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蛙の王子
蛙の王子はいいました。
どうかぼくを愛してください。そうすれば、ぼくは人間にもどれます。
お姫さまはいいました。
わかりました。あなたに愛を与えましょう。
そのかわりあなたが人間になったら、わたしと一晩一緒に過ごしてください。
ヘンなことはしてはだめよ。わたしは今までぐっすり寝たことがないの。だから一度でいいからあなたに抱きしめられてゆっくり朝まで眠ってみたい。
蛙の王子はいいました。
お安い御用です。お姫さま。 一晩あなたと一緒に寝ます。
心配はご無用。あなたに指一本ふれません。
お姫さまは尋ねました。
どうして人間になんか戻りたいの?人間は嘘や偽りばかりなのに。
蛙の王子は答えました。
蛙なんてまっぴらです。たとえ嘘や偽りに満ちていても、人間には夢と希望があります。蛙の世界には嘘も偽りもないけれど、夢や希望もありません。
だから
ぼくは人間にもどって死にたいのです。
だってぼくは人間が大好きだから。