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不等で理不尽な世界で(仮)  作者: 麒麟草
動物と魔物
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動物と魔物 ③

「これは・・・」


クロアの目の前には一匹の動物が倒れている。

大人より一回り小さいぐらいの熊が一匹運ばれてきた。


「あら、クロアじゃない」


「エリア姉様、これは何があったんですか?」


「何って、畑がこの熊に荒らされてたの。だから倒したわ」


「倒したって・・・ちなみにどこの畑ですか」


「クロアが新しく作ってた畑よ、あれからあの甘い食べ物が生まれるんでしょう?だから見張っておいたのよ!」


なんだか誇らしげに言っているが普通に危ないのでまずは相談してほしかった。

しかし姉様もあの野菜からあれが出来るのを知っているのか、それともただ単に食べたいから覚えているだけか。


「何にせよ怪我が無くて良かったです、先に父上に報告してきますね」


「待って」


「何ですか?」


「この子って、小熊よね」


「ふむ、大人にしては小さいので恐らくそうでは?」


「飼うわ!!」


なんて無茶苦茶な事を・・・


「飼うって・・・この熊をですか?」


「もちろんよ、だって私が一撃で倒せなかったの」


「だから?」


「きっとすごく強くなるし私の鍛錬の相手になるわ」


「なる・・・ほど・・・」


さて、困ったぞ。

恐らく姉様は決めた事を基本曲げない。

そして今回の件は色々良くない。

いつもなら姉様が無茶苦茶を言うと、母上、父上、俺、ルーシが止めるのでオルカとスーも必然的に止まる。

だが今回のこれはルーシも恐らく賛成してしまう。

そうなると姉弟対両親になる。

この場合、俺はどちらの立場に立てばいいだろうか・・・


「・・・」


「何黙ってるの?」


「いえ、色々考えているんです」


父上達か・・・姉様達か・・・

恐らく言い分や考えとしては、父上達の方が正しいだろう。

それが普通なのも分かる。

前に考えていたが餌や飼う場所、住民への理解など、難題しか無いだろう。

それに、処分してしまう方が楽だ。

取り合えず家族で話合うか・・・


「一先ず檻か何かをサボンさんに借りてきます」


「この子を檻に閉じ込める気!?」


「それをしないと話し合いも出来ませんよ」


「しょうがないわね・・・」


罠用の檻をサボンさんにお願いしに行く。





-----∇∇∇-----





「ダメだ!!」


「何でよ!!」


こうなるとは思っていたが・・・


「クロアも、賛成なの?」


「兄様は優しいから処分何てしません!」


父母と姉弟達の言い争いが起きている。

ヴォルフォ達は気づいたら居なかったので、恐らくこの雰囲気に気付いて帰った。


「兄様も何か言ってください!」


「クロアも何か言ってよ!」


「クロアもあれを飼いたいと!?」


完全に対立している親子。

いつもなら俺も父上達側だが・・・


「皆、落ち着いてください」

「良い紅茶をインチェンス侯爵から貰っているから、それを作ってきます。家族会議でも久々にしましょうよ」


「そうね、ウィンもエリアも一旦落ち着きましょう」


「・・・そうだな、私も熱くなりすぎているようだ」


「なによ!」


「ルーシ、エリア姉様を落ち着かせておいてくれるかい」


「・・・わかりました、兄様」


そうしてクロアが紅茶を作りに行く。




「ふむ・・・」


誰も居ない厨房で、火属性魔法で紅茶の温度を調整していく。

入れ方を教わっておいて良かったと思う。


「考えとしては、当然父上派だ・・・どう転んでもリスクしかない」


しかし頭ごなしに否定するのも平等では無い。


「あの子熊はまだ目覚めてはいないけど、姉様と戦える動物となると、当然危険度も高い」


飼えた場合のメリットを考える。

もし従順に育つなら、戦力にも姉様の言う通り訓練相手にもなるかもしれない。

だけどデメリットが多すぎるのが問題。


「ここまで悩むのは、ルーシ達も含めたお願いだからだろうな・・・」


俺は多分、姉弟達に弱いんだと思う。甘いとも言うかも。

長男としてとか、もちろんそういう理由が無いわけでは無いけど。

家族には出来るだけ笑っていてほしいから。


「どうやって母上を言い負かすか、だな」


恐らく父上はあのままエリア姉様達が言い続けたら折れると思う。俺と同じで家族には甘いのだ。

ただし母上はそんな事で首を縦には振らない。


「熊について、昔から調べていてよかったな」

「多少、都合の良い場所もあるしな・・・」


紅茶をトレーに乗せて運ぶ、そして父上達には悪いが今回は。


「久々に家族で喧嘩するか・・・」


そう言いながら、家族の居る部屋へと戻っていく。





-----∇∇∇-----





「すごくいい香りね、流石侯爵様だわ」


「そうですね、インチェンス領が誇る王国一の茶葉だそうですよ」


「あら、クロアはいつの間にインチェンス閣下とそこまで仲良くなったの?」


何となく母上がからかいながら聞いてくる。


「ただの社交辞令でしょう、盗賊の件もありましたからね」


そんな軽口を母上と交わすが、部屋の空気が重い。

そして一番最初に父上が口を開いた。


「では改めて言うが、あの子熊は飼えない。山に返すか、処分するかだ」


「父様は本当に冷たいですね、あの子も生きているんですよ?」


「ルーシよ、私もそれは分かっている。だがこれは獣害の一部だ、すべてを保護していたらキリが無いのだ」


「それにあの熊を誰が面倒見るんですか、あなた達だけですべて出来ると?」


「私が見るわよ、私が連れて来たんだもの」


「エリアは熊にどれぐらいの食料用意すればいいか知っているのですか?領民への安全性は?その説明もあなたが全部やるのですか?」


「そ、それは・・・」


エリア姉様が俺の方を見る。


「全部クロアがそれをやるの?あなたが面倒を見るんじゃないのかしら」


先んじて釘を刺される。

母上が本気で言っているが分かるし、怒っても居るんだろう。

危険な事をした自覚がない姉様への怒りもあると思うが、もちろん心配もしているからこそ本気で怒っているのだ。

そして母上のその怒気でオルカとスーが喋れない、母は強しとはよく言った物だ。

そんな中で。


「父上、母上」


皆が俺を言葉を待つ。


「今回の件、俺は飼う事に賛成します」


父上と母上はかなり驚いていて、対称的に姉弟達は嬉しそうで。

親子喧嘩の開始だ。




イストフィース家が今日も騒がしい。

だけど今日はいつもとは違う事で。

この夜は、長そうだ。

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