新年は病と共に ⑤
少々忙しくなり11月から更新が金曜日と土曜日になる予定です。
三日に一回ほどの更新だったのですが週に二回ほどになるかと思われます。
まだまだ書いていくのでこれからもよろしくお願いします。
カシャンカシャンと、甲冑の音が城に響く。
その音はいつもより少し嬉しさがにじみ出ている。
「ふんふーん♪」
鎧を纏う少女が廊下を鼻歌交じりにスキップしている。
「珍しいな、君が嬉しそうにしてるのは戦闘の時ぐらいだと思っていたよ」
同じ鎧を身に着けている男が少女に言う。
「ふふん、明日は家族に会えるんですよ」
嬉しそうに笑う少女。
「そういえば、そろそろだったね。だけど新年祭に向けて我々も警備をしなければならない」
「あまり羽目を外しすぎないようにね」
「わかってますよ、団長も貴族の女性に人気なんですから気を付けてくださいね」
そう言いながら、少女はまた踊るように歩き出す。
「だからいつも通り、明日はお休みを頂くのでよろしくお願いします」
「わかった、いつもお疲れ様」
鼻歌を歌いながら騎士団の宿舎に帰る少女。
「団長、いいのですか?」
「後ろから急に声を掛けないでくれよ、驚いてしまう」
男が一人、後ろから団長と呼ばれる者に声を掛ける。
「それは申し訳ありませんでした。で、いいのですか?」
「良いも何も、彼女はこの日以外で休暇を要請しないからね」
「しかし副団長目当てで来る輩も多いですよ?」
「承知の上さ」
「それに・・・」
「何でしょうか?」
「副団長という立場、彼女の強さ、そして他の騎士からの信頼」
「あの子はその全てを背負っている」
「そうですね、団長と違って書類仕事も早くて助かってます」
苦笑いの団長は
「そうだね、彼女は優秀だ、それでも彼女は・・・十一歳の少女なんだよ」
「そんな子が家族に会うために休暇を寄越せと言っているんだ、寧ろ背中を押してやるのが我々の仕事だよ」
「・・・それもそうですね」
「さて、副団長が抜けた穴を埋めないとね」
「誰も埋められないと思います」
「君は相変わらず手厳しいね・・・」
-----∇∇∇-----
「・・・様」
声が聞こえる。
「お兄様!」
「ん、おはようルーシ」
欠伸をしながら妹に挨拶をする。
「馬車の中で眠るのは危ないですよ、昨日夜更かしでもしたのですか?」
「いや、そこまで遅くないはずだったけど・・・心地がいいからかもね」
「そろそろ着きますよ」
「うん、ありがとう」
他の家族を見るとオルカとスーが外を見てはしゃいでいるのを母上が抑えている。
「もう一年経ってると思うと、なんだか早いね」
「そうですね、でもベニア姉様に会える唯一の時間でもあるので私は大事にします」
「それは皆、同じ気持ちだよ」
王国騎士団
それは王国を守るフローレレ王国最大の戦力の一つ。
有事の際はどこへでも派遣される。
それが他国との戦争だろうと、あるいは貴族同士の小競り合いだろうと、または魔物の襲撃だろうと。
そして常に王都を巡回して警備を務めている。
王国騎士団と言うと王族を守るように聞こえるかもしれないが、実はそうではない。
王族を守る者は別に存在しているので、騎士団は王国の規律を守る者。
治安維持に重きを置いている。
「相変わらず忙しいのかな、ベニア姉様は」
「どうだろうね、まぁでも」
「いつも通り、会いに来る気がするけどね」
「そうですね」
いつもよりルーシの笑顔が多い気がした。
「お前達、そろそろだぞ」
父上の号令で皆が馬車から降りる準備をする。
俺も俺で、少し動くとしようか。
-----∇∇∇-----
「では今日から三日ほどお世話になります」
「こちらは貸し切りですから、お好きにお使いください」
宿の店主がそう告げると各々で部屋に荷物を置きに行く。
荷物を置いているとドアからノック音がする。
「どうぞ」
「クロア、外に身体動かせそうな所があったわ」
「はぁ・・・それでどうしたいと?」
「身体がなまってそうだから付き合いなさい」
「一日程度で姉様の動きが鈍るわけないでしょう・・・」
「わかんないじゃない、いいから先に行って待ってるわよ」
「来なかったら永遠に鬼ごっこに付き合ってもらうわよ」
どうやら逃げ場が無いようだ。
俺も動かしたかったので別にいいんだけどね。
「わかったよ、取り合えず先に行っててよ」
エリア姉様が部屋から出ていく。
「あれは・・・そうとう意識してるな」
父上の話を聞いてからずっとああだもんな・・・
しかし俺も気にならないわけでは無い。
剣士としてエリア姉様と同じぐらい強くて、魔法もしっかりと扱えるなんてまるでベニア姉様みたい。
ベニア姉様は剣士ではないけど。
「しかし・・・王都にここまで早く来たのはもう一つの目的のためなんだけど」
今はエリア姉様に付き合うしかなさそうだ。
「せめてサキユが居てくれればな・・・」
無い物ねだりは意味が無い、今は目の前の事に準備しよう。
そうして、ブラックボックスから木剣と取り出して外に向かう。
少年と少女はこの日もまた、月が満ちるまで打ち合いをしていた。
父に怒られて、宿に戻り食事を済ます。
そこで聞いたのは明日の朝にイストフィース家の長女が宿に来ると言うこと。
家族が少しお祝いの様なムードになる中で、クロアは調べ物を進める。
けどきっと明日は、何も手につかないんだろうなと。
最愛の家族の一人に会えるのだから。




