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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第一章 目覚めたら異世界/復活の邪龍神機
12/95

1-11


「なにっ!?」


「奴め、自分で腕を切り離したか!」


 ボガードの術式による物か、狼牙に元々ある機能なのか、左腕に続いて右腕を無くした狼牙が、俺の肩を踏み台にして高く後方へ跳ぶ。


『おのれ……まさか、あの様な手があったとはな!!』


 着地したボガードが唸る様に叫んだ。


『いいだろう……こうなった以上、俺の全力で貴様を潰す!』


 ボガードの声に反応する様に、狼牙の装甲が変形する。

胸部と背部が大きく開き、前面に短く数本、背面に細長く三本、一見すると砲のような筒状の物体が伸びていく。


「変形した!? あの形は……砲撃か?」


 からめていた左腕を元に戻し、肩から抜いた槍と狼牙の右腕を放り捨て、放たれるかもしれない攻撃を警戒する。

 しかし、俺の心配をよそに、砲撃が飛んでくる気配は感じられなかった。

 その時、俺は周囲の異変に気づく。さっきまで静かだった木々が激しく揺れているのだ。


「これは……風?」


「マスター、どうやらあいつが周辺の大気を吸引しているようだぞ」


 確かに木々の揺れはまるで、狼牙に吸い寄せられているように動いている。


『……行くぞ』


 ボガードの短い呟きと共に、狼牙の背後で爆発音が起きる。次の瞬間、狼牙の姿が消え、俺の右脇腹がえぐれた。


「っっっ! ……マスター!!」


「くっ、何が起きたんだ!? 狼牙はどこに?」


『ふはは! 見えまい! 追えまい! 気付けまい!!』


 えぐれた脇腹をかばいつつ周囲を見ると、背後からボガードの声が聞こえた。

 慌てて振り返ると、再び狼牙が吸引を始めている。

 どうやら、俺の脇腹をえぐりながら、一瞬で背後に移動したようだ。

 再度の爆発音。俺は両腕を盾に変え攻撃に備えた。

 激突の瞬間、構えた盾を砕き凄まじい衝撃が右腕を走る。

 盾だけでは無い。右腕の感覚が既に無くなり、ダラリと力無く垂れ下がっている……だが、


「イオス、大丈夫か? 今の攻撃……何か見えたか?」


「……ああ、こちらに飛びかかった直後、奴の背後で爆発音が発生しデタラメな加速をしたようだ。攻撃の手段は、その勢いのままの飛び蹴りだな」


 さすが伝説龍、俺には一瞬の出来事だったが、二発目ともなれば、しっかりと見ていたようだ。


「筒状の物体で大気を大量吸引……爆発と超加速……筒状の………あっ! もしかして、ジェットエンジンか!?」


「じぇっとえんじん……とは何だ、マスター?」


「おそらくだけどな。前部の筒から術式で大量に吸引した大気を体内で圧縮し燃焼、背部の筒から一気に放出することであれだけの加速をしているんだろう」


 これで狼牙の攻撃方法はわかった。

 俺の世界の飛行機さながら……いや、それ以上の瞬間加速で放つ超超高速の突撃……すこぶる厄介だな。

 俺はさっき放り捨てた槍をチラリと見る。

 ……だが、本来の狼牙ならば、蹴りではなくあれを使った上での攻撃だったのだろう。そうならなかったのは、せめてもの不幸中の幸いだ。

 そう思い直し、改めて構えると、狼牙はまた吸気を始めている。


「なぁ、イオス……何か策はあるか?」


「ふむ……今の我等で奴を確実に倒しきる攻撃なら、一つだけある。が、それは少しばかり発動に時間がかかる。奴が相手ならば、まず奴の動きを止めなければならない。それと、今撃てるのはおそらく一度だけだ」


「それで肝心の動きを止める策は?」


「悪いな、マスター。現状何も思いつかん」


「そうか、俺も……だっっっ!!!」


 爆発音と共に飛び込んできた狼牙の蹴りを、爆発音のタイミングに合わせ勘で必死に躱す……やはり、その性質上細かい軌道変更はしにくいようだ。

 感覚の無かった右腕を蹴り飛ばされながらも、何とか助かった。

助かったのだが…………これではとても、もちそうにない。


「くっ……絶対絶命ってやつだな」


「……いやっ、マスター! まだだ!」


『術式発動! 水撃槍!!』


 イオスがそう叫ぶのと同時に、眼前に巨大な水槍が現れ狼牙へと飛んだ。

 水槍は狼牙に避けられてしまったが、それよりも…


「今の術式は……いや、この声は!?」


「タツヤさん! お待たせしました!! 私も微力ながらお手伝いします!!」


 力強い声が脳内に響く。それは俺がずっと聞きたかった声だった。


「リミル!? リミルか! 目が覚めたんだな!」


「はい! 大まかな事情は、眠っている間に私の中の黒龍さ…イオス様に聞きました。昼に言った通り、タツヤさんが術式を使えない分、術式での補助はお任せください!」


 元気なリミルの声にイオスも笑い応える。


「ふふん、気軽にイオスちゃんで良いと言ったろう。術式の扱えぬマスターの分、頼むぞリミル」


「ははは、あんまり使えない使えない言わないでくれよ。しかし、無事で本当に良かった……よろしく頼む、リミル!」


「ふんっ、リミルなら我が無事と言っていたろう。本当に心配性なマスターだ。……だが、マスター。喜ぶのは良いがまだ状況は改善してはいないぞ?」


 確かに、リミルが術式を撃てるようになったとはいえ、あのスピードに対抗出来るとは思えない。


「あ、あのっ! その事なんですが……私に一つ考えがあります!!」

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