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不等で理不尽な世界で(仮)  作者: 麒麟草
新たなる住人達
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新たなる住人達 ③

いつも読んで頂いきありがとうございます。

今年がもう終わろうとしている事に驚きを隠せません。

自分が投稿を始めてから5か月も経っている事に改めて早すぎてびっくりしてます。


来年、2026年1月2日と3日に更新はありません、申し訳ありません。

しかし1月からは更新の頻度をまた上げようと思っております。

これからもまだまだよろしくお願いします。


皆様、良いお年を!

「次!」


父上がそう言うと、順番の人が父上の前に立つ。

現在、兵の志願者達の試験中である。


「今の人は悪くなかったですね」


グラハがそう呟いていると。


「甘い!」


ヴォルフォの声が聞こえてくる。


「三人は楽しそうですね」


父上、ヴォルフォ、エリア姉様が今回の試験官を務めている。

試験はこの三人の誰かと戦い、俺、グラハ、ディンが採点をしていく形。

あくまで採点方式なので敗北=不合格では無い。

だけど当然手も足も出ない者よりは戦えた者の方が合格に近づくのは事実。


「最初はどうなるかと思いましたが、杞憂でしたね」


「あれだけ打ちのめされればね・・・」





-----∇∇∇-----





「はぁ?」


一人の男が試験内容を聞いて、そして目の前にいる子供を見て怒っている。


「あれは・・・新しく来た騎士志願の人か」


クロアが少し離れた所で名簿を見ている。


「どうしたのだ」


「領主様・・・試験の内容は聞きましたが、子供相手な上にさらには子供に採点されるって事ですか!?」


「そうだ」


エリアの相手の採点はクロアの仕事なので、エリアと戦う者は子供二人から採点されると言う事になる。


「領主様の娘と息子ってのは聞きましたけど・・・流石に娯楽が過ぎるんじゃないですか?」


この男の発言に後ろで待っている人々も少し、エリアとクロアに対して懐疑的な視線を送っている。

しかしこの領に住んでいて志願している者達は、新しく来た人達に対して少し呆れている。

そしてこの発言を聞いて、一番憤慨している女の子がいる。


「さっきから聞いてれば・・・私より強かったら言ってくれないかしら?」


「子供相手に本気で振る剣など無い!」


普通はそうだろう。

場を治めるためにもウィンが説明しようとするが。


「一度初めてみては?」


クロアが遮る。


「そちらの方、中央学院の卒業者なのでしょう?」


「それがどうした」


男がクロアの方を睨みつける。


「強さに見た目が、年齢が関係無いと、知っているのでは?」


中央学院と言うのは、王都にある騎士及び魔導士を育てる教育機関である。

そしてその学院には、まるで子供の様な魔導士の長が居ると聞いたことがあった。


「・・・それは実績などがあるからだ」


「なので一度やった方が早いって話です。僕も、そして姉様も、娯楽などでは無いと理解してもらえると思いますよ」


クロアのその言葉にエリアは臨戦態勢を整える。


「怪我をしても知らんぞ」


男がそう言うと、開始の合図をクロアがする。


「では、この木札が地面に落ちたら開始です」


(このガキ共は何を考えてやがる・・・領主の子供だから痛い目に合わないとでも思っているのか)


クロアが札を投げる。

札が落ちた瞬間。




男の視界が空の綺麗な青で染まっていた。



「え・・・?」


「勝負あり」





-----∇∇∇-----





「あの方はあの後どうしたのですか?」


「自信を無くしたのか、会場から出ていったよ。逆恨みされても問題なのでサキユに監視させたけど、もう領から出ていったらしいよ」


「なんて気の毒な・・・」


「そもそも騎士としての心意気を育てるのが学院じゃないのかな、子供だからと、姉様を侮辱した時点で程度が知れてたけど」

「しかも勝手に出ていくとはさらに理解不能だね、今の騎士がああいう人ばかりじゃない事を願うよ」


「それを見てから、皆の目つきが変わりましたけどね」


「いい刺激だったんじゃねぇか、実際坊の言う事もあってるけど、この領地を見たら誰だって油断するわ」


「そりゃまあ、父上や俺達は貴族だけど、位で言えば男爵だからね」


ディンの言葉に納得は出来なくも無い。


「あれからはやる気が皆違いますから、しっかりと我々も採点しましょう」


「そうだな、今は怪我しても何とかなるしな!」


「そうかもしれないけど・・・はぁ」


クロアが今回の事には少し父上達と姉様に呆れている。


「この領に来て日も浅いのに、申し訳ありません、ユリズさん」


一人の女性に声を掛ける。


「いえいえ、私の役目でもありますから!」


彼女の名はユリズ。

イストフィース領に新たに来たシスターである。

現在は教会が無いので、領内の人々の相談や怪我を診てもらっている。

サルテ婆ちゃんがやっと楽ができると笑っていた。


「他者を治すのはかなり疲れると聞いたことがあるので、あまり無理はしない程度で大丈夫ですよ」


「クロア君は心配性ですね、この程度の事で我々教会に仕える者は疲れませんとも」


そう言ってくれるのはありがたいが、俺も魔導士の端くれなので、その疲労度の違いが分かる。

例えは変かもしれないが、自分を痛くしない程度に殴る場合、加減など簡単に出来るだろう。

しかしそれを他人にやる場合、話が変わる。

痛くない様に殴ると言われても、どこを叩くか、平手なのか、拳なのか、どれぐらい力を籠めればいいかなど考える量が一気に増える。

しかもそれを治療でやるとなれば、俺には出来ない事なので想像がつかない。


「次!」


試験は進んでいく、そこまで人数も多くないので早めに終わってしまいそう。


「よろしくお願いします!」


リリー達の番が来ていた、近くにいるグラハ達も何だかソワソワしている。

皆は何処まで食らいつけるかな。





-----∇∇∇-----





「これにて試験は終了とする。後日合否を出す、今日は帰って休んでくれ」


父上の号令で試験が終わる。


「お疲れ様です。三人から見て、志願者はどうでしたか?」


三人にタオルを渡しながら、今回の試験について聞く。


「皆、最初の出来事が響いたのだろうな、久々にいい運動ができた」


「確かに、中々できる奴も居ましたね」


父上とヴォルフォからは悪くないようだ、一方で。


「全然楽しくなかった!」


姉様はかなり不満のよう。


「最初の事があったからか、姉様の対戦相手は皆おっかなびっくりで立ち回ってましたからね」


「もっと打ち合えると思ったのに・・・」


姉様と戦った者達は基本的に打ち合うのでは無く、探り探りで戦っていた。

だがそれは正しい事でもある、子供と戦う経験など、ほとんど無いだろうから。


「あ、でもリリー達は良かったわ、成長してるじゃない」


何とリリーは姉様に一撃入れたのだ、そのあと一撃で吹き飛ばされていたけど。


「ロズもいい動きだったぞ、流石ディンの子だな」


ヴォルフォがディンに告げる。


「よせよ、なんだか照れるだろうが・・・」


「ロズはディンと違って魔法をしっかり扱ってたね」


「いきなりで驚きましたよ。でもまあ、我が領にはとんでもない魔導士が居ますから、あの程度なら初見でも避けられます」


ヴォルフォが俺を見ながら言う。


「なら俺がロズの仇でも取ろうかな?」


「勘弁してください・・・坊ちゃんとやるなら普通の剣を用意しないと」


その場で笑いが起こる。


「酷い言われようだね、まあでも今回のやり方は今年で最後だよ?」


「え、なんで?」


「当たり前ですよ。今回は人数が少なかったから良かったですが、増えれば増える程ユリズさんの負担がでかすぎる」


今は帰ってもらったけど、やはりかなり疲労している様子だった。


「それについては、すまない」


「本当ですよ、せっかく領に来てもらったのに、これが嫌で違う場所に移住なんてされたら最悪だ」


「いやぁ・・・申し訳ありません」


「私は良いと思ったのに・・・」


「ダメです。でも今日は、お疲れ様でした。合否については後でまた話しましょう」


「そうだな、我々も今日は流石に疲れた」


「私はなんだか物足りないから・・・クロア」


エリアがクロアに木剣を渡す。


「はぁ、言うとは思ってましたけどね」


予想はしていたのでクロアは簡単に剣を取る。


「では、あまり遅くならないようにな」


「お疲れ様でした」


父上達に返事をしながら、姉様と一緒に広場に戻る。


「もう怪我は平気なんでしょ?」


「ええ、遠慮なくどうぞ」


「ふふん♪」


「俺も試したい事あるので、付き合ってもらいますよ」


「また何か思いついたの?それじゃあそれも教えなさいね」


「俺に勝てたら良いですよ!」


いつもの様に、姉弟が鍛錬をする。

その様子を遠くから見つめる人が居た。


「ふふっ、あれが、ショウナ様の言っていたクロア君か」


ユリズが物陰から姉弟を眺めている。


「最初はどうなる事かと思ったけど、思ってたより良い領ですね、ここは」


そんな事を言いながら、姉弟に近づいて行く。


「あれ、ユリズさん」


「明日の予定を聞き忘れてましたので、それにまだ怪我を治さないといけない気がしたので」


笑って答えるユリズ。


「なら本気で行くわよ、クロア!」


「ちょっ!」


「ふふっ」


暗くなるころには、ユリズに言われて二人共家に帰る。

リリルからは良いストッパーが来てくれたことに感激していた。




広げていく、自分達の仲間を。

新たなる人々も、これからここを守りたいと思えるように。

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