風のメッセージ
その頃
お姫さまはお城の窓から森を見下ろしていました。
そしてあれこれ物思いにふけていました。
お姫様は思ってました
今日は蛙さんみかけないわね
でもいつもいつも一緒に居れるときはずっと一緒にいてくれるから
たまにはゆっくり自分の時間も必要よね
お姫様は知ってました。
疲れていても無理して自分と居てくれる時間を優先してくれていることを
でも 蛙さんがいない時間は思いのほか長く感じるのでした
どうしてるのかしらね
気になるなら蛙さん宛に伝書鳩を飛ばせばいい
でも蛙さんにも都合のわるい時があることも知っていたので鳩を飛ばすことを躊躇してしまったのです
夜になってお姫様は蛙さんと自分との間にぬぐいようのない距離を感じたのでした
それは二人の間にある現実の距離以上の歴然と横たわっている現実でした
お姫様は悲しくなりました
その夜ははやく眠ることにしました
次の日の朝 蛙さんはいつものように来てくれました
だけどお姫様は素直になれませんでした
蛙さんが悪いんじゃないことは百も承知のはずなのに…
あやまる蛙さんに冷たく返事をした自分が嫌でたまりませんでした
お姫様には冷たい雨がずっと降り続いていました
お姫さまの気持ちを知ったお城はしくしく泣いていました。
そこへ風がやってきて声をかけました。
どうしたんだい? お城さん?
お城は風にお姫さまの悲しみを伝えました。
なんだ そんな事でメソメソしていたのかい。
わかった。おいらに任せとけ。
そう言うと風はザッと森めがけて飛んで行きました。
風は森を勢いよく吹き抜けました。
あまり強く吹いたので森の住人たちは嵐と勘違いしたほどです。
雨雲も驚いてどこかへ行ってしまいました。
お姫さまが大変だ!
お姫さまが大変だあ!
茂みで昼寝をしていたヘビも飛び起きて
風のメッセージを受け取りました。
ヘビが茂みから顔を出すと
蛙は朝見たときと同じ場所でお腹を出してひっくり返っていました。
見るとぐったりしてピクリとも動きません。
ありゃりゃ!遅かったか。
死んでるのかな?
ヘビが近づくと蛙は薄目をあけてこう言いました。
ああ ヘビさん。
もう何にもやる気がしない。
どうかこの私を食べてしまってください。
やれやれ。
おい蛙。
ヘビは風のメッセージを蛙に伝えました。
それまで青白ろかった蛙の顔にみるみる赤みが差しました。
なんだって!?
お姫さまが悲しんでるのかい?
蛙は岩の上で元気を取り戻しました。
ゲコッ!!
ゲコッ!じゃねえ!
早くお姫さまのところへ行ってやんな。
でもどうやって?
めんどくさいやつだなあ。
ちょっと待ってろ。
ヘビはそう言って長い体を茂みから全部だすと
ヘビダンスを踊りました。
い、いったいなにを?
うるさい。黙っていろ。
すると空が一瞬真っ暗になって
鷹がやってきました。
待てッ!
待て!待て!
待てるわけないだろう。
鷹が舞い降りてヘビをつかみました。
ひゃあ~~!
蛙! ぼさっと見てないで説明しろ!
蛙が話し終えると鷹はヘビを自由にしてやりました。
そして翼を広げて蛙をその背中に乗せました。
やい ヘビ。
今回は特別に見逃してやる。
鷹はそう言うとお城へ向かってひとっ飛び。
蛙は猛スピードで飛ぶ鷹にへばりつくのがやっとです。
おい 蛙。
は、はい。
今度 お姫さまを悲しませてみろ。
おまえがどこに隠れようが、あのヘビともども見つけて食ってやる。
は、はい。
もう二度とお姫さまを悲しませたりしません!
ありがとう!
フン!
鷹はスピードをあげました。
お姫さまの住むお城はもうすぐです。