国境戦 ⑪
アルティ達は巨大なテントの前にたどり着く。
少し離れた所から魔法の音などが聞こえてくる。
「ザゼン達もやってるようですね」
「私達も目的を達成せねば、顔向けできませんね」
「この屋根の様な物も、魔道具なのでしょうか・・・」
エリアが見上げる場所には、周りのテントとはまるで違う機械的な屋根が覆っていた。
「そうだろうな、何年か前にうちのハーピィ隊の偵察が居たせいで帝国がこっぴどく負けた時があったらしくてな。そこから空からの認識を阻害する目的で作ったんじゃないかとか、親方様が言ってたぜ」
「ついでに雨風も凌げるからな、遠征するには助かる代物だな」
「流石は魔導兵器の国ですわね・・・」
アルティが感心していると。
一人のローブを着た人物が現れる。
「何者ですか!?」
「これはこれは、アルティ様。私はグラオラス様にお仕えする護衛魔導士です」
その言葉に、グラオラスが反応する。
「ん?何でこんなとこに居るんだよ、キブシ」
グラオラスの反応に皆が少し落ち着く。
しかし。
「おい、作戦無視か、テメェ」
フェーネはそのローブの男に威圧する。
「申し訳ございません。可及的速やかな報告の為、自身の力を使い皆様に追いつきました」
「何かあったのか?」
「グラオラス様に皆様、お戻りください。我々の作戦はどうやら筒抜けのようです」
「まじか!?」
グラオラスは男の言葉を信じているようだが、アルティ達は疑心を大きくしていた。
「筒抜け、とはどういう事ですか」
「私の力でこの周りを索敵していたところ、すでにこの場を囲もうとしている者達が居ます。それに、ザゼン様達の陽動にも、すでに人員を派遣している様子。奇襲にも関わらずあまりにも対応が早すぎます」
アルティは彼の言葉を信じ切れなかったので、自身の固有魔法を使い周囲などの感知を始める。
「・・・彼の言葉に、嘘は無いようですね」
感知の結果として、すでに周囲に帝国兵が多く向かってきているのが分かった。
「皆様の逃げ道を私が作りますので、こちらに」
そう言うとキブシと呼ばれた男が地中に穴をあける。
「ここから脱出致しましょう、私が殿を務めさせて頂きます」
「さっすが我が家の頭脳。でも逃げるってのは・・・」
グラオラスは彼を信用している様子。
しかしここまで来て逃げると言うのは彼の選択肢には無いようで。
「そうですね、その程度であればここから逃げ出す理由にはなりません」
アルティが力強く、逃げる気は無いと宣言する。
「見るに、貴方は中々魔法に長けている様子。ならばその力を我々の為に使ってくださいませんか?」
「確かに、お前が居れば更に心強いぜ」
アルティとグラオラスがキブシにそう告げる。
「・・・承知しました、一先ず背後を守りましょう」
そう言って、キブシは自身の土魔法で視界を妨げる程度の壁を生成する。
「ありがとうございます」
「アルティ様、礼には及びません。作戦無視をした私にはどんな罰でもお受けします。しかしこれは私の独断です、グラオラス様にはどうか寛大な心をお願いします」
「いや、キブシにそんな事させられねぇよ。アルティ様、俺にも当主としてもメンツがある」
二人を見てアルティは。
「では、この戦いで大いに活躍して頂きます。そして私はそれを罰としますわ」
「だからどうか、生き残って下さい」
「全身全霊でお応えします」
「わかりましたぁ!」
壁を上って帝国兵が次々とこちらに向かってくる。
「エリア!アタシ達も行くぞ!」
「はい!」
フェーネとエリアが数名の騎士と駆ける。
「皆様、まずはこの場所を制圧します。ご武運を!」
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「くそっ!どうなっている!?」
帝国幹部の男は、慌てていた。
王国軍が国境を越え、さらには侵攻してくることが初めてだからである。
「おい!どうなっているんだ!」
怒鳴りながら一つのテントに入る。
「敵軍が攻めてきただけですよ、戦争なんだから当たり前でしょうが」
アウフルが呆れながら言う。
「そんな事は分かっている!だがこれは奴らが行わないと言う大陸統一の侵略ではないか!」
(自分達は好き放題攻め込んでおいて、向こうが来たらこの慌てようとは・・・呆れた)
しかしアウフルも少々焦っていた。
「取り敢えずほとぼりが冷めたら報告しますから、安全な場所にでも居て下さいって」
「どこに安全があると言うのだ!」
「はぁ・・・じゃあ前線のテントにでも居て下さい。この攻撃は奇襲だ、前には被害が少ないと思いますよ」
「そうか・・・ならば貴様も来い!」
「何故?」
「貴様が一番強いのだろうが!貴様が私を守れ!」
「それは無理ですね、私も流石に出撃しないといけませんからね。護衛は付けるんでそれで満足してください」
「ふざけるな!」
「あぁ・・・うるさいなぁ」
そう言って、アウフルが魔法を使う。
すると男は、急に倒れこんだ。
「にゃんあ!」
呂律も回っていない声に、アウフルがが冷たく言い放つ。
「戦いの役にも立たないから引っ込んでくれる?」
数名の兵士がアウフルの指示により幹部の男を連れていく。
「きしゃまあ!」
そのまま大声を上げながら連れていかれる男。
「まったく・・・この奇襲に乗じて死んだことにすればよかったかな」
「まぁ、そんな事は置いといてだ」
アウフルからしてみても初めてに近い事で頭が少しこんがらがっていた。
「リュダは帰ってこないし・・・外で魔法が派手にやり合ってるし、兵器の方向にも強いのがいるなこれ」
「どこに行くべきかな」
アウフルが魔力感知を広げていく。
「・・・決めた」
「この力は、好きじゃないんだけどな」
戦火は広がっていく、因縁も、虚偽も、そして力も、渦巻いて行く。




