再開
いよいよ今日か、期待に胸をふくらませて待ち合わせ場所に行くと、まだ彼は来ていなかった。ふざけんなよと思いながら苦労して運んできたスコップをブンブンと振り回していると後ろから
「おい、何やってんだよプコップなんか振り回して、危ないだろ。」
と聞いたことがないはずなのに、どこか懐かしい声で注意されて後ろを振り返ると、あの時よりずっとたくましくなった彼がいた。
「えぇっすずちゃん!?びっくりしたー大きくなったね。声も全然違うから誰かと思っちゃった。」
「あぁ、声変わりしたからな。お前は変わんねーよな。久しぶりに会うからわかるか不安だったけどすぐわかったわ。それとすずちゃんいうな、リョウだ。」
どこかほっとしたように、恥ずかしげに話す彼は相変わらず照れると顔が赤くなるらしい。名前の訂正をするのも変わらない。昔のように向きなって言い返す感じではなく、懐かしむような感じだったけど。
「えへへ、まぁね。うんじゃ行きますか。行くぞ!タイムカプセルを見つけるのだ!」
とりあえず褒められてるのか馬鹿にされているのかわからないが、多分両方だろう。とりあえず褒められたと思っておくか。 気を取り直して元気よく歩き始めると彼もくすくすと笑いながら後ろに続いた。あの頃と違って荷物を持ってくれたり、ムキになって言葉を返してこない彼の大人びたところに時の流れを感じた。
五年前の3月20日。私たちは鳶岡小学校最後の卒業生として、卒業した。空は青く、太陽の光が反射して輝く雪は私たちの門出を祝っているようだった。
「今日で最後だな」
「うん。」
卒業式が終わり、先生に最後に学校を歩き回る許可をもらって私たちは人気の無い廊下を歩いていた。二人の足音だけが廊下に響いた。
「お前中学どこ。」
どこの中学に進むかなんてとっくに知っているはずなのに、唐突に彼は聞いてきた。
「確か、長峰中学校。」
「遠いな。」
どこかさみしげに彼は言う。
「ねぇせっかくだから、探検しようよ。探検。」
最後の最後で暗い空気になるのは嫌だ。場の空気を変えようと私言った。
「探検ってお前」
「いいじゃない。どうせ暇だし」
「そうだな、今日で最後だし。それなら行きたいところあるんだけどいいか。」
「いいよ。てか、意外と乗り気だね。なんか意外。ふふっ」
「うっせ。さっさと行くぞ。」
顔を赤くして頭をガシガシとかく姿がなんだかおかしくてまた笑ってしまいそうになったけれど、ここで笑ってしまったら、きっとまた機嫌が悪くなるだろうと思って笑いをこらえて、彼の後ろに続いた。
「わープールだ。泳ぎたーい。」
「冬のプールに飛び込むなんて自殺行為だぞ。しかもきったねーし。
「いや、冗談だし。間に受けるなよ。」
ポンと彼の方を叩く。
「俺が悪いのか」
少し困ったように地面を見つめる彼はなんとも面白い。
「プールかー夏になるといっぱい泳いだねー。」
「監視員の武田さんがいつの間にか家からスイカとってきてくれたよなー。」
「監視員が途中で帰ってもいいのかって話だけどねーアハハー」
しばらくどうでもいい、思い出話に花を咲かせた。
「次は私の番だねさぁ、行こう!」
「おい!プールサイドは走るなよ!」