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星に願いを

蛙は天の川を見つめて思いました。


これからもよろしくね と。


そして

いつまでも仲良しのままいられますようにと星に願いました。



…今日は干上がりそうなくらい暑かったなあ。


蛙は遠い昔のことを思い出していました。

まだ蛙が人間だった頃のことです。


田舎の長い長い一歩道を歩いた日のことを。

それは国道という道でした。

暑い夏の日でした。


蛙は蛙のお父さんと妹と三人で歩いていました。


道ばたにはウシガエルという見たこともないような

大きな蛙がたくさん死んでいました。

田んぼから田んぼへ移動する間に暑さで参ってしまったのか

トラックにひかれてしまったのかわかりません。


干上がってパリパリになってしまったものや、まだ少し体が濡れているものもありました。


三人の頭の上には夏の太陽が燃えるように降り注いでいました。


蛙はとても心細くなりました。


僕たちもこんな風になるんじゃないかな…



たまにトラックが三人のすぐそばをものすごい勢いで走って行きました。

そのたびに道の砂ぼこりが高く舞い上がりました。


道の先は蜃気楼のようにゆらゆら揺れて見えません。


お父さん蛙が言いました。


もうこれしかないけんな。


蛙がハッとすると、お父さん蛙の手にはガムが一枚ありました。


昨日の朝からなんにも食べていません。


でも蛙はさいごのガムをもらう気持ちにはなれませんでした。


僕はいいよ。

妹にあげて。



妹はもうなん時間もなんにもしゃべらずにずっと歩き通しだったからです。

それにガム一枚食べてもどうにもならない感じがしたからです。


ほな半分こしたらええわ。


お父さん蛙は言いました。



道ばたに干からびたウシガエルが大きなお腹をみせてひっくり返っていました。



夜になって三人はやっとお父さん蛙の妹たちの家にたどり着きました。


蛙は助かったと思いました。

これでごはんを食べて、ゆっくり寝られるぞ!


ところがおばさん蛙の一人が、お父さん蛙をなじり始めました。


よくわからないけど怒っているようでした。


二人のケンカはだんだん大きくなって、ほかのおばさん蛙たちもどうしたらいいものか困った様子でした。

おじさん蛙達は黙っていました。



迷惑だわ!

兄ちゃんはいつもそう!


そんな言葉が次つぎに聞こえました。


やがてお父さん蛙も怒って言い返してしまいました。


もうええわい。

こんなとこ来たんが間違いじゃった。

出て行くわい。



蛙は少しがっかりしましたが

お父さん蛙の悪口をいう人達と一緒にいるわけにはいきません。


お父ちゃんいこ。


蛙はお父さん蛙の腕を引っ張りました。


妹には悪いことをしたなと蛙はちょっぴり後悔しました。



三人はまた真夜中の国道を歩きはじめました。




蛙はみんなどうしてるんだろうなと思いましたが

すぐ考えるのはやめました。


蛙はあの道の光景を忘れたことはありません。

でもたまにこうして思い出すことはあっても

昔のように心が泣いたりはしませんでした。



蛙はもう一度

夜空を見上げて思いました。


お姫さま。


これからもよろしくね…



そして

いつまでも仲良しのままいられますようにとそっと

そっと願いました。



そっと…


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