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運動場にて

大輔と別れて音楽室を出ると,麻里は校舎からも出て,運動場を目指した.

運動場では,サッカー部が練習している.

寒空の下,彼らだけが汗をかき,ボールを追いかけていた.

周囲には幾人かの女子生徒たちが群がって,部員たちの応援をしている.

主に,エースである太陽の.

麻里も彼女たちに加わって,彼の雄姿を眺めた.

太陽もほかの部員たちと同じように,駆け回っている.

顔は童顔なのだが,サッカーをしている姿はかっこいい.

しばらくすると疲れたのか,一人だけ外れて脇に移動した.

女子マネージャーから飲みものを受け取って,彼女と楽しそうにおしゃべりする.

二人の暖かな白い息が重なったように見えて,親密さが感じられた.

「あの,いいのは顔だけだよね.」

「太陽君,女を見る目ないし.」

麻里のそばにいる二人の女子がささやき合う.

麻里は,太陽と笑いあっている女子マネージャーの顔を見た.

確かに,顔はかわいい.

誰にでも愛想のいい太陽と,うれしそうに話している.

「私もサッカー部のマネージャーになればよかった.」

「ばっか,あんたには無理だって.」

ミーハー丸出しの女子生徒たちの輪から,麻里は抜け出した.

そんな不純な動機でマネージャーになられたら,太陽もほかの部員たちも迷惑だ.

校門へ向かって歩いていると,スカートのポケットに入れた携帯電話がぶるぶると震え出す.

取り出して画面を見ると,驚くことに雄一からメールが届いている.

彼とはアドレスの交換はしたが,メールのやり取りはしたことがなかったのだ.

大切な話があるから,明日の放課後,一人で生徒会室に来てほしい.

メールの内容は簡潔だった.

きっと明日,雄一から告白されるのだろう.

呼び出されて,付き合ってほしいと頼まれるシチュエーションに,昔はあこがれた.

けれど今は,心が弾まない.

雄一が地味だから.

人気者である孝成や大輔や太陽ではないから.

雄一なんかと恋人になっても,誰にも自慢できない.

彼からの申し出は断ろう.

麻里は携帯電話をポケットにしまって,学校から出て行った.

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