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国境戦 ①

明けましておめでとうございます。

今年もよろしくお願いします。

今週からまた定期的に更新を始めていきます、更新頻度を上げれる様に精進してまいりますのでこれからもよろしくお願いします。

「今日の作業はここまで、皆ありがとう」


クロアが終了の合図を出している。

大きめの畑で、住人達と一緒に作業をしていたようで。


「人手が増えてホントに良かった・・・」


領の警備などを今までは村民が行っていたのだが、ようやく兵士として働ける者達が増えたので、住人達の本来の仕事を行えるようになった。


「クロア様、今日はお疲れ様でした」


「うん、お疲れ様」


クロアが一人一人に声を掛けたり掛けられたり、各々帰っていく。


「この野菜から砂糖が生まれるなんてね」


ビートと呼ばれる野菜、様々な工程があるがこの野菜から砂糖が生まれる。

ある国ではこの野菜からとれる砂糖だけで国の砂糖をまかなっていると言われている。


「坊ちゃん」


「ヴォルフォ」


「作業は終わりましたか?」


「うん、今日のノルマは一応ね」


「しかし、これから本当に砂糖なんて出来るのですか?」


「目の前で見せたはずだけど?」


「確かに見ましたけど、大量に作るには少々大変そうだと思いまして」


「そうだね、でも俺の固有魔法を使えば何とかなると思うよ」


「固有魔法で?」


クロアの固有魔法『解体』

クロアはこの魔法を様々な方法で試している。

綺麗に解体していくことで模型などが作れるように、別に壊す、削るが解体では無いと考えている。

自分の認識や魔法の理解を深めればもっとこの固有魔法を拡張出来るのではないかと思っている。


「王国では冷たい炎を使う魔導士も居るんでしょう?それならもっと色々考えていいじゃないか」


「そうですね、魔法に関してうちの領で坊ちゃんに右に出る人は居ませんからね」


「母上がいるでしょ」


「リリル様もおっしゃってましたよ、もう教えることが無くて、この頃寂しいみたいですよ?」


「その代わりオルカ達が居るでしょって言っておいてよ」


「直接言ってください」


呆れながらヴォルフォが笑う。

そして真剣な顔に変わる。


「坊ちゃん、隊長から執務室に呼び出しです」


「もうそんな時期だったね」


夕闇の空を見上げながら、クロアがため息をつく。


「毎年毎年、疲れないのかな」


「まあ、多分理屈って訳でも無いですからね」


クロアとヴォルフォが一緒に、執務室に向かって歩き出す。





-----∇∇∇-----





「皆、疲れている所すまないな」


ウィンが労いの言葉を掛ける。


執務室にはイストフィース夫妻、クロア、直属騎士三人がいる。


「大丈夫ですよ、それにこの時期って事はいつものでしょう?」


「そうなるな」

「だが今回は悪い知らせと最悪な知らせがある」


騎士の三人が笑う。


「大将の知らせで良かったことの方が少ないだろうが」


ディンが笑いながら、周りも少し笑っている。


「まあ、そうかもしれんな」


「カランクレス公爵から国境戦の召集だ、お相手は隣国パールブロウ帝国」


「本当にいつも通り過ぎて、もはや驚きが無いですね」


カランクレス公爵の守る東は我が国が唯一隣国と争っている場所である。

いつもこの時期になると隣国が攻めて来るのだが、基本的には負けた事は無い。

そもそもの国力が違いすぎる事と、現在フローレレ王国と戦争している国がパールブロウ帝国しか無いのだ。

その為、この戦争において我が国では貴族自身の武力を示す為だったり、初陣には丁度良いなどと言われる始末。


「ならいつも通り隊長と俺が行けばいいんですかね」


イストフィース家からは領主であるウィンと部下のヴォルフォが参戦し、武勲を上げていた。

しかし。


「それが、最悪の知らせになるな」


執務室の空気が少し、変わる。


「公爵殿が何故か指名してきたのだ」


「指名?」


「ああ、領主である私と、そしてエリアとクロアを連れてきて欲しいとな」


「俺と姉様を、ですか」


全員が困惑する。


「本気ですか?お嬢も坊ちゃんも子供ですよ!?」


「確かにクロア様は博識で魔法も大人顔負けでしょうが、戦場ですよ・・・」


ヴォルフォとグラハが声を上げる。


「分かっている、私だって自分の娘と息子を戦場に行かせたくなど無い」


ウィンはそう言いながら、何処か悔しそうに。


「しかし、逆らう事も出来ん。私にはそこまでの力が無いからだ」


空気が重くなっているのが分かる、だけどクロアはあまり気にして無いようで。


「しかし何故、姉様と俺なんでしょうね」


疑問に思ったことをそのまま口にする。


「どうやら、公爵殿の耳にお前達の強さが届いたらしい」


「いや、ですからどこからそんなのが・・・そういえば一人、我が領から逃げた騎士が居ましたね」


ある事ない事でも言いふらしたのか、知る由も無いけど。


「それに加えて、ご息女の初陣を飾りたいそうだ」


「噂の長女様ですか。アルティ様でしたっけ?」


「そうだ、固有魔法を手にしたことで戦場に出るそうだ」


「公爵様は歳の近い俺達を呼んで、アルティ様を安心でもさせたいのですかね」


「どうだろうな、あの方は貴族以外を少し見下す言動も多少あるが、武人としての心も持っているからな」


「強い弱いで人を判断してるってことですか?」


「そういう言い方も出来るな」


「単純に俺達が気になったからなのか、それとも他貴族の戦力分析の為なのか。それとも娘に甘いだけなのか。会った事も無い人を読むのは流石に無理ですね」


「深く考えすぎても仕方あるまい、今回の戦は私とお前、そしてエリアの三名が行く事になった」


「流石に出来たばかりの兵士達を連れて行く事はやめたのですか?」


「彼らはまだまだそんな戦力ではない、今回は我々三人でだ」


「・・・本気ですか?」


ここで初めて、母上が口を開いた。


「すまない、リリル。私に力が無いばかりにお前にも負担を掛ける」


「そんな事はどうでもいいです、そうでは無くて」

「私は、毎年あなたがあの戦場に向かって行くのが怖かった」


母上が、泣きそうな声で続ける。


「そこに、エリアとクロアも見送れと言うんですか!?」


母上の声が、響き渡る。


「一体どこの妻が・・・夫と娘と息子を、家族を三人も笑顔で見送れると言うのですか・・・」


母上の言葉はもっともだろう、戦場に家族を笑顔で見送る事など、出来るはずもない。

でも、俺も今回は出発する側だ、ならば。


「母上の思いは、俺だってわかりますよ。いつも父上とヴォルフォを見送る時は、俺も笑顔にはなれなかったですから」


クロアが言葉を続ける。


「でも今は、父上とヴォルフォの思いも分かります。見送られるならせめて、泣いている顔じゃなくて笑顔が見たいと言う、無理難題を言う気持ちがね」


父上達を見ながら告げる。


「それに、いつも通りならそこまで損害無く勝利できますよ。毎年の恒例行事とでも思いましょう」


「クロア」


「分かってます、けど油断をしている気もありませんよ。だって」


クロアが笑いながら言う。


「アルティ様の初陣は姉様と俺が盛り上げますよ」


その言葉に全員が、少し気が抜ける。


「・・・はっはっは!確かにな、坊やお嬢がただで勝つわけ無いか!」


「この前の盗賊にも見事に勝利しましたからね」


「そういう意味ではもう俺らは初陣じゃないのか、残念だね」


「エリアもそんな事を言いそうだな・・・まったく」


部屋が笑いで包まれる。


「ちょ、ちょっと!」


「母上」


クロアが自身の母の目を見て。


「安心、は出来ないだろうけど・・・無事に帰ってくるよ、約束する」


「・・・クロアはこの前破ったばかりなので信用できないわ」


「それは本当に申し訳ございませんでした・・・」


未だに魔物件を言われる、そろそろ機嫌を直してほしい。


「でも、そうね」

「ここを笑顔で見送れなきゃ、ウィンの妻は務まらないわね!」


「いつもありがとう、リリル」


またこの夫婦は二人だけの空間を作るのが上手い。


「それじゃあ今日はこのぐらいで良いですか?姉様にもこの話をしなきゃいけないでしょうし」


「そうだな、召集はまだ先だ、多少はゆっくりも出来るだろう」


「そういえば隊長、何故この話でお嬢を呼ばなかったんですか?」


「・・・あの子にこんな話をしたら、今から鍛錬すると言い出しそうだったからな」


全員が納得する、しかもアルティ様の話は父上がしてたから余計に対抗心を持って鍛錬しそうな所まで見える。


「いい判断だと思いますよ、父上・・・」





フローレレ王国における唯一の戦場、東の防衛都市。

戦場には様々な思惑が渦巻く。

クロア達は、この戦で何を見るだろうか。

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