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不等で理不尽な世界で(仮)  作者: 麒麟草
動物と魔物
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動物と魔物 ⑦

「やっぱり戻ろうよ、リリー」


「なんだよ、また弱音か?」


「違くて・・・もう戻る道もわからないから不安なんだよ、皆も疲れてきてるし一回休もうよ」


「しょうがないな・・・」


リリーとロズを含めた六人の子供達。

夜の山に魔物を討伐する目的で入ったが、この時間に山に入ったことがある者が居ないので道が分からなくなってしまっている。

疲れは一方的に溜まっていく。

なのに帰り道も分からない彼ら彼女らは精神的な疲労もある。


「私達、帰れるかな・・・」


一人の女の子がそう呟く。


「大体リリーが倒すって言ったんだろ、探してきてよ」


男の子がそう言い放つ。


「なんだよ!じゃあお前らはやられっぱなしでいいのかよ!」


「それは・・・僕だって悔しいよ、この前だって猪に僕達の畑を荒らされたんだから!」


「だったら今更うだうだ言うなよ!」


「もう帰る道もわからないんだぞ!お前は分かるのかよ!?」


「みんな落ち着いて・・・」


「うぅ・・・」


疲労から怒りや不安が空気を乱す。

この山に入る時は円満に、そして大人達やクロアを見返してやろうと意気込んできた。

静寂しかない夜の山に、言い争う声。

ある者にとっては、耳障りであり、不快な人間の声が。


「!」


「どうしたの、リリー?」


「何か足音が聞こえないか?」


「うーん・・・?」


子供達が静かに耳に集中する。

夜風に、山特有の木々のざわめき。

その中に、明らかに自然では無い音が聞こえる。


「もしかしたら僕達を探しに村の人達が来たのかも」


「げっ・・・もう来たのかよ」


「しょうがないよ、皆も帰ろう?」


「疲れた・・・」

「私も・・・」


足音が聞こえる方に皆歩く。

しかし、音が大きくなるとそれは、人の足音では無いと分かる。


「何か変じゃない・・・?」


リリーが構える、皆後ろに隠れる。

だけどそれは、子供達にはあまりにも荷が重すぎる魔力と殺気だった。


「「「うわあああああああああ!!!!」」」





-----∇∇∇-----





「!?」


「今のは・・・」


「あのバカの声だ!間違えねぇ!」


「全員急げ!」


ヴォルフォの掛け声で全員が走り出す。


「サキユ、一番前を頼む。ヴォルフはルーシを」


「はい!」


「お嬢様は私が!」


「なら俺はバカ共を見つけたら盾になるぜ!」


「頼む」


全員で隊列を決めて走る。

山の中でサキユは走りずらそうだがそれでも一番速度が速いのがサキユかヴォルフォだ。

だけどヴォルフォにはルーシを優先してもらわねば困る、サキユが前に出てもらうしかない。


「結構遠くまで進んだみたいですね」


「畑仕事のおかげで、皆足腰は強いからね」


「山道の勾配なんて苦じゃないってか!」


「それでも女の子も居たならそんなに遠く行けないと思ってました」


「それはルーシの言う通りだけど、リリーが居るから多分無理やり進めてしまうかも」


エリア姉様程では無いが、リリーも剣技と体力はエリア姉様に憧れてるだけあって子供達の中じゃかなり優れている。

そしてそれに付き合わされているロズや他の子供達も、良くも悪くも体力が付いている。

病弱では無い限りこの領に体力の無い子供など居ないのだ。


「そろそろか」


母上の固有魔法、追跡の魔力が強くなる。


「皆、構えろ!」


「普通に動物の可能性もあるから、見てから判断しようか」


「おうよ!」

「はい!」


クロア達がたどり着く、そこにはおぞましい魔力と殺気が漏れていた。





-----∇∇∇-----





「きゃああ!」


「うわああ!!来るな!」


子供達はパニック状態、剣を構えているリリーは。


「はっ・・・!はっ・・・!」


目の前に居るのは、足が六足、肥大化した角、そして無理やり埋め込まれたような目が首から二つ、そんな魔物がこちらを見下ろしていた。


「・・・!」


恐怖で声が出なくなる、リリーもロズも。

経験したことが無かった、魔力の大きさも、誰かから向けられる殺意も。


「うっ・・・うわあああああ!!」


そんな恐怖の中でもリリーは剣を振るいに魔物に飛び込む。


「ギュイイイ!!!」


魔物が首を振るう、それだけでリリーの剣が一瞬で弾かれる。


「きゃっ!」


「リ、リー!」


何とか声を絞り出す、しかし余りにも、小さすぎる。


「ギュゥ・・・!」


魔物がリリーを見下ろす。

その時に。


「皆!!」


親友の声が、二人に届く。


「クロア!」


「あれは・・・!」


見ただけで理解する、あれが原因だ。

あんな者が居るから、おかしくなったのだと。


「くっ・・・!」


クロアにはよりわかってしまう、異常な魔力と殺気、普通の魔物では無い事が。


「坊ちゃん!!」


「大丈夫かガキども!」


(まずい!)


魔物を前にして、ルーシとサキユが動けていない。

ディンは離れた子供達を守っている。

ヴォルフォはルーシとサキユを。

今、リリーを守れる者が居ない。


「ギュイイイイ!!」


魔物がリリーに突進を始める。


「あっ・・・」


リリーも足が動いていない。


「くそ!」


クロアが魔力循環を最大にして走り出す。

リリーから全員が離れすぎている。

声を掛けてからでは間に合わない。

リリーも初めての恐怖から足が動いてないのが分かる。


(間に合え・・・!)


「リリー!!!」


「クロ・・・!」


瞬間、リリーを弾き飛ばすクロア。

最大でクロアが走っていたからリリーもかなりの勢いで吹き飛ぶ。


(間に合っ)


同時に、左肩に痛み、そして視界が急速に走り出す。

クロアは魔物に貫かれた。

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