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Sky Runners  作者: SKY
23/32

夜空の攻防


カウントダウンの合図とともに、十数機のSKYCARが一斉に舞い上がった。

夜空に色とりどりのライトが散り、まるで都市全体が星座となって動き出したかのようだった。


「わぁ!」

観客席から感嘆の声が漏れる。


まさに光の祭典。


夜空に舞う機体たちは、一つ一つが流れ星のように美しい軌跡を描いていた。


Rusty Hawkのライトは控えめだ。

最新機体のように派手に発光はしない。

だが、その温かみのある光は、ひとつの星のように誠実に瞬いていた。


「まさに光の祭典です!」

実況の声が弾む。


観客席では子どもたちが目を輝かせ、大人たちも夜空のスペクタクルに魅了されていた。


その中でひときわ目立ったのは、虹色に発光するNeon Edgeだった。

機体全体がイルミネーションのように輝き、旋回するたびに光の尾を描き出す。


「すげぇ、まるで光そのものを操ってるみたいだ」

迅がモニター越しに唸る。技術者の目から見ても、Neon Edgeの発光システムは見事だった。


結衣は唇を噛む。

「Rusty Hawkが埋もれちゃう」

観客席は総立ちとなり、SNSには「#NeonEdgeすげー!」の文字が瞬時に流れた。


カメラのフラッシュが無数に光り、まるでコンサート会場のような熱狂ぶりだった。

ステージは完全にNeon Edgeのものとなっていた。

カイトはコックピットの中で集中を保ちながらも、観客の声援を感じ取っている。


彼にとってレースは芸術であり、パフォーマンスでもあった。

観客を楽しませること。

それが彼の誇りだった。


「今夜は僕が主役だ。でも」

カイトの視線がRusty Hawkを捉える。


「あの鷹がどんな舞いを見せるか、楽しみでもある」


レースは中盤に突入する。

ビル群を縫うコースで、各機体はネオンの海を駆け抜けていく。

Neon Edgeは先頭を独走し、観客は「主役は彼だ」と確信しているかのようだった。

派手な発光パターンで観客を魅了し、ショーアップされた飛行技術を存分に披露する。


「見て見て、光の軌跡が美しい!」

観客の興奮は止まらない。


一方のRusty Hawkは中位をキープするも、地味な存在感に留まっていた。

最新機体の華やかさと比べて、どうしても見劣りしてしまう。


「やっぱり派手さがないとダメなのか」

迅の声に苦みが混じる。整備士として、自分の技術に限界を感じる瞬間だった。

どんなに調整を重ねても、古いRusty Hawkでは最新機体の派手さには敵わない。

実況も次第にNeon Edgeにばかり注目する。


「今夜はNeon Edgeの独壇場でしょうか!カイト選手の光のマジック、見事です!」


観客の目も光のパフォーマンスに奪われ、Rusty Hawkの姿はほとんど見られていなかった。

会場の熱狂は完全にNeon Edge一色に染まっている。


「遼、頑張って」

結衣は祈るように胸の前で手を組む。

手作りのペンライトを握る手が、わずかに震えていた。


だが当の遼は、ヘルメットの中で笑っていた。


「きれいだなぁ」

光の渦の中を駆けること自体を、心から楽しんでいた。

順位や勝敗よりも、この夜空を駆ける喜びが何より大切だった。


「あのネオンの光、すごくきれいだ。カイトさん、本当に上手だなあ」

遼の純粋な感想は、無線には乗らない。

彼はライバルの技術を素直に讃えながら、自分らしい飛び方を模索していた。


カイト自身も、Rusty Hawkの存在を気にかけていた。

派手さでは圧倒的に勝っているが、あの古い機体から感じられる何か特別なものがある。


「あの子は何を考えているんだろう」

観客の視線は自分に集中している。

だが、カイトの心の一部は、静かに夜空を舞うRusty Hawkに向けられていた。


終盤に差しかかり、Neon Edgeはさらに加速した。

発光パターンもクライマックスに向けて華やかさを増し、観客の興奮は最高潮に達する。

Rusty Hawkとの距離は大きく開き、他の機体にも抜かれ始める。

順位は下位に沈み、観客席からも諦めの声が漏れた。


「今回は無理かな」


「Rusty Hawk、さすがに限界か」


「やっぱり古い機体じゃ、こういうレースは厳しいよな」

迅は歯を食いしばる。技術者として、自分の無力さを痛感していた。


「くそっ、もっと何かできることがあったはずなのに」


結衣も涙をこらえながら必死に応援を続ける。

「遼!まだ諦めないで!」


だが遼の表情には一片の迷いもなかった。

「まだ終わらない!」

彼の目は輝き続けていた。


光の迷路の中で、誰よりも楽しそうに操縦桿を握っている。


その姿を見て、迅は頭を抱えながらも小さく笑った。

「ほんと、無謀なやつだ。でも、そこが強さなんだよな」


結衣は涙をこらえながら声を振り絞った。

「遼!信じてるから!」


観客の中にも少しずつ声援が戻り始める。


「まだ分からない!Rusty Hawkなら!」


「最後まで頑張れ!」


夜空はまだ、彼らを見放してはいなかった。

光の海の中で、小さな希望の星が瞬き続けている。



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