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邪龍神機 イオス・ドラグーン  作者: 九頭龍
第一章 目覚めたら異世界/復活の邪龍神機
10/95

1-9


 イオスの言葉を受け、間近の魔装甲冑めがけ一気に飛びかかる。

 相手は、放った術式で無傷だった黒龍が、いきなり人型になった事で狼狽しているのか反応すらしようとしない。

 俺は、その隙だらけな胴体に、ボディブロウの要領で拳を叩き込んだ。


ーーッッパンッッ!!!ーー


 手ごたえは無かった。

 強烈な破裂音がしたかと思うと、対峙した魔装甲冑の上半身が弾け飛び、残った下半身がグラグラと揺れ地響きをたてながら倒れた。


「おいおいおい……なんて力だよ……」


「神機である我等の攻撃を雑魚が受けたんだ。当然の結果だな」


 思わず呟いた俺の言葉に、力を振るう事が楽しいのか、イオスが愉快そうに答える。

 仲間がやられ、慌てて他の魔装甲冑が動く。

 二体の魔装甲冑が俺の左右から同時に襲ってきた。

 左手側は巨大な両手剣を振りかぶり、右手側は片手斧を水平に薙ぐように振ってくる。


「おっと……!」


 俺は右足を振り上げると、右手側の魔装甲冑の頭に、凄まじい速度で叩き込む。いわゆるかかと落としだ。

 振り下ろした俺の足は、相手の装甲を中の肉ごと頭から胴まで、まるでバターのように削り取り地面に到達。

 今度は地面についた右足を、大地に沈みこむほどグッと踏み込み、そのまま右足を軸に体を捻る。

 体に遅れて、鞭のようにしなった尾が、回し蹴りのように左手側の魔装甲冑を襲い、振り下ろされた大剣ごとその胴を上下に分断した。


「ほう。マスターはなかなか筋がいいな」


「こういう荒事をしたことはないんだけどな。この体は不思議とイメージ通りに動くよ」


「マスターの思考した動きを、我が肉体の能力で再現するのだからな。多少の無茶な動作でも容易いぞ」


 会話しながらも、更に一体。魔装甲冑の胸をやすやすと手刀で貫く。

 動きを止めた魔装甲冑を貫いたまま持ち上げ、別の魔装甲冑へ思いっきり投げた。

 相手は投げつけられた仲間を受け止めきれず、他の人間大の兵士達を多数巻き込み、木々をなぎ倒しながら転がり続け、元の形状がわからないようになってようやく止まった。


『きっ! 貴様は何者なのだ!! ……その姿は……伝説の邪竜では無いのか!?』


 そうして、瞬く間に五体の魔装甲冑を倒した時、全体に響き渡るような大声が響く。


「ん? 誰だ?」


 キョロキョロと辺りを見回すが、声の主は見当たらない。


「おそらく、術式で声を拡張しているんだろうな」


「ああ、なるほど。拡声器みたいなものか」


 イオスの説明に思わずポンと手を打つ。大暴れしていた巨人がやったのだから、だいぶ滑稽だったろう。


「なあ、イオス。俺の声って今のと同じように外に聴かせられるか?」


「ふむ、可能だ。マスターがそう念じながら喋ればいい」


 イオスの言う通り、俺は外に伝えるイメージを持ちながら話す。


『おい、お前こそ何者だ! ……いや、聖光龍帝国の奴らだってのは知っている。なぜこの森を襲う!』


 俺のイメージ通り、俺の声は相手の大声と同程度の声量となって響いた。


『そんな事を貴様に教える必要は無いっ! ……それよりも、私達が帝国の兵だと知っているなら話は早い。随分と良くできた魔装甲冑のようだが、帝国を敵に回したくなければ、今すぐそれを降り私に降伏せよ。そうすれば、貴様の命の保証はしよう』


 こちらが会話出来る相手と知って余裕が生まれたのか、向こうはやけに偉そうな物言いで条件を突き付けてくる。


「ほぅ、我をあんな雑魚共と同じ扱いか……」


イオスが静かだが明らかに怒気をおびた声をあげる。

俺は少しの迷いも無く即答した。


『嫌だな、断る』


『何っ!? 貴様、自分の言っていることがわかっているのか!』


『そっちこそ、ちゃんと状況が見えているのか? 俺は、お前達の戦力の要らしい魔装甲冑を五体、軽々倒したんだぞ? この状況で、お前達が降伏するならわかるが、降伏しろっていうのは悪い冗談だな!』


『ぐぅぅぅ! 魔装甲冑五体を倒した程度でつけあがりおって!! ……ふんっ、いいだろう! それが貴様の選択ならば、墓場で後悔し続けるがいい!!』


 声の主が合図を出したのか、今まで何も無かった空間に新たに魔装甲冑が現れた。

 その数、およそ十五……先に出ていた生き残り五体とで計二十体余りになる。


「あんなデカイ物、一体どこから出てきたんだ?」


「ふんっ、他の場所からここへ転移させたようだな。雑魚のくせに一端の機能がついているじゃないか」


「なるほど、空間転移とかなかなか凄いな」


「だがまあ、雑魚が多少増えたところで、我等の前では問題あるまい?」


「そうだな。さっきの感じなら、この倍以上でもいけそうだ……なっ!」


 再び、魔装甲冑へ飛びかかろうとした刹那、俺は横合いからの攻撃で激しく吹き飛ぶ。

 何とか体制を整え着地した俺を、他の魔装甲冑よりも一回り巨大な、狼を模した頭部の魔装甲冑が見据えていた。


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