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野球未経験者が臨む練習試合

「未経験者なんだ。それにしては

まともな球投げるじゃん。」

「ああ、それ先輩にも言われたけど、

僕を入部させる為のお世辞だと…。」

「まあそれもちょっとは入ってるかも

しれないけど、昨日から始めてこれなら

十分凄いと思うぜ。特にコントロールが良い。」

「そうかな…。」

鈴木田とのキャッチボールは思っていた程

恐ろしいものではなかった。

こちらが初心者と聞いて、手加減して

くれてるのもあるだろうが、

それほど速い球は投げてこない。そこに、

「おーい、そこの1年2人!

投球練習やってみるかー?」

キャプテンである澤田がグラウンドの隅で

キャッチボールしている自分達の方へ

駆け寄ってくる。

「「やります!」」

目を輝かせた2人が、声を揃えて返事した。



「とりあえずこいつを紹介しておく。

2年のピッチャー、辺見 廉之助だ。」

「よろしくぅ!松中!鈴木田!

2人とも有望株だって聞いてるぜ!」

「あ、ありがとうございます!」

有望株、自分がそんな風に評価されているとは

夢みたいだ。

「そんな君達に重大発表!キャプテンと俺でじっくり

話し合った結果!お前達は次の練習試合で

2イニングずつ登板することになった!」

「…えっ?」

「いきなりですか?」

「ああ、いきなりだ。夏の大会まで

時間が無いからな。練習試合は5月16日だから

それまでの間に2イニング投げ切る

スタミナをつけていこうぜ!

ま、鈴木田は経験者らしいから

必要ないかもしれないけどな!」

「…にしても、いきなり過ぎませんか。」

鈴木田が言う。

「んんー、1年がいないと、ピッチャーが

辺見だけになるからなぁ。

きついかもしれないんだけど

すぐにでも使えるようにしていきたいんだ。」

澤田が答える。

「ピッチャー、本当に1人だけしかいないん

ですか?怪我とかで休んでいる人は…。」

「ま、いないことは無いんだけど、な。」

「……分かりました。」


その日からは只管投球練習。

少しずつ投球数を増やしていき、

前日には2イニングは投げ切れそうな

球数くらいは投げられるようになった。

それでも後半、バテ気味だが。



ー練習試合、当日ー

「1年は練習の成果を出せるように、

2、3年は1年がミスしても落ち着いて

カバーしていこう!」

「はい!」

キャプテンの澤田が部員を鼓舞する!

そして、監督である寺内 道元から

スターティングメンバーの発表。

「1番 ライト 古谷 尚樹 !

2番 セカンド 竹林 真太郎!

3番 センター 火宮 凛!

4番 ファースト 佐久間 太郎!

5番 サード 滝 龍慈!

6番 キャッチャー 澤田 匠!

7番 ショート 窪田 光邦!

8番 レフト 辺見 廉之助!

9番 ピッチャー 鈴木田 貴史!」

「……ちょっと待ってください、監督。」

声の主は、2年生 センター、火宮だ。

「何故レフトに辺見を置くんですか。」

「ん、何故とはどういうことだ?」

「本来レフトは柴谷です。今回、

1年の育成の為にピッチャーに鈴木田を

選んだのは分かりますが、

その影響を柴谷が受けるのは納得いきませんね。」

「……守備の面でも打撃の面でも、

辺見の方が実力で上回っている。

少しでも使える方を選ぶのは当然だ。」

「そうでしょうか?打撃はともかくとして、守備で

辺見が上回っているとは思えませんが。」

「ちょ、ちょっと!火宮!ストップ!」

割り込んだのは同じく2年、柴谷 将広。

「僕は、別にベンチでも構いません!

1年の育成のためですし…。」

「柴谷、これが今回だけだと思うか?

これから1年がピッチャーとして

使えるようになっていけばいくほど、

辺見の登板回数は減るんだぞ。

つまりお前がスタメンに選ばれる回数も減る。

ここは譲るべきじゃないだろう。」

「で、でも…辺見君の方が上手いのは事実で…。」

「自信を持て。少なくとも守備に関しては

お前の方が上手い。打撃面でも、

そこまで差が大きい訳じゃない。

何よりお前がレフトの方が、俺がやりやすい。」

監督は黙って会話を聞いていたが、

ここで口を開いた。

「分かった。今日の試合、途中で

辺見が登板することになるだろうから、

そこからレフトに柴谷に入ってもらう。

だから、打撃、守備共にどちらが上か、

今日の試合で判断させてもらおう。」

「分かりました。それで構いません。」

「なんで火宮が返事するの…。」

「辺見もそれで良いな。」

「はい!大丈夫っすよ!」

「…よし、んじゃ各自でアップとってこい!」

監督が手を叩いて言った。

「はい!」

練習試合開始まで、45分。


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