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不等で理不尽な世界で(仮)  作者: 麒麟草
新年とは病と共に
33/40

新年は病と共に ⑥

空が青みがかるよりも早く、イストフィース家の貸し切りの宿に一人の少女の影がある。


「おはようございます!」


宿屋の店主が目覚めるよりも早く、元気な声がする。

店主が眠気眼で扉を開ける


「おはようございます。副団長様じゃないですか、こんな朝早くからどうしたのですか?」


「あれ、聞いてませんでしたか?」

「家族に会いに来ました!」


「おや、イストフィース様のご家族が来ると聞いてましたが、副団長様がそうだったのですね」


「皆はもう起きていますか?」


そう言いながら宿の中をベニアが覗くと、朝方ではあるがまだまだ暗い時間でもあるので宿の中に人の気配は無い。


「流石に誰も起きていませ・・・いや、お一人先程外に出ていきましたね」


店主が朝、物音がしたのでエントランスを見ると少年が一人、宿を出ていく姿を見かけていた。


「少年ですか・・・それは小さかったですか?ちょっと大きかったですか?」


「ご長男様だった気がします、よろしければ空いているお部屋にご案内しますが?」


「いえ、また後で皆が起きてきたら来ますね」

(ロア君が起きて出ていったのね、ちょっと脅かそうかしら♪)


ベニアが走り出す、どこに向かったかもわからないのに。

だけど彼女には確信があった、だって、弟だから。




-----∇∇∇-----





まだ太陽が朝を告げない時間帯。

非常に寒い空気の中で、歩いている少年が一人。


「デモールから聞いたのは・・・ここか」


一つの商業ギルドを見つける。

商人には二種類いる。

デモールの様に個人で商売を営み、行商人などをしている者達。

中には店舗を持つ者達も居るみたいだけど個人で店舗を持っている者は少ない。

そしてどこかの商業ギルドに属している者。

もっともの目的としては、商業利益の保護、遠隔地取引の安全確保である。

利益を独占させないためなどが主であるが、遠方での取引をするときにギルドから護衛を出してくれたりもするので自身で戦えない商人からすれば嬉しい事の方が多い。

それに自分では会えないような人にもギルドを通じて会える可能性も高い。

その時に気に入られれば御用商人になる事もあるという。

色々規約もあるらしいがギルドからの様々なバックアップを貰えるので基本的にはこちらの人の方が多い。


「奴が贔屓にしている商業ギルドか・・・」


薬を倍の値段で買ったのはザーロ子爵だが、奴がわざわざ出向くなど考えられなかったので、デモールに頼み込んで買いに来た者を教えてもらった。

個人を教えるのにかなりためらわれたが、聞き出すことに成功した。

だが特徴しか聞けなかったのでそれを調べるためにも王都にきたのだ。


「一致する奴が居ればいいんだけどな」


とはいえまだギルドは空いていない。

場所を確認しただけだったので、クロアは帰ろうとする。

しかし


「ローア君!!」


背後から突然に強襲に、防ぎながら受け身をとる。


「いっ!!・・・って」

「お久しぶりです、ベニア姉様」


いきなり襲い掛かってきたのは実の姉だった。


「うん、久しぶり」

「前より反応早くなったね、前なら当たったと思うんだけど」


「いきなり人の後頭部ぶん殴る人あなたしかいませんよ・・・」


「えー、ただのじゃれあいなのに」


この人のじゃれあいは人間と人間のじゃれあいではない。

怪物と魔物のじゃれ合いに近い。


「こんな朝早くどうしたのですか?」


「うん?宿に行ったらロア君だけ起きて外に出たって聞いたから追いかけてきたの」


追いかけたって・・・この広すぎる王都をか。


「良く見つけましたね、この広い王都で」


「私はロア君の姉だからね!」


「それ、理由になっていませんよ」


「そうかなー?」


「まぁ、いいですよ」

「改めて、久しぶりベニア姉様」


「・・・うん、久しぶり、ロア君」


二人が再開したとき、それは寒空の中で、暖かな朝を告げる時間だった。





-----∇∇∇-----




「「ただいま」」


姉弟と二人で宿に戻る、そこにはすでに両親が起きていた。


「ベニア、久しぶり!」


母上が姉様に抱き着く、父上も顔には出さないが喜んでいるのだろう。


「クロアもおはよう、早速ベニアと遊んできたのか?」


「いえ、単純に一緒に居ただけですよ」


「そうか、でもこれでエリアが少しは大人しくなるだろう」


「リアちゃんがどうかしたの?」


「いや、少々荒れていてな・・・私にも責任があるのだか・・・」


ベニア姉様に父上の行った依頼の話などを話した。

そして


「それは確かにちょっと、父様が悪いわね」


ベニア姉様の言葉にまたしても父上がへこんでいる。


「そんな話をしておいて、自分とは手合わせしてくれないなんて、しかもそれを私に押し付けようとしてる所がさらに呆れてます」


心まで見透かされて父上が明後日の方向を見ている、このままでは母上もヒートアップしてしまうそうだ。

流石に助けてあげるか。


「まぁ、俺ともやってますから、ベニア姉様が思うよりはエリア姉様も元気だと思いますよ」


「それなら・・・いっか」

「でもそう言う事なら、せっかくだし稽古でもしようかしら」


「宿の外にある馬小屋の前ならできると思いますよ、なかなか広かったですから」


「その口ぶりは、昨日もやってたの?」


「それだけ打ち込んでいるんですよ、エリア姉様も」


「そう・・・じゃぁ相手しないとね」

「私も妹の成長を知りたいもの」


一旦事なきを経て、朝食の時間になる。

一年で一番騒がしい朝食の時間。

今日は唯一、ベニアと居られる時間。

イストフィース家にとってそれはまるでお祭りのよう。

朝食を終えても、その熱は冷めない。

姉弟がベニアを取り合う中、また一人だけ宿から出ていく。

姉の事も、もちろん大切である。

でもそれ以上に、自分の領に、住んでいる民に、家族に、間接的とはいえ手を出してきた輩。

彼はそれを、決して許しはしない。

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