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国境戦 ⑥

あれから更に二日程、戦闘が激化することも無く、未だに攻める気があるのか無いのか分からない攻撃が続く。


「攻める気が無いなら帰りやがれー!」

「さっさと負けを認めろー!」


砦から帝国軍にヤジが飛んでいる。

現状を考えればこちらの物資も特に不足はしていないが、ストレスは溜まるのだろう。

心休まる瞬間が無いので当然と言えば当然かも知れないが。


「戦闘が始まってから三日、本当に攻める気が無いのですかね」


「どうじゃろうな、他の砦や本部も同じような感じと聞いてはいるが・・・」


ザゼンさんと牽制しながら会話をする。

アルティ様も初陣にもかかわらず、向こうが攻めてこないのでやきもきしているらしい。


「寒い・・・」


「ほほう、戦闘中にもかかわらず中々余裕がありますな」


「出来るだけ火魔法を使っているのはそれが理由なので」


「なんと、それでは他の属性魔法もそれほど扱えると?」


「それは一応秘密と言う事で」


「これはもっと活躍してもらわねばなりませんな」


「活躍ならアルティ様にしてもらった方が良いのでは?」


「それはそうであったな」


ザゼンさんが豪快に笑っている。

そんな中で、敵軍が不穏な動きをする。


「・・・ん?」

「撤退している?」


「何をする気だ・・・まさか本当に諦めたわけでもあるまい」


クロアとザゼンが警戒をしている。



瞬間



「「!?」」



わかる。

魔導士だから、かもしれないが。

魔法とは魔力の起こりがある。

優秀な魔導士は魔法を使う時に、この魔力の起こりを極力小さくする。

相手に魔法の使用を分かりづらくするために。

精密に魔力をコントロール出来る者はいつ魔法を扱ったかが分からないと言わせるほどに。

だが逆に、大きな溜めが有れば、それほど膨大な魔法を扱おうとしていると言う事。

そして膨大であれば、遠くからでも魔力の起こりが分かる。


そして。



「「伏せろ!!!」」


クロアとザゼンが同時に叫ぶ。

この声にどれだけの者が反応できただろうか。




極光




太陽の光などでは無い。

だけど幻想的な光。

それが魔力で出来た物なのだと、一瞬で理解できる。

クロア達の眼前に、迫る。

けたたましい音と共に、砦が揺れる。



「うわああああ!!」

「きゃああ!!」


砦に居る者達からの叫び声。

大量の砂ぼこりで前が見ずらい。

魔力の残滓から、とてつもない魔法だと言う事だけが分かる。


「皆無事か!!」


ザゼン殿の声がする。


「僕は無事です!」


「他の者はおるか!!」


多くの声がする、無事な人員が多そうだったが。

あくまでここは魔導士が多く居る塀の上、城門前で陣を取っていた騎士達が分からない。


「姉様・・・!」


砂ぼこりが晴れていき、塀から城門を見ると。


「これは・・・」


門がほぼ破壊されかけている、かなり強固とも思えたあの扉が崩壊寸前だ。

気づいた時には上から下り、堀の上から外に飛び降りていた。


「姉様!!」


騎士隊の近くに行くと。


「クロア、何してるのよ」


聞き馴染んだ声がした。


「ご無事ですか!?」


「アンタの声が聞こえたからね、流石私の弟だわ」

「クロアが気づかなかったら、私もああなってたかもね」


そう言って、姉様が指さす方向には、おびただしい程の血の跡があった。

恐らく人が居たのだろう場所には、血もすでに蒸発しているのか水気が無く、赤い跡だけが残っている。


「これは・・・やばいですね」


「クロアも、隊列乱して大丈夫なの?」


「もはや今そんな事を気にしている場合じゃないでしょう、砦の中も阿鼻叫喚ですよ」


「でしょうね、まったく」


「エリアさん!」


「あら、大丈夫だった?」


「あ、ありがとうございます・・・エリアさんが手を引っ張ってくれなかったら・・・」


姉様が助けたのだろうか、女性の騎士が姉様に感謝をしている。


「とりあえず中に戻って部隊の再編を・・・」

「っ!?」


馬鹿な。

あれ程の魔法を、連射してくるのか?

分かる、先程の感じた魔力と同じだ。

あの膨大な魔力が、感じ取れる。


「姉様、門から出来るだけ皆を遠ざけてください!」


「分かったわ!」


クロアの反応に、異常が起きていると理解するエリア。


「あなたもこっちに来て!」


「え、あ、はい!」


二人が倒れている騎士を起こしながら門から離れる。

先程の魔法は明らかに指向性を持って飛んできていた。

恐らく城門をめがけて発射されている。

一瞬だけであったが、あれが属性の持った魔法では無かった。

すなわち魔力の塊を放出していると言う事。

しかしそれは魔導士からすれば非常に難しいはず。

つまりさっきのは魔道兵器による攻撃、連射できるとは思わなかったが。

一体どれぐらい打てるのだろうか、まだまだ帝国軍には余力があるのだろうか。

だがそれを考えている時間は無い、少なくとも城門を破壊されれば一気に劣勢に陥る。


「撃ってくる場所が分かるならば・・・!!」


クロアが両手を地面に付ける、そして。


アースウォール(防御土魔法)!」


巨大な土壁を魔法で作り出す。

クロアが持つ出力で作り出されたそれは、もう一つ、砦の壁が出来たようだった。

そして、同じ魔法が撃ち込まれる。


「ぐっ・・・!」


作った壁が破壊されて行く、だが先程より威力が低かったのだろうか、クロアが作り出した土壁を破壊するだけにとどまった。


「はぁっ・・・はぁ・・・!」


何とかなったか、だけどもしまだ撃てるなら我慢比べになりそうだが。


「無事か!クロア殿!」


「ザゼンさん、平気です」


息を整え、ザゼンさんに返事をする。


「今のはクロア殿が?」


「ええ、門を目がけてましたので、威力を殺せればと思いまして」


「ありがとう、クロア殿の魔法が無ければ門が破壊されていたかも知れぬ」

(何という子だ、あれだけの壁を作り出した出力もだが、未だに魔力量の底が見えぬ)


「しかし油断できません、もしまだ放ってくるようなら流石に・・・」


そんな話をしていると。


「オオォォォ!!」


帝国軍側から人の声がする。

兵隊がこちらに来ているのが見える。


「なるほど、この三日間の謎が解けましたね」


「そのようですな、だがこれは弾切れと見ていいのかのう」


「だと思いたいですね。でもここからが本番とも取れますね」


そう言いながらザゼン殿と一緒に構える。


「おい、ザゼン」


「これは、フェーネ様」


「緊急だ、アタシも出る。お嬢様に話してこい。今の現状を一番冷静に伝えられそうなのがお前とそこの坊ちゃんだと思うからな」


「了解しました」


「お前、イストフィースの長男だろ」


「覚えていただき光栄です」


「・・・よくやった、とりあえずこっからは任せな」

「おい前衛共!アタシも出る、一緒についてこい!」


「おお!!」


騎士達がフェーネ殿に続いて帝国軍に向かって行く。

それと一緒に姉様も向かって行く。


「クロア、よくやったわ。今度は私がやってくるから、休んでなさい」


「姉様、ご武運を」


「アンタより活躍してやるわ!」


元気よく走って行く、あの人たちが負ける未来が見えないな・・・


「クロア殿、一度戻って姫様に知らせましょう」


「そうですね、正直助かります」


そう言って、二人は砦に戻っていく。





-----∇∇∇-----





「おい、誰だ、二発目を許可したのは?」


「はっ!部隊長殿が発動せよと・・・」


「その馬鹿を呼んで来い、ぶん殴る」


「は?いやしかし」


女の殺気が溢れる。


「早く呼んで来い」


「はっ!!」


走って出ていく兵士。


「団長、抑えてください」


「落ち着いていられるか、そもそもあれは一発撃って攻める予定だったのに・・・作戦を乱す阿保などいらないわ」


「それには同意しますが、今やると士気が乱れます」


「はいはい、じゃあ殴って気絶させるだけにしとくよ」

「それにしても、あの砦なの?ご息女がいるのは」


「恐らくは、他の砦に比べてあまりにも過剰な戦力に、人数の多さ、何よりあちらの裏切り者からの情報提供です」


「そう、流石ね」


戦場を見つめる二人の兵士。


「失礼します、アウフル団長。お呼びでしょうか?」


「ああ、二発目を許可したのは君か?」


「はっ!あの見事な威力、ここで攻め落とせると思い、思い切って」


そこまで言うと、突然。


「がっ!?」


男が急に倒れこむ。


「私の作戦では一発だけ撃てと言ったよね?」


「しょれは!」


「言う事を聞けないのかな」


「ぃえ!」


「どうやら君は疲れているみたいだし、この戦場ではもうお休み」


「だんちょうどにょ!?」


男の頭にかかと落としを入れ込み気絶させる。


「アウフル団長・・・」


「すまないね、片付けておいてくれるか」


「了解です」


「あの兵器を、見事なんて言ってる時点でこいつは、ここに居るべきではないね」


「そうですね・・・想定外ではありましたが、すでに城門の破壊が出来ているのでは?」


「そうね、こちらも予定を早めようかしら」


「ご報告です・・・!?」


「どうした」


倒れる上司を見て驚く兵士。


「ああ、気にしないで報告してくれ」


倒れる部隊長を片付ける男。


「えっと、ではご報告いたします!」

「現在、王国の公爵家を交戦中、城門は突破出来ていません」


「なに?」


アウフルが驚く。


「その・・・どうやら二射目は防がれたようです」


「あれを防いだと言うのか?」


隣の男も驚く。


「リュダ副団長の言う通りです。詳細はまだ分かりませんが、現場に居た者に聞いたところ、突然巨大な壁が現れた、と」


「なんてこった・・・」

「無断で二発撃った上に門も破壊出来ていないとは・・・最悪だなほんとに」

「報告ありがとう、戻っていいよ」


「はっ!失礼致しました!」


「巨大な壁か・・・リュダはどう思う?」


「恐らくは魔法でしょうね、申し訳ない。俺が魔導士の力量を計れれば、もう少し対応を変えられたかも知れないのに」


「いいよいいよ、寧ろ君だから偵察も出来る訳だしね」

「でも・・・あれを防げる魔導士が居るの?あの砦に?」


アウフルが空を見上げる。


「まじかー・・・本当に過剰戦力だな」


「噂に聞く、カランクレス家最強の護衛でしょうか?」


「いや、それは無いな。あの子は魔導士と言うよりは魔導剣士って感じだから、そんな巨大な壁を作れるとは思わないね」


「では魔導士団長などですか?」


「そっちも違うんだよなぁ、魔導士団長は違う砦に居るのが報告に上がっているからね」


「となると・・・召集された他貴族に、それほどの者が居た、と言う事でしょうか」


「何にせよ一気に難易度が上がったね、つまり撃っても防がれる可能性があるわけか」


「我々も出た方が良さそうですね」


「ま、胸糞悪い兵器を使うよりはそっちの方がマシかもね」


「他の砦に配属された兵器は・・・」


「使いつぶされてるんだろうね、まぁ気にしてもしょうがないさ。私達は私達の守れる範囲を守ろうよ」


「了解です」





戦場に変化が訪れる。

余りにも、突然の変化。

そしてお互いに、最悪の報告を受ける。

この戦いの矛と盾は、果たしてどちらなのか。

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