思いがけない遭遇
『とある日の赤騎士団長と従騎士の会話』後日談
「?! な、なぁぁぁぁぁぁ?!!」
その姿を見て黒騎士団歩兵部隊長であるギルヴィ・ヴァン=ツェルフはその人物を指差してそう絶句した。
全身赤の衣服を纏い、赤獅子の異名をとる巨躯の人物が、今彼の目の前にドーンと腕を組んで仁王立ちしている。
「な、な、なんで! なんで、親父がこんな所に居るんだよぉぉぉ!!」
冷や汗をだらだら垂らしながら、ギルヴィは無意識に後ずさる。
「ん? 誰かと思ったら、我が愚息その三。 なんだ、俺の騎士団に居ないと思ったらこんな所におったのか?」
何がおかしいのか、カッカと笑いながら赤騎士団団長は豪快に笑った。
「……、面会の準備が整いましたのでご案内します」
ギルヴィは、そんな赤騎士団団長を無視するように、めいいっぱい余所行きの声・話し方でそう告げると開いた扉から一歩さがり客室を出て場所を移動するように促した。
(アーヴェンツ団長、絶ってぇ分かってて俺を指名したんだな、ちくしょうぉ!!)
内心、敬愛しているが時々意地の悪い黒騎士団団長に悪態をつきながら目的の場所へ客を先導して案内し始めた。
「ふむ、黒という印象が強いから内装はもっと暗く陰鬱な感じを想像したのだが」
歩きながらそう、本人は小声で呟いたつもりだろうがその実丸聞こえな声で赤騎士団団長は城砦内を見回しながらそう言った。
「だ、団長! それは、失礼です!」
小声で一生懸命、諫めているのは見覚えのある従騎士。
ギルヴィは、溜息をつきつつ、
「親父、それ、アーヴェンツ団長の目の前で絶ってぇ口にするなよ?」
一言、忠告する。
「……、なぜだ??」
訳がわからんと言うばかりに、聞き返した。
「城砦内の内装の事で、悪口言ったら最後、この砦から五体満足で出られると思わない方がいい」
冗談抜きの真剣な顔で、そう告げるギルヴィ。
息子の本気を悟ってか赤騎士団団長は神妙に「わかった」とそう一言告げた。
話が付いた所で、目的地に到着する。
ギルヴィが、扉を叩くと中から入室を許可する答えがあった。
「歩兵部隊長ギルヴィ・ヴァン=ツェルフ、ご命令通り、赤騎士団団長ギジュリダウス・ヴァン=フュルスト・ツェルフトス殿とその第一従騎士殿をお連れいたしました」
名乗った息子の今の地位に赤騎士団団長であるギジュリダウスは、ほんの少し驚いた顔をしつつ、内側に開かれた扉を潜り室内へギジュリダウスと従騎士は足を踏み入れた。
この後の出来事は、また別のお話。
ただ、この後にどんなやり取りがあったのかは同席しなかったギルヴィには知る術は無かった。
更新日付がおかしくなっています(滝汗
実際3月30日に投稿したのはこちらです