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国境戦 ⑯

「姫様達はご無事だろうか・・・」


「今は全員の無事を祈りましょう、我々の役目を果たす時です」


ザゼン達は陽動から離れ、仲間の為の退路を作っていた。


「状況の把握が難しい現状では、これが一番でしょう。とにかく今は・・・」


ポールトとザゼンが話していると、少し遠くに見覚えのある小さな人影。


「おや、ザゼンさん達が居ると言う事は陽動は完了したと言う事ですか?」


クロアが人を運んでいるとこだった。


「クロア殿、無事であったか!」


ザゼンとポールトがクロアに駆け寄る。


「無事で何よりだ、クロア君」

「所で・・・その人は?」


クロアの手には布袋と一人の大人を担いで引きずっていた。


「この人、どうやら帝国の上層部方のようでして・・・始末するかの判断が付かず、気絶させて運んでいました」


「なんと・・・では我々で預かろう」


ザゼンが部下に指示を出す。


「お願いします。そしてこちらは我々を襲ってきた帝国兵の首です。この方も位の高い人だったようなので、敵将の首があった方が良いかと思って持っていました」


「あの者を・・・!」


布袋を少し開けると、あの時の兵であるのがザゼン達にも分かった。


「そちらも我々が預かろう・・・クロア殿、良く無事に戻ってきてくれた!」


ザゼンがクロアの頭を撫でる。


「ザゼンさん、ここはまだ戦場ですよ」


「はっはっは!そうであったな!」


恥ずかしそうにクロアがザゼンの手を離れ、一呼吸置く。


「しかし、ザゼンさん達がこちらに来たと言う事は退路の確保ですか?」


「その通りだよ、敵の抵抗が厳しくてね。流石に占領は無理そうだ」


恐らく情報漏洩が起きていたからか、それでもこれだけの人が生きているのは精鋭揃いなのか、それともポールト様の固有魔法か何かか。

クロアが考えていると。


「少し敵も妙でしたな。我々に抵抗する者も居ればこの場からまるで逃げるように離れていく者もおりましてな」


「恐らく強制的に召集した者なのでしょうね。あの時の攻撃で焼かれた者達なのかもしれませんね」


全員で帝国兵ごと攻撃された時の事を思い出す。


「帝国も一枚岩では無かったと言う事ですな」


「あの状況なら占領まで、とも思いましたが・・・敵の精鋭の様な部隊の抵抗が凄まじくてね」


「明らかに抵抗が違う者達が居ましたな。かなりの脅威でした」


「その割には皆様無事のようですけど・・・?」


「その話は後にしよう。今はアルティ様達の退路を作りに行かねばならない」


「そうでしたな、姫様達の現在が分かっておりません。今は兵器の捜索と退路の確保を」


「了解しました。僕もそちらに加わります」


ザゼン達とクロアは合流し、アルティ達の為の退路を作る為に王国への帰路を練る。





-----∇∇∇-----





「ぐっ・・・おぇ・・・」


アウフルが地面に転がっている。


「はっ・・・はっ・・・」


「お嬢様!」


超感覚を使い続けた影響か、アルティも倒れ込む。


「お二人共・・・ありがとうございます」


「アルティ様も、見事な一撃でした」


「ふふっ・・・エリアさんに褒められるとなんだか嬉しいですね」


「なっ!エリア、ずるいぞ」


フェーネがエリアを睨む。


「私よりも・・・グラオラス殿、いえ・・・ヴェルム殿を・・・」


その言葉に気付き、エリアがグラオラスの元に駆け寄る。


「グラオラス様、ご無事ですか!?」


「何とか・・・」


ふらふらと立ち上がるグラオラス。

血は止まっているが重症なのは見て分かる。


「それよりも、俺達も脱出しないと・・・」


「エリア、そいつを頼む。お嬢様は私が運ぶ」


「分かりました」


四人がこの場を離れようとすると。


「それ、は・・・困るなぁ」


「「!?」」


アウフルが立ち上がっていた。


「傷が・・・!」


「一応使えるんだよね、超難しいけど、ね」


アウフルは聖属性魔法を使って自身を治していた。

しかし彼女の言う通り完璧では無く、治りも悪そうに見える。けれど動く分には十分そうで。


「しつけぇな・・・!」


「これでも団長なんでね・・・遅くに出てきてさっさと帰るわけにはいかないじゃない?」


アルティ達四人とも構えるが、目に見えて限界が近い。

そんな時に、外から声が聞こえる。


「あら、援軍かしら・・・まんまとそっちの作戦に嵌められた連中が帰ってきたかな」


アウフルが笑う。


「フェーネが兵器の破壊もしてくれたと言うのに・・・!」


アルティが悔しそうに言う。そして。


「アウフル団長!」


帝国兵がその場になだれ込んでくる。


「ようやく来たね、そこに居る奴らを捕えなさい」


アウフルが四人を指差す、だが。


「お逃げ下さい!ここはもう・・・!」


その言葉にアルティ達もアウフルも困惑する。


「うわぁあ!」

「どけええ!」


よく見れば、帝国兵の様子がおかしかった。

先頭に居るのは、あの時幹部に抗議していた人達で。


「こんなとこに居られるか!」

「早く逃げるぞ!」


「なっ・・・!」


援軍かと思えば、それは反旗を翻した罪人達。


「おい見てみろ!檻が壊れてるぞ!」

「俺の娘も居るんだ!助けてくれ・・・!」


罪人達が牢屋があった方へなだれていく。

その瞬間をエリアは逃さない。


「皆!こっちへ!」


エリアはグラオラスの身体を引きずりながらその場から離れる。

それを見て、当然フェーネもアルティを抱えて走り出す。


「これは・・・流石に無理ね・・・」


人の量を見て、アウフルは無理だと判断する。


「あーあ・・・これは、帰っても碌な目に合わなそうね・・・」


アウフルもその場から撤退する。


「それにしても・・・やっぱ王国の女の子は強いのね・・・生ける伝説とは良く言った物だわ」

「機会があればまた会いましょう、小さなお姫様達」





-----∇∇∇-----





「これは・・・」


「内乱でしょうか、我々としては有難いですけど」


ザゼン達が中枢に近づくと帝国兵同士が争っていた。


「恐らく我々の陽動によって何かがあったのか、それとも先程の強力な魔法の影響でしょうか」


「ならば尚更、姫様達を探さねば・・・!」


ザゼンが焦っていると。


「ザゼンさん、その必要は無さそうですよ」


クロアの指差す方向に、見覚えのある四人。


「姫様!!」


「皆様・・・!」


二つの部隊が合流を果たす。


「クロア、アンタ・・・」


ボロボロのクロアを見て、エリアがかなり不機嫌そうだが。


「それ、姉様も言えませんよ」


エリアもクロアと同じように怪我だらけであった。


「・・・治るわよね?」


「身体は多分、でも服は直せませんからバレると思いますよ」


姉弟でため息をつく。


「皆様、合流出来たのは僥倖ですがまだ敵軍の中です。急ぎ撤退致しましょう!」


ポールトが全員に声を掛ける。


「そうでしたね・・・悔しいですが、撤退です」


「何を言ってるんですか、大金星ですよ。お嬢様」


「皆様、こちらです!」


王国へと、全員で帰っていく。

被害は決して少なくない。

カランクレス家兵士、グラオラス家の裏切り。

しかしそれでも、間違いなく、これは歴史を変える戦いでもあった。

帝国へと踏み出した時には、祭りの後の様な静けさと暗闇だった。

けれど彼らの帰路には、空の向こう側、夜明けを告げる光が広がってきていた。

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