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収穫祭 ③

「それでは、今回の収穫祭の優勝組は・・・」


収穫祭も終わり、各組の集計も終わった。


「リリーとシェリスのペアです!皆さん二人に盛大に拍手を!」


わぁー!っと拍手の音が鳴り響く。


「やったぜー!」

「・・・っ!」


リリーは分かりやすく跳ねながら、シェリスは声に出ないのだろうか?それでも嬉しそうに笑っている。

拍手が収まっていく。


「今日は皆、本当にお疲れ様でした。優勝した二人には後で賞品があるから待っててね」

「では、今日健闘した二人以外にも、もう一度盛大な拍手をお願いします」


クロアの言葉にまた喝采の音が鳴る。


「よくやったぞー!」

「来年またやってね!」


子供達に大人達から激励の言葉が投げられる。

照れくさそうに笑っている子供達、この光景はいい物だと思う。


「皆さん、本日はお集まり頂きありがとうございました。次は寒季に入る前にありますので、その時もまたよろしくお願いします」


クロアの閉会の挨拶が終わり、収穫物の後始末を始める。


「坊ちゃんの予想通り、第二倉庫ギリギリでしたよ。今年は豊作で嬉しい限りですねぇ」


ヴォルフォ達がこちらに挨拶に来た。


「ヴォルフォ達もお疲れ様。グラハも良かったね」


「ありがとうございますクロア様。娘は大分楽しみにしていたようなので、嬉しい限りです」


「かぁー!うちは俺の息子なのに本ばっかり好きになっちまったからなぁ・・・」


「それ自体は別にいい事でしょ。てかディンを見てるから本を読むようになったんじゃないの?」


「おいおい、そりゃどういう事だよ」


いつものメンバーに笑うが起こる。そこへ。


「クロア、今年の賞品は去年と同じで良いのか?」


父上もこちらにやってきた。


「そうですね、相談していた税の免除はしてあげて欲しいですね」


「あの収穫量を見ればどれほど頑張ったのか分かる。それぐらいは叶えてやるとも」


「おっ、流石隊長。太っ腹ですね」


「一家庭ぐらいどうにかできなければ領主など務まらんさ」


「まぁ今年は予想外の出費もありましたけど、逆もまたありましたからね」


新年の薬騒動や、クマを飼い始めた事による出費など色々。正直去年の盗賊騒動からずっと出費続きだった。

トルト叔母さんが居なかったら本気で危なかったかもしれない程に。


「これに関してはカランクレス公爵に感謝だな」


「アルティ様にもですね」


恐らくアルティ様が少し色を付けてくれたのか、いつも以上に戦闘での報酬が多かったのだ。

単純にイストフィース家を囲いたいだけかも知れないが、少なくとも多く貰えるものなら貰っておいて損はない。


「それじゃぁ俺は色々準備をしようかな。グラハも楽しみにしておいて良いよ」


「おっ、坊ちゃんが腕を振るうので?」


「今日は子供が頑張る日だからね。俺も頑張らないとね」


クロアが家に戻って行く。


「何言ってんだか。今日に限って一番働いているのは坊ちゃんでしょうに」


「ははっ、クロア様は流石ですね」


「しっかしいいなぁ・・・グラハ、ちょっと分けてくれよ」


「駄目です、あの子も楽しみにしているんですから」


「そうだぞ。それにお前たちにはまだやってもらう事が在るからな。ついてこい」


ヴォルフォ達もウィンに連れられて力仕事に戻って行く。





-----∇∇∇-----





「では、今日は収穫祭の優勝者でもある彼らと食事としようか」


「よ、よろしくお願いします!」

「ははっ、久々のクロアの家だー!」


優勝したリリーの家族とシェリスの家族も含めてイストフィース家で食事会。


「金一封などを渡せなくてすまんな、賞品は後で持ち帰ってくれ」


「いえいえ!イストフィース様、こんなにも貰ってしまっていいのかと・・・」


「ふふっ、良いのよ。用意したのはクロアだけど、ちゃんと私達も許可を出しましたから」


「そ、それでしたら、ありがとうございます」


「ちょっと!パパは聞きすぎて逆に失礼だよ!」


「そ、そうは言われても・・・まさかお前が勝つとも思ってなかったし・・・」


「自分の娘を信じて無かったなんて、薄情なお父さんだねぇシェリス」


「いやいや!そういう事じゃなくてだな」


「大丈夫ですよ、ウィン様はその程度で失礼などと思いません。ですよね?」


グラハがウィンに問いかける。


「当たり前だ、私も貴族として振舞うのは苦手だからな」


「リリル様、いつも主人がお世話になっています」


「いえ、寧ろいつも助けられているわ。リリーちゃんもクロアと仲良くて嬉しいわ」


奥様同士の会話が始まると男はそこにはもう入れない。


「・・・なんだか少しだけ肩身が狭いな」


「ウィン様もでしたか、こればかりは私も同意見です」


「何してるんですか、そろそろ運びますよ」


そこへクロアがやってくる。


「おっ!クロア!」


「こんばんわ、リリー。シェリスも」


軽く手を振っていると、後ろからエリア姉様達もやってきた。


「あら、リリー。今日は負けたわ、次は私が勝つわ」


「エリア様、今度も負けませんよ!」


「ごめんなさい、お兄様・・・」


オルカが泣きそうな顔をしている。オルカは姉様と組んで出場したのだが結果は上から四番目であった。

姉様もそうだけどオルカ達と領民の子供達では収穫の慣れが違いすぎる。それでも四番目なのは中々すごい事だけど。


「なんで謝るんだ?何も悪い事してないだろう、次頑張ればいいさ。ほら、座って待ってて」


スーに手を引っ張られながらオルカは席に着く。


「それでは今日の収穫祭を無事に終わらせられたことに、そしてそれに一番頑張ってくれた二人に腕によりをかけて料理をするから、もう少しだけ待ってて」


クロアが部屋から出ていくと皆席に座る。


「こうしてクロア様のお料理を頂くのは久々ですね」


「そういえばそうか、ヴォルフォはたまに来たりするが、グラハは無かったな」


「私にも家庭がありますので」


そう話すグラハは二人の方を見ながら、優しい目をしていた。


「母ちゃんの料理もおいしいけど、やっぱクロアの料理があたしの中では一番なんだよなー」


「あら、なら今度クロア様にお料理を教えてもらわないとね」


「あ、それ私も教わりたいです!」


シェリスの家族、リリーの家族と三家族もいると、いつもより食堂が騒がしかった。



「お待たせいたしました。配膳致します」


料理人であるラックモックとサキユが料理を運んでくる。


「クロアはどうしたの?」


「クロア様はまだ料理を続けております、皆様にはコース料理で楽しんでいただくそうですよ」


「あの子は・・・本当に色んなことを知っているな。どこから得てくるのだか・・・」


「クロア様に代わりしっかりとお料理を説明させて頂きます」

「まずこちらは前菜のコーンのポタージュと今日収穫した野菜のサラダです、お楽しみください」


「では、頂くとしよう」


「「「いただきまーす」」」


全員で食べ始める、すると。


「美味しい・・・!」


「もう、こんなに料理まで出来ると私の立つ瀬が無いわ」


「母様そもそも料理あんまりしないじゃない」


「エリア?」


「何でもないでーす」


ワイワイと食べていく。


「続きまして、インチェンス領から取り寄せた魚を使いバターソースと野菜で彩った魚料理です」


「これはまた・・・」


「魚など久々だな」


「名前は聞いたことがありますが、確か港町などではよく食べられるんですよね?」


シェリスの家族はこの領から出た事は無いため、魚などを目にする機会が無く、これが料理なのかすら分からなかった。


「あたしも初めて見た!すげー!」


「しかし、いつの間に取り寄せたのだ・・・」


「ボクがお手紙を運びました!」


サキユが配膳ついでに手を挙げる。


「いつの間にかそこまでの仲だったのか・・・」


黙々と食事が進んでいく。


「そしてメインデッシュです、ワタクシ達の領で取れた鹿を使い、クロア様の凄まじい解体技術から取れたお肉です」

「こちらが、鹿肉のロースト、さらに取り寄せた卵を合わせながらお食べ下さい」


「あの子ったら、そんなに色々買っていたのね・・・」


「クロアに経理を任せるのが少し怖くなってきたな・・・」


そんな事をクロアの両親は思うが、目の前の料理に他の皆は驚いている。


「綺麗」


「やっぱりお兄様のお料理が一番好き!スーも思うでしょ?」

「うん!」


「ウィン様達はこんな物を毎日食べているので・・・?」


「勘違いしないでくれ、これに関しては私も初めてだ」


全員の食事が進み続ける。気づけば、皿の上に在った物がすべてなくなるのに気付くのが遅れる程に。


「すごい料理ばかりで、なんだか味が分からなかった・・・」


「美味しかったー、クロアが毎日作ればいいのに」


「エ、エリア様・・・」


「嘘よ、そんな目で見ないでよ。ラックモックの料理もいつも美味しいわ」


ホッとするラックモック。


「喜んでもらえたなら何よりですよ」


クロアが部屋にやってくる。


「兄様も一緒に食べれますか?」


スーが聞いてくる。


「うん、これから出す物は俺も一緒に食べるよ。カランクレス公爵からの頂き物だからね」


「ん?そんな物あったか?」


「ええ、アルティ様がお勧めしてくれまして。サキユに頼んで運んでもらいました」


「またお前は・・・」


「まぁまぁ、こちらのインチェンス侯爵からの紅茶と楽しみましょうよ」


「まぁいい、それでこれは?」


「フェルナンと呼ばれているお菓子だそうですよ。何か成功などの意味が込められているお菓子だとか」


目の前に出てきた四角い長方形のお菓子。食後のデザートとして紅茶と一緒に食べる。


「これは、美味しいですね。流石アルティ様だ」


「ねぇクロア、これもっと取り寄せられないのかしら・・・?」


「母上、それは無理です。中々値段するんですよ。今回はご厚意でもらえただけです」


「私もこれ好きだわ、クロアが作ればいいじゃない」


「そう言うと思ったのでこうして俺も食べて味を覚えようとしてるんですよ」


「お兄様それは本当なの!?」


オルカが飛び込んできた、やはりお菓子などの話題は女の子に大人気らしい。


「そ、そうだよ。まぁ出来るかは分からないけど、色々作るのは好きだからね」


「楽しみにしてます!お兄様!」


最後はお菓子の話題で、夜が更けていく。




「今日はありがとうございました、こちらも頂いて帰ります」


「ああ、いつもありがとう。これからも頼む」


ウィンとシェリスの父親が挨拶をしていると。


「ク、クロア様!」


「どうしたの、シェリス」


「今日はいっぱいありがとうございました、その・・・」


「何かな?」


「もし良かったら、私にもお菓子などのお料理を教えてくれませんか!?」


やはりお菓子とは女性や子供を狂わせる力があるらしい。謎の固有魔法にでも掛けられたようだ。


「なら、もしその時が有ったら誘うよ」


「は、はい!」


「では、我々はこれで」


「また頼むぞ、グラハ」


「じゃなー、クロア!」


「またね、二人共」


二つの家族が遠ざかる。


「クロアよ、今日の料理だけでどれだけ使ったのだ」


「心配性ですね父上。あれは本当にご厚意ですよ。強いて言うならインチェンス侯爵からの紅茶ぐらいですかね」


「・・・そこが一番高いだろう」


「さて、何の事だか」


父と息子は家に戻って行く。

日常の暖かさを、肌に感じながら。

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