国境戦 ③
いつも読んでいただきありがとうございます。
世界観設定を除き、今回の話数で五十話に到達致しました!
まだまだ続けて参りますので、これからもよろしくお願いします。
「失礼します。団長、今年も出撃命令です」
パールブロウ帝国、首都フロドラウ。
軍部の一室にて。
「戦争を知らない阿保共は、懲りないな。いつまでこの言いがかりを続けるんだか」
一人の女が気だるそうに答える。
「そもそもの戦力差を考えろと言うのだ、あの王国に我が国が勝てる道理など無いと言うのに」
「しかし命令です、我々も逆らえません」
「ああそうだよ、だから腹立つのさ。私の可愛い部下達を、毎年ゴミの様に捨てる老害共がね」
椅子から立ち上がり、言葉を続ける。
「いっそのこと上層部を全員殺そうか」
「無理な事はやめてください、殺した後はどうする気ですか」
「王国にでも亡命するしかないか?」
「フローレレ王国がそんなに甘い国家だとでも?」
「分かっているさ、でも愚痴も言いたくなるだろう」
「そうですね、ですが戦力の事で一つご報告があります」
「戦力の事?」
「はい、あの兵器を使用するそうです」
「あー・・・あの子達か」
「あまりいい気は・・・しないですがね」
「それだけ今回はやる気があるのだね、何か理由でもあるのかな」
「どうやら、かのカランクレス公爵のご息女が戦場に出てくるみたいなので、今回は我が国を勝利をさせて、公爵の評判を落としたい裏切り者が向こうにも居たみたいです」
「ひどい身内争いだな、それに使われる我々も情けないけど」
「そしてそんな物の為に、あんな兵器を使うのか」
薄暗い部屋の中で、沈黙が訪れる。
「去年さ、息子が四歳になったんだ」
「おめでとうございます」
「ありがとう。そしてあの子がこんなことを言うんだよ。『僕が強くなって帝国の皆を助けるんだ』ってさ」
「元々喧嘩を売り続けているのは我々なのにね」
「いいご子息なのでは無いですか?」
「そうだね、私も少し嬉しかったよ。でももしかしたら、今回の戦いで敗れたら私が死ぬかもしれない」
「そうしたらあの子の成長どころか、あの子も死んでしまうかもしれない」
女が窓の方を見る。
「この街も、焦土に焼かれるかもしれない。私達が生きてきた証さえ消えるかも知れない」
「だから、あの胸糞の悪い兵器を使ってでも、勝つしか無いんだろうね。私達の家族を守る為にも、ね」
「すでに部隊には伝えてあります」
「有能な部下が居て助かるよ、それじゃぁ行こうか」
「今回はいつもより、死人が増えそうだね」
「出来るだけ相手に犠牲になってもらいましょう、狸共も多少は満足するでしょう」
「おや、君が愚痴とは珍しいね。明日は雨かな?」
「あの実験や、兵器その物が、僕は嫌いなので」
「・・・あれが好きな連中なんて変態だけだよ」
-----∇∇∇-----
「お父様、少し良いですか?」
「おお、アルティ、どうしたのだ?」
「部下の方たちから少し噂を聞いたのですが、イストフィース殿に何か無理を言ったとか」
「ハッハッハ!耳が早いな、あの男には娘と息子を連れてこいと言ったのだ」
「もしかして、私の初陣だからと言って気を使ってるのですか」
「嫌であったか?」
「迷惑です」
アルティの言葉に少し凹むドーバル公爵。
「まぁ、なんだ、それだけでは無い」
「と、言いますと?」
「何やら一つの面白い噂を聞いてな」
「噂?」
「うむ、イストフィース家の長男が魔物化しか魔物を討伐したとな」
「魔物化した者をですか・・・確かに、それが本当なら凄まじい事ですね」
「ああ、王都に運ばれた見事な魔石から、上位ランクの魔物相当だったそうだ」
「そんな魔物が・・・」
「それに、お前と同い年の剣鬼が居るとも、あの時から聞いていたからな」
「見てみたいと思うのが、武人の性だろう?」
ドーバルが笑いながら、アルティを見る。
「そうだったのですね、それなら納得です」
「私も少し楽しみです、イストフィース殿には模擬戦とは言え負けてしまいましたから、あの時から成長していると思わせて見せます」
「頼もしいな・・・メルティはどうしている」
「あの子は・・・部屋で勉強をしていましたわ」
「そうか、この前の礼も兼ねてイストフィース家には一族で挨拶を入れる予定だ、その時はあの子も呼んでくれ」
「分かりました、正式な場であればあの子も来ると思います」
「では、聞きたい事は終わったのでこれで、お忙しいところ申し訳ありませんでした、お父様」
「良い、お前も初陣だ、しっかりと体調を整えておけ」
「失礼いたしました」
アルティが部屋を出ていく。
「お嬢様、聞けました?」
部屋を出るとフェーネが待っていた。
「ええ、お父様が武人として気になったから呼んだそうよ」
「へぇ、親方様が気になるなんて珍しいですね」
「イストフィース殿とお父様は戦友ですから、気になるのかも知れないわね」
「でもあの獣人は来ないんですね、あの時の借りを返してやろうと思ったのに」
「ふふっ、でも楽しみが増えたわ、イストフィース家が来るのが待ち遠しいわ」
廊下をスキップするアルティ、それを見てフェーネも嬉しそうに後ろに付いて行く。
「フェーネ、今から少し良いかしら?」
「お嬢様の望みなら喜んで!」
ある者は喜びを。
ある者は悲しみを。
ある者は楽しみを。
戦争の準備が始まっている。
どんな事でも、準備をしている時が楽しかったりもするが。
しかしこれは戦いである、あまりにも、凄惨な催しでしか無い。




