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国境戦 ⑫

「放て!!」


ザゼン達陽動隊は帝国のテントを次々と燃やしていく。


「取り敢えずの陽動は出来ているようですか・・・変ですね」


ポールトが呟く。


「ポールト様も気づきましたか」


「ええ、奇襲したと言うのに、抵抗が想像以上に激しい。まるで来るのが分かっていたみたいに」


「思えば、あの男も不思議でしたな。何故あんな所に居たのか・・・」


ザゼンは一つ思い出す。

この戦争が始まる前に自身の主に聞いた話を。


「・・・内通者か」


想像したくは無かったが、どうやら自分達の戦場にそれが居るのだろうと理解する。


「アルティ様、クロア殿。どうか無事であってくれ・・・!」


ザゼン達は陽動を続ける。

それが今、自分達のやるべき事だから。





-----∇∇∇-----





「一先ず落ち着いたようですね」


アルティ達はその場の制圧を終わらせていた。


「お嬢様、まだ安心はできません」


「そうね、あなた達は見張りを、我々が中に入ります」


「「はっ!」」


騎士達を防衛を任せ、巨大なテントの中に入って行く。





テントの中には明かりが無く、非常に視界が悪い。


ヒート(生活火魔法)


フェーネが魔法で辺りを照らす。

そして。


「こ、れは・・・」


眼前に、大きな砲台が現れる。

間違いなくこれだと、全員が理解する。

それと同時に、何かに繋がれていることが分かる。


「何でしょう、あの管の様な物は」


「アルティ様、私が」


エリアが先頭を代わり、進んでいく。

管を辿っていくと、いくつもの牢屋に繋がっていた。

牢屋は布に覆われていて、中は見えない。


「これは、何でしょうか」


エリアが確認の為に、中を覗く。


「!?」


エリアはすぐに離れる。


「エリアさん、中には何が・・・?」


「あまり気分の良いものではありません・・・」


「なんだそりゃ、アタシが見るぞ」


フェーネが中を見る、そして。


「・・・お嬢様は、見なければいけないって言うと思うから、どうぞ」


そう言いながら、フェーネがアルティに見せるために更に布を広げていく。

そして。


「これは・・・」


牢屋の中には、人が居た。

老若男女問わず、中には自分達よりも幼そうな子供まで。

何人かはこちらに反応を見せた。しかしほとんどが意識が無いのだろうか、反応が無い。


「一体・・・どういう?」


「恐らく、ですが。この管に繋がってる牢屋全員から魔力を奪って、あれだけの魔法を放っていたのかと」


「・・・今すぐこの兵器を破壊します」


アルティは兵器の方に歩みを進める。


「大いに賛成です。こんな胸糞悪い兵器を作れる帝国に、呆れてますよ」


「破壊するってことで良いんすよね?でもどうやって壊しますか」


グラオラスが全員に尋ねる。


「フェーネ、破壊できる?」


「中々大変ですね。魔法で壊れる程の出力を出せるか・・・」


「キブシは無理か?」


「グラオラス様の期待にはお答えしたいのですが、私では力不足かと」


「では一度、管の破壊をしましょう。牢屋も破壊したいですが・・・」


牢屋の中の彼ら彼女らに、逃げる気力があるかが分からない。

今は混乱を避けるために兵器の破壊を優先する。


「そっちなら斬れそうですね。エリアも行けるか?」


「はい、破壊しましょう」


二人が剣を抜き、破壊を試みる。

その時だった。



「それは困るなぁ」


「!?」


テントの入り口から女の声が聞こえた。


「何者ですか!」


「何者って、帝国の兵に決まってるでしょ」


「・・・周りに居た騎士達をどうしましたか?」


「ん?殺したよ、当たり前でしょう」


アルティが悔しそうに、顔を歪める。


「それを壊されちゃうと、私達は逃げるしかできなくなっちゃうからね」


「アンタは・・・」


「おや、フェーネちゃんが居たんだ。てことはそこの・・・どっちかの女の子がカランクレス家のご令嬢かな?」


アウフルがエリアとアルティを指差しながら言う。


「フェーネ、彼女は?」


「あれが、帝国戦闘部隊団長、アウフル」


「彼女が、団長・・・」


「自己紹介ありがとう。そういう事だから、悪いけどここで、その兵器の燃料にでもなってくれる?」


その瞬間。


「がっぁ!」


グラオラスが、キブシに背中から貫かれる。


「!?」


「何を!?」


グラオラスが倒れる、そしてキブシがローブを脱ぐ。


「あなた、は」


「お久しぶりです、アルティ様」


その男は、片腕が無く、見覚えのある顔だった。


「テメェはあん時の!」


「いやはや、ようやくチャンスが来ましたね。グラオラス家に仕えて長かったですが、ここまでのチャンスが来るとは」


「おや、じゃあ君が私達に情報提供していた?」


「その通りです、リュダ殿にはお世話になりました」

「これで、カランクレス家の娘を。そして、私の片腕を落としてくれたイストフィースに借りが返せます」


男は笑いながら、アルティ達を見下す。


「なら二対三って考えていいの?」


「はい、アウフル殿」


「くっ!」


フェーネが焦る。

状況は最悪だ、後ろには裏切り者、前には帝国の最高戦力。

そして何よりここに自分の主が居る事。

逃げる事は出来ない、かといって二人を守りながら戦える相手では無い。


「つまり内通者が居たと言うよりも、騙されていたと言う方が正しいと言う事ですか」


「その認識で間違えありませんよ、グラオラス様は素直でいい子でしたから」


キブシが笑い続ける。


「フェーネ様」


「エリア?」


「この男は私が相手します、フェーネ様とアルティ様はあの団長を」


エリアは剣を構える。


「父様程、私は優しくないわよ?」


「構いません、貴方の綺麗な腕の二本をあの男に送るのが今から楽しみですから!」


そう言って男が土魔法で分断する。


「エリアさん!」


「お嬢様、ここはエリアを信じるしかない!」


「お話は終わった?」


アウフルがレイピアを抜く。


「来ます!」


「くっ」





-----∇∇∇-----





「やりますねぇ、流石あの男の娘」


エリアは男の魔法を捌き切っていた。

だが近づく事が中々出来ない。


「アンタも、中々魔力あるじゃない」


「生意気な娘だ」

「ではこれはどうですか」


グランドニードル(攻撃土魔法)!!」


地面から無数のトゲがエリアを襲う。


「はぁ!!」


エリアはそれらを打ち落としながら避ける。


「やりますねぇ!」


「そのうざったい口を黙らせてあげるわ!」


エリアが突撃するが、避けられる。


「おっとっと、流石は剣士。油断なりませんね」


エリアは今の動きで確信する。

この男は、自分の父や弟よりも圧倒的に弱いと。

クロアの言葉を思い出す。


-----∇∇∇-----

「魔導士は攻撃魔法などを使いながら魔力循環をするのは大変なんですよ。もちろん同時に扱う事が魔導士として当然ですが、出来るだけ燃費を抑えるためにあえて循環をやめる事はあります。なので相手が動いた時に魔力循環を行っているかどうかだけでも、見る習慣を付けた方が良いと思いますよ」

-----∇∇∇-----


こいつは今、循環を行っていた。身体強化でもある循環中にあの程度の動きなら斬れると。


ある意味で当然でもある。元々魔導士とは身体強化をしているから動けるだけであって剣術や体術などの修練はあまりしない。

魔法の修練をせねばならないと言うのもあるが、元来魔導士に接近戦などの技術は求められてなどいない。


「何でアンタが生きてるか分かる?」


「何の事ですかな?」


「何で腕だけで済んだかって話よ」

「父様なら多分、アンタ程度の動きなら首を落とせたわ」


「だからどうしたと」


「つまりアンタは今、父様の温情で生きているだけって事よ」


「・・・やはり腕では無く、その綺麗な身体も髪も、バラバラにして貴方のお父さんに送り付けましょうか」


「あら、子供に挑発されてそんなに怒るなんて・・・みっともない男!」


「あまり調子に乗らない事だ!」


男が魔力を高める。

エリアが構える。


「イストフィース家の剣術を、アンタに教えてあげるわ」


ソイルクラスタ(攻撃土魔法)!!」


巨大な土の塊が、エリアを襲う。


エリアは迷わず、その塊に突撃する。


「はああ!!」


一振り。

エリアは岩の様な、塊を両断する。


「なっ!?」


その切れ間から進んでいく。

そして


「父様なら、もっと早かったわ」


男の胸に、剣が貫かれている。


「は、は・・・」

「何て、親子だ、貴様らは」


エリアが剣を引き抜く。


「がぁっ・・・ああ・・・申し訳、ありま、せん」


男は意識を失う。


「アンタもクロアみたいに魔導士でも身体を鍛えれば、私ともっと戦えたでしょうね」


エリアが周りを見渡すと、先程の土壁が崩れていく。


「グラオラス様、大丈夫ですか!?」


倒れているグラオラスに近づく。


「イストフィースか・・・俺は・・・大丈夫だ」


気づけば血は止まっていた、何かの魔法か、止血剤でも持っていたのか。


「それよりも、アルティ様達の方を頼む・・・!」


「分かりました」


エリアが土壁の方へ走って行く。


「キブシ・・・」


グラオラスが倒れているキブシに近づく。


「なぁ、いつからだったんだ・・・親父が死んだ時か?それとももっと前からか?」

「そもそも、キブシってのは本名なのか?」


倒れている男は、すでに、反応しない。


「情けねぇよ・・・お前も、お前の裏切りに気付けなかった俺も」

「ドーバル様に・・・顔向けできねぇな、もう」





すでに犠牲は数え切れない。

それでも、お互いに、止まる訳には行かない。

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