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IFバッドエンド②「“お帰りなさい”と告げることすらできない」

 前話の続き……のようなもの。

 こっちは死にネタではなく病みネタかな。

 “いってらっしゃい”と言ってクロードを送り出してからもう何日が過ぎただろう。

 七日くらいで帰ると言っていたのに。こんなに遅いなんて初めてだから心配だ。


 ――絶対に帰ってくる。約束だ。


 クロードはそう言っていた。だから、きっと帰って来てくれる。

 絶対なんて、信じてないけど信じている。今まで彼がソニアとの約束を破ったことなんてないのだから。


「ソニアちゃん、クロードはもう……」


 マルセルが何か言っている。


「辛いだろうけど受け入れてくれ。クロードはもう……死んだんだ」


 嘘だ。


「あいつはもう帰ってこない」


 嘘だ。


「もう、どこにもいない」


 嘘だ。

 うそだ。ウソだ。……嘘だ!


 ――絶対に帰ってくる。約束だ。


 そんなの嘘。


「うそ、つかないで」


 自分のものとは思えないくらい冷めた声が出た。ハッとして口に手を当てる。

 怒られるかもしれない。そんなソニアの予想に反してマルセルは痛ましそうな目でこちらを見つめていた。まるで、可哀想な子どもを見るかのように。


「ソニアちゃん、俺の話を聞いて」


 嫌だ。聞きたくない。嘘なんて聞きたくない。

 何も聞きたくないから耳を塞いだ。何も見たくないから目を閉じた――そこでソニアは夢から目覚める。



   ☆★☆



 怖い夢を見た。


 クロードが帰って来ない夢。

 マルセルが嘘ばかり吐く夢。

 ……クロードがいなくなる、夢。


 心臓がどくどくいっている。寝ていたはずなのに走り回った後のように汗びっしょりだ。頭が痛い。眠っているときに泣いてしまっていたのだろうか。頬をこすると涙の跡があった。


「おおかみさん、こわいゆめをみたの」


 隣に声をかける。


「おおかみさんがいなくなるゆめ。まるせるさんがね、おおかみさんはかえってこないってうそつくの」


 クロードに夢のことを話すと少しだけ心が軽くなった気がした。なんだかよくわからない焦りと悲しみがすうっと消えていく。

 そうだ、クロードはここにいる。ソニアの傍に。だから大丈夫。


「ひどいよね。こんどまるせるさんがあそびにきたら……おこる」


 夢のことで文句をつけられてもマルセルも困るだろうが、一言くらい何か言ってやりたい気分だった。……それくらいひどい嘘だったから。

 クロードが帰って来ないなんて、いなくなってしまうなんて。


「うそはだめだもん」


 死んでしまうなんて、そんな嘘。


「うそは、だめ」


 ――絶対に帰ってくる。約束だ。


 クロードは帰ってきてくれた。もうどこにも行かないでずっと家にいてくれる。ソニアの傍にいてくれる。


 あれ、でも……いつかえってきたんだっけ?


 クロードの“ただいま”を聞いただろうか。ソニアは“おかえりなさい”と言っただろうか。言い忘れるなんてありえないのに。


 べつにいいや。


 “ただいま”も“おかえりなさい”もなくていい。ずっと一緒にいられればいい。

 帰って来てくれないと“おかえりなさい”も言えないから。だったらそんなのなくていい。帰って来なくても、クロードはここにいる。ここに――ソニアと一緒にいるはずだから。


「おやすみなさい、おおかみさん」


 そうして、ソニアは目を閉じる。次に見る夢が優しい夢であることを祈って。



 ――――ソニアの傍にかつてあった温もりはもうない。





 機会があったら他のIFバッドエンドも書きたいなあ。本編がハッピーエンドなだけにバッドエンドでしか書けない台詞とかシーンとか書きたい。

 でも需要なさそうですね。本編もちょっと暗いからね! 仕方ないね!


 ……次の嘘を吐いてもいい日にもし書く気力があったら書こうかな。

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