新年は病と共に ④
何だかんだ30話、少しだけ書き方を変えました。
まだまだ書いていきますので、よろしくお願いいたします。
ガタガタと音がする、少しだけ広いキャビンの中。
「ふふっ」
「どうしました、母上?」
「こうやって家族みんなでお出かけするのってこの時ぐらいしか無いでしょう、だから嬉しくてね」
今日は新年祭に出席するため王都に家族全員で向かっている。
人数が多いので大き目の馬車を用意したがそれでも狭い。
最初は二台用意しようとも思ったが、少々金額が増えてしまうのと誰と誰が一緒に乗るなどで喧嘩が始まる未来が見えたので大きな一台にした。
「確かにそうかもしれませんね。そもそも領を出ることが少ないですから」
「そうね、いっつもウィルもクロアも居ないんだもの」
そういって母上が拗ねるように言う。
俺は父上の顔を見て答える。
「父上の愛が足りないみたいですよ」
からかうように父上に言う。
「・・・リリルよ、あまり子供達の前で・・・その、勘弁してくれ」
父上が少しだけ照れるように言っている。
いつ見てもこの二人は・・・と呆れていると。
「お兄様!」
「どうしたの、オルカ」
すっかり元気になったオルカに呼ばれる。
「その、王都に付く前に少しだけお勉強したいの」
「兄様、僕も聞きたいです」
気づけば、ルーシ、オルカ、スー、が俺の周りにいた。
「勉強か、何について?」
「えっと、私がお薬を飲めなかったのは意地悪な貴族がいたせいだと聞きました」
「そうだね」
「だから、なんで意地悪をされたのか知りたいの・・・」
三人がこちらを見てくる。
「そう言うのは俺では無くて父上に教わった方がいいんじゃないかな?」
「でもお父様はお兄様に聞けって」
父上の方を見ると、父上が明後日の方向を見ている。
説明がめんどくさくなったなこの人・・・
「ふむ」
「でも、そうだね」
「王都に行くんだし、色々知っておいた方が良いかもね」
全部理解できるかはわからないけど、教えないという選択肢は無い。
「じゃあ貴族派閥から教えようか」
「「「はーい」」」
馬車では、派閥についての勉強会が行われている。
----∇∇∇-----
「上手くいってるんですかね」
少し大きな屋敷の一部屋に二つの影がある。
「ふんっ、恐らく苦しんではいるだろうが新年祭には来るだろうな」
大きな身長だが身体はかなり細身の男。
「成り上がりの小僧から生まれたガキなど、どうせ体調も悪くならん馬鹿ばかりだろうからな」
その言葉を立って聞き続ける男。
「しかしザーロ閣下、その・・・」
「わかっている、新年祭が終わり次第買い取ってやる」
「ありがとうございます」
ザーロ・ドルモ・デンテス子爵
オルカを含むイストフィース領の病人を間接的に追い詰めた本人である。
そしてそこにいるもう一人、ザーロ子爵の御用商人でもあるラビラと言う男。
「まったく、何故あんなのが気に入られているのかが不思議でならん」
ザーロ子爵は面白くないのだ。
爵位が自分より低い者が、自分より評価されていることが。
それは去年インチェンス侯爵に今年の収穫などの報告に行ったときに言われた。
「あの坊やの方が丁寧だったわね・・・」
恐らくザーロ子爵に向けたわけではない。
たまたま漏れてしまったのだろうか。
「閣下、その坊やと言うのは誰の事ですか?」
子爵が聞くとインチェンス侯爵は
「イストフィース殿の長男よ、あの歳にして素晴らしい才覚だったわ」
「・・・つまりその子供の方が優れていた、とおっしゃりたいのでしょうか」
インチェンス侯爵は少し悩んで
「そうね、よくまとまっていたわ。何せ私に隠してることが少ないのだもの」
「・・・何のことでしょうか?」
「別にいいわ、あなたは派閥が違うもの」
「ここでその話はしないでいただけますかな?」
「そうね、だからあなたも忘れなさい」
「・・・」
ザーロ子爵はその侯爵の態度に憤慨していた。
そして、その言葉を聞いてイストフィース領を調べた。
そうするとカランクレス公爵とも仲が良いなど色々出てくる。
そして男爵という自分より低い地位に居ながら、自分よりも色々な者達が求められると言う話を聞き、嫉妬もしていた。
しかし直接的に何かをしてしまえば目を付けられるかもしれない。
その鬱憤晴らしで薬や食料の買い占めを行っていた。
イストフィース領に流れないように。
「まぁ運よく奴のガキでも何でも調子が悪くなって、新年祭に参加できなければ儲けものだ」
「そう、ですね」
ラビラは少し悔しかった。
御用商人になれた事は嬉しかった。
しかしながら目の前の貴族は無茶な注文も多く、今回の薬の件も。
「では、私はこれで」
「ああ、ご苦労様だったな」
屋敷をでて、自分の行商馬車に乗る。
「あそこはデモールさんのお得意様だよな・・・問題にならなければいいんだけど」
そんな事を呟きながら、馬を走らせる。
-----∇∇∇-----
「だから、意地悪をされたんだよ」
「そうなのね・・・」
オルカ達が少し悲しい表情をしている。
「みんなで仲良くできれば、いいのに」
スーが呟く、そしてにそれに
「そうね、皆がスーみたいな人ならオルカもお兄様も苦しまなかったわ」
ルーシが抱きしめる。
「皆暗い顔して、何の話してるのよ」
エリア姉様がこちらに来る。
「ちょっとした貴族派閥の話ですよ、姉様」
「ふーん、私はそういうのよくわかんないわ」
つまらなそうに、また外を眺めている。
「姉様も、また喧嘩とか売らないでくださいね」
「何の話かしら?」
「・・・カランクレス公爵のご令嬢に出会ったら模擬戦でも挑みそうな雰囲気だったもので」
「・・・なんでわかるのよ」
やっぱりかこの人。
「父上が話していた時からそんな感じがしました」
「うぅ~、だって戦いたいじゃない!」
「父様が褒めるぐらい強いうえに固有魔法まであるなんて、私とどっちが強いか試したいじゃない」
「そもそも固有魔法は戦闘に使えるかわかりませんし、まだ使い慣れてない可能性もありますよ」
「そんな訳無いじゃない」
ふふん、と得意げに言うエリア。
「何故ですか?」
「だってその子は父様が言うぐらい強いのよ」
「そして私とも似てるって言ってたわ」
持ってきている剣を見ながら、エリアは言う。
「私なら固有魔法も使えるようにするわ、だってそっちの方が面白いもの」
確かな表情で告げる。
「ならエリアも生活魔法を使いこなせないとね」
母上が姉様を見ながら笑っている。
だがあの笑顔は心が多分笑ってない。
「うぅ・・・だって、魔力循環と違ってめんどくさいんだもの・・・」
「でもできないと不便でしょう?」
「それは全部クロアがやってくれるわ」
「お兄様を一人占めしないでください!」
「そーですよ、いつも剣ばかり」
「私達も兄様に魔法を教わりたいのです」
「何よ!姉に譲りなさい!」
「こら!お前達、何を騒いでいる!」
馬車の中が揺れている。
王都につくまでは長い道のりなはずなのに、家族といるとそれはまるで一瞬で。
様々な思想が渦巻く王都、また何かに巻き込まれるかもしれない。
だけど彼らにとってはそれだけじゃない。
もう一人の家族と会える、唯一の時間でもあるのだ。




