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国境戦 ⑱

すべての戦闘が終わり、今回の戦勝祝いとしてカランクレス家主催のパーティーが開かれている。


「今回の戦い、実に見事であった。この戦いに参加してくれた者達すべてに感謝をする。我々の勝利に乾杯」


全員がグラスを掲げる、広いホールにてドーバル閣下が挨拶をする。

堅苦しいのが嫌いなのか、言葉は少なくそのまま各々が好きな様に動く。

今回の主役であるアルティ様はすでに取り囲まれている。あれは大変そうだ・・・


「お前達、本当によくやったぞ」


エリア姉様と料理を食べていると父上が戻ってくる。


「挨拶は終わったので?」


「ああ、一通りな。お前達を紹介してくれとも言われた」


「やはり付いて行った方が良かったですか」


「いや、あれだけの戦場から帰って来たのだ。お前達はゆっくりするべきだ」


戦場から帰った時、俺も姉様も父上に抱きかかえられた。

俺も姉様も、言葉にしてなかったけど父上が無事だったことは嬉しかった。


「お気遣いいただきありがとうございます。料理を取っておいたので父上もどうぞ」


「いただくとしよう」


「クロア、こっちも美味しいわよ」


「姉様、今日はまだ人目がありますよ」


「少しぐらいいいじゃない。それにそういう面倒事は父様やクロアに任せるわ」


「まぁ、いいですけどね・・・」


三人で食事をしていると、見知った顔がこちらに来ているのが見えた。


「クロア殿」


「ザゼンさん、改めて戦勝おめでとうございます」


「その言葉は姫様やドーバル様にお伝えください」

「それに、儂の戦場で一番活躍したのは間違いなくクロア殿だと思いますよ」


「僕よりもアルティ様の方が凄まじいでしょう。初めての戦場で初めての指揮官。初めてだらけなのにさらには攻撃も成功させた。とんでもない方です」


「確かに、上辺だけを見ればそうかも知れぬ。だがあの戦場に立っていた者ならそれら全てが事実ではない事も知っている」


「良いのですか、こんなとこでそんな話」


「心配せずとも周りには注意しておるよ」


よく見ればイストフィース家の周りはカランクレス家の者達で少し囲われていた。


「流石ですね、抜かりない」


「これでも副長ですからな。団長も会ってみたいとおっしゃっていたのだが・・・中々多忙な人でな」


「それを言うならばザゼンさんもお忙しいのでは?」


「儂はドーバル様から直々に休むことを命じられてな、この祝いの席だけは酒を飲んで過ごしておるよ」

「・・・クロア殿、一つ頼み事をしたいのだか良いだろうか」


「内容によりますが、何でしょうか?」


そう言って、何時ぞやの時の様に手紙を渡された。


「姫様からです、エリア嬢と一緒にお読みくだされ」


「・・・何となくわかりました」


そう言うと、ザゼンさんは笑いながらどこかにまた挨拶に戻って行った。


「どうしたの?」


姉様が近づく俺に声を掛ける。


「姉様、アルティ様から伝言です。何となく想像が付きますけど」


手紙を開き、姉様と一緒に読む。


「・・・受けて立つわ!」


「姉様声が大きいです」


手紙の内容を簡潔に説明すれば、鍛錬の申し込みだ。

しかもこの祝いの席を抜け出して欲しいとまで書いてある。


「そもそもアルティ様は抜け出せるのか・・・?」


そう思ってカランクレス家の方向を見てみると、夫妻はいるようだが護衛のフェーネ様やアルティ様達が居なかった。

そして気づけばザゼンさんがドーバル閣下の護衛として後ろに仕えている。


「・・・何が休みだ」


「何か言った?」


「いえ、何でもないです」


「取り合えず父上に言ってこの場を」


「駄目よ。父様に言ったら止められるわ、だからアルティ様も抜け出してって言ってるんでしょう」


確かに。ドーバル閣下がこの状況で認めたかの判断はできない。

つまりこれはアルティ様達の独断の可能性もある。


「どうしてもですか?」


「どうしてもよ」


これは、母上だけじゃなくて父上からも怒られそうだ。

でも。


「分かりました、取り合えず姉様は抜け出してください。俺も父上に何か一言は言って抜け出します。何も言わずに消えたらそれこそ怪しまれますから」


「そうね、じゃあ頼んだわ!」


姉様がすぐに会場を出ていく。できればコッソリ抜け出してほしかった。

余り嘘は付きたくないが仕方ない。


「父上、少しお手洗いに行ってきます。それと姉様もドリンクを飲み過ぎたようなので付き添ってきます」


「ん?そうか、私はもう少々食べていこう。中々お目にかかれないからな」


俺ももう少し食べたい。普段食べられない料理が目の前に並んでいるのだ。

全て味を確かめて自分で色々作れるか研究したい。

だが今の俺には許されないらしい。


「では失礼します」


「我が家と違ってかなり広いから、迷うんじゃないぞ」


そう言ってそそくさと会場を後にする。

少し離れた所に姉様が居た、何故だ。


「どうしたんですか姉様、先に向かったのでは?」


「・・・そんなすぐに場所が覚えられないわ」


手紙を姉様に預ければ良かったと思った。





-----∇∇∇-----





「ここですね、地下修練場とは羨ましいですね」


「そうね!」


隣の姉様はどんどんテンションが上がってきている。今にでも走り出しそう。


「来たな!」


聞き覚えのある声がした。

修練場の真ん中でフェーネ様が立っていた。


「お二人共!」


アルティ様がこちらに走ってくる。


「改めて、戦勝おめでとうございます」


「ありがとうございます。お二人の力があってこそでしたから、私からも感謝を」


「お前はほんとに堅苦しいな、クロア」


「そうよ、私達しか居ないんだからいいじゃない」


ここに帰るまでの間にエリア姉様は更にお二人と仲良くなったらしく、今では敬語も使わない。流石に人目が有れば変えているっぽいが。


「それに、改めて紹介したかったのです。メルティ、挨拶して」


そう、ここにはもう一人居たのだ。

最初の挨拶の時にほんの少しだけ言葉を交わしたアルティ様の妹君。


「こ、こんにちは。私は見学、する、だけなので、あまりお気になさらず・・・」


最初の一瞬目が合った気がしたが、どんどん顔が下に下がっていき、もはや頭頂部しか見えない。


「もう、メルティ。お二人は怖い方では無いわ。そんなに怯えないで」


「分かって、います。でも、その、ごめんなさい・・・」


「お二人共、ごめんなさい。メルティを一人にするわけにもいかないので、ここ居させても良いですか?」


「無論です、姉妹仲が良いのですね」


「ええ、だって家族ですもの」


その言葉だけで、俺は嬉しかった。家族を大切にする貴族も居るのだと、改めて知れたことが嬉しかったのだ。


「ではお嬢様、こちらにどうぞ」


「ありがとう、フェーネ。いつも、ごめんね?」


「アタシはアルティ様とメルティ様の為に生きてるんで大丈夫です」


そう言いながらメルティ様を連れて離れていく。


「ところで・・・模擬戦とは何をする気で?」


「よくぞ聞いてくれました!」


アルティ様がニッコニコしている。


「私も早く聞きたかったわ!」


姉様もキラキラしていらっしゃる。

この二人似てたんだな・・・


「私達、以前イストフィース殿・・・お二人の父君と模擬戦をしましたの」


「存じ上げてます、あの時は父上と我が家の騎士でもあるヴォルフォと戦ったとか」


「その通りです、だけどその時は敗北をしてしまって・・・すごく悔しかったのを覚えています」


まさかその借りを俺達に返す気か。


「けれど、今回の戦いで色々学ばされました。あの時は私はまだまだ弱かったのだと痛感しました」

「それにお二人は私とさほど変わらない年齢なのに、私よりも戦いに慣れていた。だからこそ、私も知りたいのです。どうすれば、お二人の様に、イストフィース家の方々の様に強くなれるのかを」


「それについてはアタシも同感だ。それに、エリアとはやってみたかったしな」


フェーネ様が戻ってきていた、メルティ様は修練場の端の椅子に座っている。


「私もやってみたい!」


エリア姉様は俄然やる気が湧いている、これは反対出来ない空気になってしまった。


「はぁ・・・ルールはどのような決まりで?」


「お?てっきり反対してくるかと思ったぜ」


「押し切られる未来が見えましたので諦めました」


「ふふっ、クロア君も実は乗り気だったりしますか?」


気付いたら君付けで呼ばれている、逆に何で皆ここまで乗り気なんだ。


「ルールはあの時と同じにしましょう。攻撃魔法の類は禁止、固有魔法も禁止で剣技だけの模擬戦です」


「良いのですか、お二人共魔法剣士では?」


「ふふっ」


アルティ様が笑っている。


「あ、ごめんなさい。あの時にも、ウィン殿に同じことを言われたので思わず」


どうやら父上と被ってしまったらしい、なんだかちょっと恥ずかしい。


「そうそう、あのいけ好かない獣人にも言われたぜ」


「こら、フェーネ・・・」


「いえいえ、確かにヴォルフォはいけ好かない時が有るので分かります」


四人に笑いが訪れる。


「ねぇ、もし良かったらなんだけどさ」


「どうしました、姉様」


「二対二じゃなくて、個人戦にしないかしら。四人で模擬戦だもの」


「確かに、僕たちはあまり多人数で模擬戦をしませんからね」


「それはいいアイデアですね、ではそうしましょうか」


「では、お嬢様、手加減はしませんよ?」


「勿論よ、それに模擬戦でフェーネが手を抜いてくれることがあった?」


「ありませんよ!」


そうして、全員で木剣を準備して、各々構える。


「じゃぁ・・・メルティ!掛け声をお願いしても良いかしら?」


「え・・・あ・・・分かりました」


恥ずかしそうにメルティ様が椅子から降りて手を掲げる。


「そ、それでは・・・よーい・・・はじめ」


合図と言うには小さな声で。それでもその小さな声に、全員が反応する。





平和な日常が戻っていく。

彼ら彼女らが命を懸けて、必死に考えて手にした日常を。

いつも読んで頂きありがとうございます。

プロローグと言っては変かもしれませんが、自分が書き始める頃に考えていた所まで書けました。

書きながら作品名を考えていたので現在でも作品名に(仮)が付いてしまっているので、次回の更新に作品名をしっかりと決めようと思います。

作品名が変わってしまって混乱するかもしれませんが、これからもまだまだ書き続けていきますので、何卒よろしくお願い申し上げます。

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