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国境戦 ②

「さぁ、クロアも構えなさい」


「今日はもう休みませんか、姉様」


召集の話をエリアも告げると案の定、連日鍛錬の毎日であった。


「何言ってるの?戦場で休み何て無いでしょう?」


真顔でそんな事を言ってくる、流石に恐怖が少し湧く。


「それを言うなら呼ばれたその日に鍛錬のやり過ぎで使い物になりません、なんて事の方が問題でしょう?」


「まだ少し先よ?」


「・・・はぁ、わかりましたよ」


そう言い、クロアもまた構える。


「クロア」


「どうしたんですか?」


「攻撃魔法を使いなさい」


「本気ですか?」


「当たり前よ、ずっと手加減されてるみたいで腹が立つわ」


クロアとエリアは基本的に剣での打ち合いをしている。

だがクロアはあくまで魔導士、魔法を使って戦うのが基本である。

ただクロアは己の身体鍛えることに意味があるとも思っているので、打ち合いや稽古では攻撃魔法は使わないようにしている。


「それに、戦場に立ったら魔法も剣も矢も、きっと何でも飛んでくるわ」

「なら、全部に対応できるようにしとくのが普通でしょ?」


「相変わらずですね、いいですよ」


再び構え直すエリア。


「ただ固有魔法は使いませんよ、加減ができるものじゃないので」


「それでいいわ、アンタの魔法全部切り伏せてあげる」


「それは舐められた物ですね!」


広い庭で、魔法と剣がぶつかり合う。





-----∇∇∇-----





「あ~もう!」


「そんなとこで寝ころんだら汚いと思いますよ」


地面に転がりながらふくれっ面のエリア。


「どうやったら父様みたいに魔法を切れるのかしら・・・」


「父上も別に俺の魔法を切ったわけでは無いですけどね、どうぞ」


クロアが水を取ってきて隣に座る。


「それに、相手が姉様や父上程の腕だから、俺の絡め手が通じる訳ですからね」


「なんだかムカつくわ、罰として膝を貸しなさい」


問答無用でクロアの膝を枕にするエリア。

そのまま姉の言う事を聞く。


「そろそろ家に入りませんとね、また母上に怒られそうだし」


「そうね・・・でもちょっと疲れたから少しだけこのままでいなさい」


夜風が姉弟を包む、穏やかな中でクロアが口を開く。


「姉様は怖くないのですか?」


「怖いって、何の事?」


「我々の年齢で戦場で出るなんて、普通では無いですからね」


エリアは少し考える、けどすぐに答えを出す。


「怖いか怖くないかで言えば、多分怖くないわね。むしろ戦える事が楽しみだわ」


相変わらずの姉だなと聞くクロア。


「でも、そうね」

「何もできずに死ぬのは怖いわ、戦えもせずに、敵に良いようにやられて皆に迷惑かけてとか最悪じゃない?」


「それは確かに嫌ですね」


姉弟が空を見上げながら語り合う。


「クロアはどうなの」


「ん?」


「クロアは怖くないの?実際盗賊の時も私は特に何もしていないけど、アンタはしてたでしょう」


「そうですね・・・多分ですけど、怖いの感情が違うって感じですかね」


「感情が違う?」


「ええ、恐らく人は死への恐怖と言うのが元来あります。でもそれは死を理解しているから怖いと思うのでしょうか、俺は違うと思っています」

「人は何かやり残した事、まだやりたい事、叶えたい夢や理想があって、その道半ばで終わるのが嫌だから、死と言う物が怖いんじゃないかと思います」

「それで言うと俺も、まだまだやりたい事や叶えたい物があるので死ぬのは嫌です」


エリアは黙ってクロアの話を聞き続ける。


「それに、俺は今すごい幸せ者で、俺が居なくなると泣いてくれる人や怒ってくれる人がいるから死ぬ事なんて出来ないし、その人達の為にも死ねない」

「そのうえで、死ぬよりも怖い事があります」

「俺は父上や姉様にその人達と同じ感情を持っています」

「だから、自分が死ぬより二人が死や、怪我をするのが怖いって言うのが、正直な感想ですね」


「それを言うならクロアもでしょ、怪我したら今度こそタダじゃ置かないわよ」


「あの時はすみませんでしたって、母上にも言われてるんですから勘弁してください」


そう言いながらエリアは起き上がると。


「安心しなさい、私達なら勝てるわ、父様も居るんですもの、負けるわけ無いじゃない」


笑顔で、そう言い放つ。


「そう、ですね。それにアルティ様の晴れ舞台らしいですからね、綺麗な道でも作ってあげましょうか」


「アルティ・・・絶対に負けないわ」


「公衆の場では様を付けて下さいね・・・」


「分かってるわ」


何やら少し燃えている様子、カランクレス公爵から指名を受けている時点で会うしか無いんだろうけど、できれば会わせたくないなぁ・・・。


「お二人共ー」


「ルーシの声だ、家に入ろう姉様」


「はいはーい」





-----∇∇∇-----





「では一時の間頼むぞ、リリル」


「ええ、ヴォルフォ達も居るし、今のこの領なら心配無いわ」


「お姉様、お兄様・・・」


「なんて顔してるのよ、大丈夫よ皆で無事に帰ってくるわ」


「うぅ・・・ぐすっ・・・」


「あんまり泣かないでくれ、スー。俺達もなんだか行きずらいよ」


「ごめんなさい・・・でもぉ!」


オルカとスーがエリアとクロアに泣き付いている。

見送りとして領の皆が来ているので、クロア達はなんだか恥ずかしい気持ちがある。


「流石に大人気ですね、お三方は」


「あまり茶化すな・・・しばらくの間は頼むぞ」


「分かってます、すでにグラハとディンとも話し合っているので、領の事は気にせず暴れて来てください」


「私は基本的に一番槍を与えられるからな、戦果でも挙げてくるさ」


「流石大将だ、期待してるぜ」


「お前達も、そろそろ時間だ」


ウィンがそう言いながら、娘達を離す。

エリアとクロアにリリルが近づく。


「二人共、絶対に帰ってくなさい、約束ですよ?」


二人を抱きしめるリリル。


「苦しいです母上」

「心配しないで、母様」


少し照れ臭そうに。


「「絶対に帰ってきます」」


そう約束する。


「行くぞ、お前達」


「はい」

「はーい」


三人が飛竜に乗り込む、目的地は当然カランクレス領の国境付近。

いつも通りの様な戦場、しかし今回は公爵の娘も晴れ舞台と言うのもあって、他の貴族達も私兵をかなり出している。

兵の数などは居ない、それを見たらきっとあざ笑われるかも知れない。

けれどその戦力はあまりにも高い。

イストフィース家は、最強の戦力が赴く。

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