ざり合い渦を巻き、世界へと溢れていったのじゃ」


 地図のルーディア山から外側へ広がるように渦を描く。


「混ざり合い、生から死、そしてまた生へと流転する力が、荒れ果てた無の大地にいつしか数多の命を産み出しておった。そうして世界が命で満ちた頃、最初からそれが目的じゃったのか、あるいは単に闘い飽いただけやもしれん……二頭は突然闘いを止めると、共にルーディア山の中へ消えるように潜り込み、深い深い眠りについた……それ以来、黒龍様と白龍様は人々の信奉の対象になり、そうして儂等黒龍様を祀る一族と、白龍様を祀る一族が生まれ、代々受け継がれてきたんじゃ」


「……なるほど、それがこの世界の神話なんですね」


 ヤルバ爺の話に俺も頷く。男神と女神の交わりから、あるいは打ち倒した巨人の体から……そういった創造神話は俺の世界にも多数あったし、おそらくこの話もそういった類の話なんだろう。


「でも……死と破壊を司る……って、正直ちょっと怖いですね」


「ふむ……命ある者ならば皆、そう思うのも無理はないのう。しかし、終わりがあるからこそ命は輝き、破壊からしか生まれ得ぬ物もある。全ては表と裏、光と影。どちらが不用というものでは無い」


 白髭を撫でつけながらヤルバ爺が目を閉じる。


「まあ、タツヤ殿と同じように、黒龍様を恐怖と共に邪龍や破壊神と呼ぶ者も居る。特に、現在の帝国では白龍様……向こうでは光龍と呼んでおるが、その白龍様を唯一至上の神としておるからの。黒龍様には憎悪にも似た思想が蔓延しておる……儂等の集落を襲撃した者達も、そうして徹底的に破壊していきおった。おかげであれ以外は殆ど何も持ち出せなんだ」


 ヤルバ爺が指差す部屋の一角。そこには小さな祭壇のような物が設置され、掌サイズの玉が一つ、龍を象った像の上に安置されていた。


「これは?」


 近づいてみて見ると、その玉は卵のような楕円形で、漆黒色の宝石のようだ。


「それは神具。遥か昔、眠りにつく黒龍様白龍様が遺された遺物の片割れと言われてます」


 リミルが隣に立ち説明する。

 両龍が居ない今、信仰の対象となっている御神体という事らしい。

 俺はとりあえず手を合わせ南無南無と呟いた。


「……ふむ、さあ夜も更けた。今日はもう休むとしようかの」


 ヤルバ爺の言葉で、用意された寝床に寝転がる。

 今後の事や、居なくなった俺を心配しているだろう家族を考えると正直胸が痛む……が、思った以上に身体は疲弊していたらしい。

 すぐに瞼は重くなり、俺は眠りについた。



「五聖輝将を同行だと……私だけでは不足だと……私を信用出来んか! ええいっ! 陛下はいったい何を考えておられるのか!!」


 研究室を兼ねた自室の机をクーラムタが力任せに叩く。


「ふん、それだけ陛下の関心が高いという事だ……」


「なっ……ボ、ボガード……様!何故ここに!?」


 居るはずのない者の登場にクーラムタが狼狽える。


「今の私の発言は……その……」


 そんなクーラムタの言い訳を手で制し、壁にもたれかかったボガードが口を開く。


「構わん。貴様が何を言おうと、結果的に陛下の望みが叶えばそれでいい。それに俺は単なる貴様のお目付役という訳ではあるまい」


「それはいったい……」


「俺と俺の配下は独自に動く。貴様の動きには口を挟まんし陛下へ余計な報告もしない。貴様の好きにやればいい……ただ一つ、魔装甲冑まそうかっちゅうを相当数用意しておけ」


「魔装甲冑を?」


「確固たる理由がある訳ではない……が、陛下が俺を動かすんだ。その程度の備えはしておけ」


「はっ! 承知しました!」


 五聖輝将の一人を動かす事の重大さはクーラムタもまた理解している。

 おそらくはボガードの忠告も、クーラムタを思ってではなく、純粋に確実な成功を……つまりは陛下の願望を叶えるよう、それに見合う準備をさせる為……だからこそ、その案には賛同すべきだとクーラムタは頭を下げながら考えた。


「用はそれだけだ。ではな」


 クーラムタが頭を上げるとそこには既にボガードの姿は無かった。


「……さて、急がねば…………」


 気を取り直し、部隊の再編をすべくクーラムタは術式で配下を呼び出した。

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