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IF LOVE

作者: Datto



「よっちゃん」



岸松 義人(キシマツヨシト)


肩を叩かれ振り返った


頬に指が刺さった


しまった、はめられた



「引っ掛かった」



誰なのか目を瞑ってもわかる


はめられたからだ


こんなことをする


物好きでガキっぽい


女子高生はアイツしか居ない



「また、お前か苗」



奥鹿 (オクシカナエ)


長い綺麗な黒髪


不思議なオーラ


自然児


女っ気無し


個性的過ぎる


背の高いスタイルのいい美人な


変人女子高生だ



苗はニッっと笑っていた


岸松は眉間にシワを寄せて


眉をピクピクさせていた


指が頬に刺さったままだ


苗が何度も


笑顔でつつき続けている



「よっちゃん可愛いねぇ」



「いつも何なんだよまったくぅ」


ょっとスネて呆れた声で言った


苗は尚も笑顔だった


だが、いきなり溜め息をついた


岸松はいきなり過ぎる変わり様に


少し驚いた



「どした?」



「あぁ…よっちゃん…

あたし後2週間で卒業だよ―

寂しいよ…」



悲しげな表情で目をそらし


言った



「どした?お前らしくねぇな」



そう言って苗の顔を覗き込んだ



「だって今みたいに

よっちゃんイジれなくなるぅ

よっちゃんのほっぺ気持ちいのにぃ」



顔を上げ明るく言った


でも


無理矢理な気がした


目を細め泣いているが


なんだか目が潤んでる気がした


だが、ずっとニコニコしている


気のせいだと片付けた



「動機不純だぞ

それに俺のほっぺが

ボロボロになるつぅのっ!」



苗のデコを人差し指で


突いた


苗は目をキュッと閉じて


すぐに目を開けまた笑った



「よっちゃんめぇ

遣りやがったなぁ!!

それに

よっちゃんのほっぺは

あたしのモンだから」



そういってVサインをして


後ろを向き


手を振りがら帰っていった

        



その日から苗が


岸松に近寄らなくなった


気になる…


目が合う


苗が走ってその場を去る


岸松の授業では


苗は毎回保健室に行くか

に行くか

先生達に見つからない所で


うろちょろする



2週間があっと言う間に


あと3日…


          

          

岸松は部活の用事で


屋上にある倉庫に向かった


夕方は、まだ少し寒い


でも、最近眠すぎてるので


目を覚ますには丁度良かった


屋上は2段になっており


2段には仕切りの壁があって


倉庫はその壁の奥に在った


寒くて目が覚めたが


すぐに寒さが眠さに重なり


段々体が重くなってきた



(やっべえ無理が祟ったなぁ…

早く用事済まして帰んねえと)


小走りで倉庫に向かった


中には小さなランプしかなく


よく周りが見えなかった


探している物がなかなか見つからない



(…!?)



いきなり体から力が抜けて


床に倒れ込んだ



(やっべえ…ココじゃ気付かれねぇ……)



段々と意識が


遠退いていくのが解った






どれくらい時間が経ったのだろう


ぼんやりと目が覚めた


倉庫の中だと言うことを


すぐ理解した



(…!?俺1人だったよな)



誰かが


岸松に後ろから抱きついて寝ていた


暖かさが伝わってきていた


目を覚まし


自分に抱きついている手を見た


…すぐに解ったよく見た手だ


更に


黄色のスカジャンが


その手を境に上の部分に掛かっていた

スカジャンもアイツのだ


耳を澄ますと


小さい寝息が聞こえた


かわいい…


手をそっと離し


寝返りをうって


顔を確認した




やっぱりアイツだった


苗…


その寝顔は小さい子の様だった


鼻をつまんだ


苦しそうに唸った


目を覚ました


目があった


こんなに顔が近いのは初めてだ


苗がニコッと笑った


寝起きのその顔は


いつもに増して


純粋で素直で可愛かった


なんだか顔が熱くなってきた




「おはよ…

よっちゃん♪」


ふわふわした声


柔らかい笑顔


薄暗い部屋の中で輝いてる


長い綺麗な黒髪



「よっちゃん大丈夫?」



「大丈夫だよ

ありがとう」



笑顔で返し


黒髪をそっと撫でた


苗は少し驚いた顔をして


目を瞑り


岸松の胸に顔を埋めた


岸松もそっと抱きしめた


苗が震えてる



「寒いか…?」



苗は大きく首を横に振った



「よっちゃん…

あたし…怖いよ…」



気づいた


泣いてる



「よっちゃん…

会えなくなっちゃうよ…

寂しいよ…

よっちゃんが居なかったら

あたし…」



「苗!!

泣くな!!」



岸松がさっきよりも強く抱き締めた


岸松が辛そうな顔をしていた


苗は岸松のシャツを強く握った



「苗…

俺もお前と離れたくねぇよ!!

なぁ…ずっと俺と居てくれよ…


寂しかった苗にずっと会えなくて

辛かった苗にずっと避けられてて


なぁ…俺を1人にすんなよ

一緒に居てくれよ…なっ?」



苗が俯いたままゆっくり頷いた


岸松は苗の肩を掴んで


座らせた


尚も下を向き続ける苗


岸松の手が苗の顎に触れた



「…!?」



何も言わさず


キスをした


優しく


温かく


深いキス…



「苗…俺バカかも…

最近になって苗が好きって気づいた」



照れながら


苗の様子を伺いつつ言った


苗が笑った…



「本当にバカだよ…

あたしはずぅぅっと

初めて喋った2年の時から…

ずぅぅっと…

好きだったつぅの…」



苗も照れた


目が合った…


笑った…


また キスをした…



「苗…なんでココに来たの?」



「屋上は…あたしの…住処だから♪」



「そっか…嬉しい…

苗が居てくれて…

愛してる…」



「うん…」



しばらく何も言わず


2人愛を確かめる様に


手を握ったり


キスをしたりした


2人の恋が実った日





「帰んなきゃな…」



「そうだね…

って…今何時?」



時計を見た



「やっべぇ…12時だぁ…

苗ゴメンな…

早く帰んなきゃな…

って平気か1人暮らしだもんな?」



「うん…

でも、帰る」



2人は手を繋いで倉庫から出た


外は寒かった


上を見上げた



「…星!!」


綺麗に星が輝いていた



「ホントだ星だ…

苗はそーゆうの好きだよなぁ」



「うん…」



「でも今の夜空なんてまだまだでさ

苗は

1人だから行ってないと思うけど

自然の中での夜空はもっと

綺麗なんだよ…」



「ふぅん…

いいなぁ…

よっちゃんは

そんな綺麗な物を知ってるんだね

…誰と見たんだろ

あたしが隣りになりたいなぁ」


「苗って甘えん坊だな!

…俺恥ずかしながら

年=彼女居ない歴だから…

だから誰とも見てねぇよ

…苗が卒業したら一緒に見に行こ」



「うん、行って上げる♪」



「上からかよ(笑」



2人はそんな事を言いながら


降りて行った




夜の学校は静かで


昼間と違う表情を見せていた


職員室には今日は徹夜組は居らず


苗が居ても平気だった


幸運なことだ


岸松はデスクを片付け


ロッカーに荷物を取りに行き


私服に着替えた



「意外によっちゃん…

服のセンスイイねぇ♪」



「意外って何だよ」


「もっとダサダサかと思った

だって

たまに髪ボッサボサだから(笑」



「髪はめんどいんだもん」



沢山笑いながら駐車場に向かった


遅いので岸松が車で送る事になった


岸松の車は白のボックスで


中もシンプルだった


苗は家に着くまでに寝てしまった


岸松はたまに苗の寝顔を見ながら


苗の家に向かった






家に着いても苗は起きず


仕方なく玄関まで向かった


アパートだか警備もしっかりとし


かなり綺麗なアパートだった


苗は一人暮らしだが


親が居ないわけではなく


親が海外で働いてるために


1人暮らしをしている


更に親はお金持ちなので


いいアパートに住んでいる


それに親の秘書やお手伝いさんも


沢山居るので困ることはない


頼もしい親だ




アパートの前まで来て困った…


オート・ロック…


苗を起こすしかない


致し方ないことだ


折角起こさなかったのに水の泡だ



「苗ナンバーわかんねえよ―」



「……」



「苗ナンバーだけ言えばイイからぁ―」



「……5…9…7…5…*!」



「ありがとー

…ついでに鍵…」



後ろからヌッと手が出て来た


苗を背負っているから


苗だと分かるが


いきなり手が来ると怖い物だ


さて 苗の手から鍵を受け取り


ナンバーを打った



「ありがとう苗もう寝てイイよ

おやすみ」



苗は速攻で寝た


岸松はエレベーターに乗って


苗の家まで上がった


苗の家は


学校の用事で先生として


数回来ているので知っていた




鍵を開け電気のスイッチを探した


すぐにスイッチは見つかっ


リビングもここで操作できるので


玄関とリビングの電気を付けた


廊下を通り抜けリビングに出た


いつもと違った


全く生活感もなく


殺風景で


ソファーとテレビしかなかった


いつもはもっと家具があり


高級感溢れていた


苗をソファーに下ろし


廊下に出て部屋を1つづつ見て行った


3部屋中2部屋何も無かった


1部屋は苗の部屋らしく


ベットと机・本棚・ピアノがあった


いくら1人だからと言っても


物が少なすぎる


それに前と違いすぎる


前はもっとインテリアなどがあり


高級感溢れていた


リビングに戻り


苗を起こした





「おい…苗…起きろ」


苗は起きない


苗のほっぺを引っ張ってみた


苗が唸った


今度はペチペチと叩いた


緊迫していたはずが


面白くて笑ってしまった


改めてちゃんと起こす



「苗!!起きろ!!」



苗が寝ぼけながらも


やっと起きた


良く寝る子だ




眠そうに目を擦りながら


起き上がった



「何?」



「家の中どうしたんだよ!?」



苗がにっこり微笑んだ



「実家に送った

ヤケクソかなぁ…」



苗は突発的なのは知っていたが


ここまでとわ


思っていなかった



「どんなヤケクソだよ…」



呆れた


苗は更にピースまでした



「よっちゃんへの恋わずらい」



「…俺のせいかよ」



「うん」



「なら俺がお詫びしないとな」



しばらく考え


伺うように


苗の顔を覗き込んだ



「生活しにくそうだから…

卒業したら俺んちで生活する?」



恥ずかしがりながら


言うと苗は満面の笑みを見せた


苗は義人の頭を撫でた


義人はちょっとだけ拗ねた


苗はそれを見てから深く頷いた



「約束♪」



そう言って小指を出した


義人も小指を出し


指きりげんまんをした






長い…


長い…


長すぎる!!


校長にPTA会長早く終われ!!


誰もが感動の無い唯一の時間


卒業する


この後涙の別れが待ってる


長いようで


短い


そんな3年間


とりあえず校長のはなしは


3年間の中で1番


長いと感じた時間だろう



苗は隣の女子と話し


義人は先生らしく


背筋を伸ばし立っている


スーツが格好いい


髪はワックスを使い


整えられている


いつもより


大人の男と言った感じだ


苗は喋りながらも


ちらほら見ては


目に焼き付けていた


義人も苗の横顔を


たまに見ていた


目が合うことは無かった






長い長い卒業式が終わった


中庭で卒業生達が泣いたり


騒いだりしていた


人数が多く凄い騒ぎだ


先生達の周りには


写真を撮るため集まっていた


義人の周りにも


生徒達が集まっていた


まだ若い義人は


結構な人気振りだった


他の先生達より


生徒の数が多くガヤガヤしている


苗はその中に居なかった


苗はその中庭自体に居なかった


義人は少しして


その事実に気付いた


だが先生としてココから


居なくなる事は出来なかった


仕方なく時が過ぎるのを待った




長い長い


最後のお別れが終わった


義人は生徒に手を振りつつ


生徒用玄関に向かった


目指すは


今日までの


3年6組5番


奥鹿 苗の下駄箱


…靴が在る


まだ学校に居る


校内ダッシュ


先生だって今時廊下は走る


向かったのは


6組の教室


勢いよく中に飛び込んだ


居ない


また廊下を走った


卒業式後の校舎は


人がかなり少なく走りやすく


そんなことに感謝


向かったのは図書室


…居ない


階段を駆け上がる


もう足がパンパンだ


一番上まで上がった


屋上へのドア


勢いよく蹴り開けた


鉄だったので


意外に痛くジンジンした


だがすぐに屋上を走り回った


最後に見たのは


倉庫…


苗と義人の新たな


始まりとなった場所



「お疲れさま♪」



苗が倉庫の上に座って


手をヒラヒラと振っていた


義人は息切れして


膝に手を付いていた



『…いなく…なるなよ…っはぁ』



「…居なくなれないよ

どこに居たって

よっちゃんが見つけ出すから」



『……』



驚き混じり


嬉しさ混じり


顔が少し火照ったのを感じた


苗はそれを見て


満足げに微笑んでいた


小悪魔的な少女だ





「よっちゃんあたし卒業したよ」



「うん、おめでとう」



「ありがとう」



苗は倉庫の上から


ジャンプして降りた


そして義人の前に立った



「もう付き合って

問題ないんだよね?」



「多分ね」



「なら…言葉が欲しい」



「言葉?」


苗がニッコリと頷いた


すると義人は


呆れたように笑った


そしてキスをした


優しい優しい愛のキス


抱き合う


ふわりとした温もり



「言葉じゃないよ?」



「言葉より

キスしたかった

苗…愛してる」



「愛してる」



叶うはずなかった


有り得ないような恋


それでも叶った恋


それは本当の恋


消えることは無い


愛のある生活は良いモノだ


たまには恋する


それが永遠に変わる


それでも良いんだ


これから2人で一生を生きよう



「っじゃ家帰ろっか?」



「先生の家?」



「もう2人の家だよ♪」



「そっか♪」


愛は2人のすべてです





END


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― 新着の感想 ―
[一言] なんか、暖かくてすごく気持ちが伝わりました 頑張ってくだい
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