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収穫祭 ②

「クロア様ー」


「どうだったかな、サキユ」


「皆準備万端です!」


「よし、なら始めようか」


クロアが笛を持って畑と参加している人達全員を見渡す。


「それでは、収穫祭を始めていきたいと思います!」


領民達が騒ぐ。


「天気も絶好の収穫日和、長い挨拶も皆興味無いだろうから、さっそく始めるよ!」


「よし・・・!」

「負けないぞー」

「今年はあたしが勝つ!」


「「皆頑張ってー!!」」


子供達が主役の収穫祭。

今年は魔力土のおかげもあり、いつも以上に豊作だった。

葉野菜や豆など収穫できる物は多い。去年に比べ人数も増えたのでいつも以上に賑わっている。


「ルールの説明は昨日行った通り、どのグループが一番になるか・・・早速始める!」


クロアの声が聞こえると、子供達が構える。


「よーい・・・始め!!」


ピッ!っと笛の音が響き渡ると一斉に動き出す。

収穫祭のルールは簡単。

決められた時間の中で、子供達はより多く収穫する事。ただしあくまでも収穫するためなので、無理やり取ったり収穫する物を乱暴に扱うのはご法度。

そして収穫した物を数えるための大人たちが居るのでそこに置いて行く。

新しいかごを持ち、また収穫に戻ると言った感じ。

今年はチーム制にしてみた。二人一組、参加する子達が丁度十六人だったので数えやすいようにチームにした。


「それじゃあサキユ、上から安全確認お願い」


「はい!行ってきます!」


サキユが飛んでいく、頼もしい限りだ。


「クロア君、一つ質問いいかしら?」


「どうしたんですか?ユリズさん」


「今日は収穫祭なのよね」


「その通りです」


「何で私はここに居るのかしら?確かに見学したいとは思ってましたから嬉しいのだけど、こんな専用の場所まで作って・・・」


現在ユリズさんが居るのは仮設治療所。

治療所とは名ばかりのただの屋根と人が横に慣れる台が二つがあるだけの屋台みたいな形。


「一応です。やはりこういう祭りにはどうしても怪我人などが出てきてしまう事も多いので・・・この前に続き申し訳ございません」


クロアが頭を下げる。


「ううん、そういう事なら納得だわ。確かに食べ物を収穫するだけと言っても転んだりしたら危ないものね」


「それも有るんですが・・・どちらかと言えば」


そう言いかけたクロアの所にサキユがやってくる。


「クロア様ー。エリア様が喧嘩しそうになってる」


「・・・血の気が多い子が多いと言うのが正解ですね」


ユリズがあらあらと言う顔をしながらクロアを見送る。


「全員にもう一度言うよ!参加者同士の喧嘩や妨害は禁止だよ!それをやったら失格、聞こえたよね!?」


クロアの言葉に大人たちが笑う。


「特にエリア姉様とリリーだよ!」


なによー!と聞こえてくる声を無視して見学席に戻る。


「サキユ、何かあったらまた教えて」


「はい!また行ってきます!」


サキユが飛んでいくと、クロアに近づく人が居た。


「今年も大変そうですね、坊ちゃん」


「昼間から酒を片手に近づいてこないでくれ、ヴォルフォ」


「いいじゃないですか、今日みたいな日ぐらいは」


ヴォルフォも、今日を無事に迎えられて嬉しいらしい。

と言うよりも俺や父上が無事に帰ってこれたことに喜んでくれているみたいだった。

母上程では無かったけど、ヴォルフォやディン達も泣きそうになっていたから、思わずからかってしまった程に。


「クロア、ここに居たのか」


「父上、どうされたんですか?」


「収穫された物を入れる倉庫なのだが、思ったりも皆の勢いが凄まじくてな。少し見積もったが入り切るか怪しい、他に空いている倉庫はあるか?」


「それでしたら、第二候補の方も使ってください。空けておいたのでそちらも使えます」


「流石だ、ではそうするとしよう。ヴォルフォ、お前も手伝え」


「え、隊長。今日は俺はオフなんですけど・・・って引っ張らないで下さいって!」


ずりずりと引っ張られていくヴォルフォ。

今回の収穫祭はほとんど俺が実行しているので父上には身体を使って手伝ってもらっている。


「頑張れー!リアン!」

「リアーン!こっち向いてー!」


席に戻ってくると黄色い歓声が聞こえる。


「あら、人気な子が居るのね。リアン君?だったかしら。一度だけ見かけたことがあるわ」


「リアンは領内では人気ですよ。身長も高くて顔もかっこいいですから」


「へぇ・・・クロア君もやっぱりそう言うのは気になるの?」


何だか含みがある感じに聞いてくる。


「うーん・・・あまり気にならないですね。寧ろリアンがちょっと心配なぐらい」


「何で心配なの?女の子から人気があるなんて素晴らしいじゃない」


ユリズさんが不思議そうにしている。


「何て言うか・・・その人気を前向きに受け取れたりするなら良いんですが、逆にプレッシャーにもなる事があるでしょう。特にリアンは表向きは顔が良いし優しさもあるから良いのですが・・・期待されると弱いと言いますか・・・」


そんな事を言いかけていると。


「おーい!リアン平気か!?バテるには早いぞ!」

「あ、あぁ。まだやれるよ」


収穫物を届けに来たリアン達が見えた。


「あんな感じで、ちょっと危なげがあると言いますか」


「何となくクロア君の言いたい事が分かったわ、確かに見てて心配になるわね」


「おーいクロア!見えてるか!?あたし達はまだまだ取ってくるぞー!」


リリーがこちらに手を振っている。

取り合えず振り返しておく。


「頑張れー」


「へへっ!」


またかごを持って戻っていくリリー。


「・・・やっぱりクロア君も隅に置けないのね」


「と言うよりも、この領では普通ですよ。僕達子供がそこまで多く無いですからね」


そう言うと、ユリズさんがちょっと申し訳なさそうな顔をしてしまっていた。


「あぁ、勘違いしないで下さい。別に何か含みがあったわけでは無いですよ。単純に少ないなからなーって思っただけです」


「ふふっ、なら良かった」

「それにしても、こういう行事みたいな事をクロア君がやってるのが驚きだわ」


「そうでしたか?」


「ええ、何だか最初見た時は物静かなイメージだったもの、それに試験の時はなんだか怒ってた気がしたから」


「あれは計画性も無しにユリズさんを頼った事に怒っていたんです」


ユリズさんが笑う。


「僕はこういう事は嫌いじゃないですよ。どちらかと言えば好きかも知れません」

「それに、暗い事が最近多かったですから。たまにはこうやって息抜きでもしないと、皆大変ですからね」


「優しい領主さんなのね」


「僕はまだ領主では無いです、領主は父上ですから」


「ふふっ、そうだったわね。せっかくだし私も前に行って応援でもしちゃおうかな!」


ユリズさん前に歩いて行く。

そういえば試験の時もそうだったけど、割とあっさり引き受けてくれたけど、あの人もこういう催しが好きなのだろうか。

好きなくとも嫌いでは無さそう。ありがたい。

さてさて、今年はどこが勝つかな。




晴れやかな空の下、喧騒が鳴り止まないイストフィース領。

良くない事が多くこの領を襲ったけど、今はただ、全員で祭りを楽しむ。

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