ダメな人
ある学校での出来事。
黒板の前にはか細い声で歴史について語る教師がいる。
それをつまらなそう握った聞いている生徒が一人。
生徒はもう飽きた、とノートの端の方に目を移し落書きをし始める。
今描いているのは好きな美少女アニメのヒロイン、なのだが、美少女に似ても似つかないバケモノになってしまった。
見るに耐えないものを作り出してしまった生徒は教科書の上にある消しゴムを手に取ろうとすると。
「ぃって…」
教科書の端で手を切ってしまった。
すると傷口から出た血が一滴、さっきの落書きの上に落ちる。
「あ、やべ…」
このままでは真っ白で綺麗なノートに赤いシミがついてしまうと、ポケットからティッシュを出そうとしたその時。
さっき落書きの上に落ちた血が光り始める。
すごい勢いで光はどんどんと強くなっていく。
「え…?」
そして光はどんどんと強くなっていき、クラス全体を飲み込むと、大爆発を起こした。
ーーーーーーーーーー
一瞬の出来事だった血が光り始めたと思ったら大爆発が起こって、それで、学校が吹き飛んだ、俺以外。
「あ、あああ?」
俺は驚いて間抜けな声しか出なくなっている。
何があった、なんでこうなった、えーっと…血が光って、爆発して、それで…それ、で…、あれ、は?
俺は視線を上に向ける。
「オーホホホ、我を使い魔として呼んだのは貴様か!ご主人様」
誰だこいつ。
ーーーーーーーーーー
ここはマンション、俺の家だ。
俺は目の前にいる綺麗なドレスを着た女の人をボーッと見ている。
「おい、おい!聞いているのかご主人様」
大声を出されてボーッとしていたことに気づく。
「え、ああ、ごめん聞いてなかった」
「なんじゃと!本当にだらしのない…ちゃんと聞いておれ、次はないぞ!」
俺は学校が爆発してからこの女の人に会った。
最初は空中に浮いている人間や爆発した学校にも驚いた、だが、俺はもっと重要なことに気づいてしまったのだ。
「どうした?ご主人様、出てきた使い魔が美人すぎて驚いておるのか?」
女の人は顔を覗き込んでくる。
「…った」
「ん、なんじゃ?」
「やった!」
「は?」
「おっしゃー!これで学校行かずに済むぜーヤッター!」
俺は空中に浮いている人間より、爆発した学校より、学校がなくなって学校に行かずに済むようになったことに気がいってしまったのだ。
「は?お前何を言って…」
「あ、でも学校なくなってるってことは人死んでんだよな、あ、ちょっとそこの人」
浮いている女の人を手で招く。
「な、なんじゃ、ご主人様」
「この爆発ってあなたがやったんですか?」
「ま、まぁ我が召喚される時の魔力波でご主人様がいる場所以外は草すら生えてこんじゃろうな」
「よし、じゃあこれ全部あんたのせいってことだな」
「え!ちょ、ちょとまって…」
「よっしゃー!学校行かずに済むー!」
「ごめんなさい、ごめんなさい直しますからー!」
女の人は涙目になりながらも俺の腕を必死に掴んで謝ってきた。
その後は女の人が指を鳴らしただけで学校も人も全部元に戻ったり、瞬間移動したり、色々驚きすぎて頭が追いつかない状態になって今に至る。
「…だから我はここにこれたわけじゃ」
「ごめん全然分かんない」
「なんでじゃ!」
女の人は机をバンッと叩いて立ち上がる。
「そりゃわかんねーよ、俺に魔力?が凄いあるとか、お前が魔女だとか」
「ちゃんと理解しろ!もう一回話すぞ、よく聞け」
「ちょっと待った」
俺は手のひらを突き出す。
「なんじゃ?」
「そもそもさー、説明とかの前にまず名前言えよなー」
すると女の人は思い出したように手を打ち、姿勢を正して、半身になってこう言った。
「我は、ユリア·メディシス、神に認められこの地に舞い降りた、天才魔女である!あ、普通にユリアでいいからな」
「…あー、シリウス·グライン…です」
「ああ、よろしくなご主人様!」
そこは名前じゃないのかよ。
今日この時から魔女ユリアとダメ人間シリウスの日常生活が始まる!