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友達として

「さすがに聞こえてないかな・・・すっごい魂だから思わず声をかけちゃったけど・・・」


その幻想的な音が声だと分かったのは、それが誰かに話しかけているようだったから


「もしかして俺に声をかけてますか?」

先程まで儀式の部屋で寝ていたはずだが、眼前に広がる不思議な花畑

周りには誰も居ないが声が聞こえたから聞き返してしまった


「あ!!」

「やっぱり聞こえてたんだね!」


目の前に女の子が現れる


「初めましてクロアさん」


「俺の名前を知っているうえにその不思議な服装・・・そして言葉を失うほどの美しいこの場所」

「もしかしてですが、あなたが神様ですか?」


色々考えることがあるが、まずは状況整理だ

この場所は少なくとも現実世界ではないと判断していいと思う


そしていきなり目の前に現れた女の子、いきなり現れたものだからその子を見て初めに浮かんだ疑問だったからこそ声に出してしまった


「うーん・・・ちょっと難しいですね、神様に近い精霊のようなものでしょうか」


「えっと、俺は儀式を行って神様の声が聞けるかみたなことをしてたと思うんだけど」


「はい!間違いないですよ!」


女の子は元気そうに答える


「だとすると俺は今どういう状況なのでしょうか?」


「それはですね、クロアさん」

「あなたの存在がかなり貴重だったので、私が気になってしまってここにお呼びしました!」


いよいよ理解が追い付かなくなってきた


「つまり勝手に俺はここに呼ばれたのですか?」


「あわわわ、そうですよね初めから説明しますね」


かなり怪訝な顔をしてしまったのか女の子が慌てている、少し可愛らしい


「まずはクロアさん、ここは私の神域と呼ばれる空間です」

「神様にも色々ありまして、私はここで人間の皆様を見守りながら才能がある人には祝福・・・あなた達が言うところの固有魔法を授けています」


なんとなくは理解できる、そのまま話を聞き続ける


「普段は声をかけて祝福を授けるだけなのですが、クロアさんの存在がとっても珍しくて・・・お話ししたくて呼んでしまいました///」


恥ずかしそうにしないでください、なんとなくこちらも照れてしまう


「その・・・存在が珍しいと言うのはどういうことでしょうか?」


「気になりますよね・・・説明しましょう!」

「人間には多少決まっている魔力を大きさがあります」


これは聞いたことがある、魔法は基本扱うことができる

人間の内包する魔力量は鍛えればどんどん増やせるらしいがこれにも個人差がある

もっとも差が出るのは魔法の出力

鍛え上げることもできるというが出力は磨き続けても限界があるらしい


「その大きさが・・・クロアさん、あなたは非常に膨大なのです」


これも感じたことがある


「なんとなくわかります・・・昔魔法の修練をしていた時、生活魔法と呼ばれるヒート(生活火魔法)を使ったときにかなり大きい火の玉ができてしまったので」


「その通り、クロアさんには魔法出力の才能があります」

「そして魔力量もかなり多いのではないでしょうか?」


なんでもお見通しらしい、だからここに呼ばれたのだろうけど


「おっしゃる通りです」


「通常の人間なら持ちえないような魔力量、そして出力」

「それが気になって呼んでしまったのです」


「俺も少し気になっていました」


母は魔法使い、父は優れた騎士

二人の間に生まれた自分なら持っててもおかしくないのかも知れないと思ったこともあるが

それなら家族のみんなが魔法に優れていてもおかしくはない


しかし俺達は6人兄妹

6人の中で長女である姉さんは固有魔法も含めて優秀である

そして俺の魔法も相当才能があるらしい


だがほかのみんなはそうではない、もう一人の姉さんは魔法が苦手でいつも剣を振って父と稽古をしている

妹や弟はまだ小さいが、魔力の大きさはさほど感じない


家族の中で俺だけが魔力量を含めて異常なのだ


「それは、動物における突然変異という現象です」


「突然変異・・・?」


「はい、生物として遺伝子が変化をする事をいいます」

「本来ならそこまで莫大な魔力を有して生まれなかったと思われます」

「あなたが生まれるときに何かありませんでしたか?」


そう言われても困ってしまう

正直生まれた時のことなど覚えていない


「わかりません・・・よく大人びていると言われることはありますけど」


「恐らくその性格もです」

「クロアさん、全然子供っぽくありません!」

「そして、それが気になったので呼んでしまったのです!」


「と言われましても、俺もわからないので答えようがありません」


女の子がくるくる歩きながら考え事をしている


「うーん・・・本人もわからなかったのですね、それならしかたありませんね」


「いいのですか?それが気になって呼んだのでは?」


「いえ、わからないことをずっと考えても仕方ありません!」

「とはいえ勝手に呼んでしまったお詫びもかねて、なにか私に聞きたいことはありませんか!?」


なんとなくこの子がわかってきた


「もしかして・・・お喋りしてくて俺をここに呼んだのでは?」


女の子が急にそっぽを向く


「なにを言ってるんですか!!そんなことあるわけないじゃないですか////」


「違うのですか?」


「うぅぅ・・・だってしょうがないじゃないですか!!」

「私、ここで祝福を授けるときに声をかけるのに人間さんの声は私に聞こえないんですよ!」


「こうやって喋ることは普通じゃないのですか?」


「そうです!皆さんに声をかけても毎回何にも聞こえないから私一人で喋ってるみたいで寂しいのです・・・」

「なのに今回はクロアさんの声は聞こえたんです!だから思わず嬉しくて神域に呼んでしまいました!」


目の前で小躍りしている、よほど寂しかったらしい


「なるほど、理解しました」

「では何個か聞いてもいいでしょうか?聞いてみたいことも多いので」


「構いませんよ!!」

「あ、でも神域も長くはもたないので2つぐらいに収めてくれますか・・・ごめんなさい」


2つになってしまった、どうしたものか


「では・・・祝福を受けるのに年齢は関係あるのでしょうか?」

これはずっと気になっていたことだ

生誕の儀式は6歳~10歳でのみ受けることができるのだ

なんでも大人になってからは固有魔法を授かれないと言われてるからだ


「いえいえ、祝福・・・クロアさんの世界だと固有魔法は持って生まれる才能のようなものなので年齢などは関係ありませんよ」


これは驚いた・・・つまりいくつになろうが儀式を受ければ魔法をもらえるかもしれないということ

自分の中で常識が覆る、これは国の根本を揺るがしかねない

なぜなら6~10歳で受ける条件がかなり厳しいのだ

父も渡していたが献金などが理由だ

そもそも平民では献金を払う余裕がない、そのため儀式を受けるのは基本的に貴族の子供や小さな村がお金を出し合って代表の子供が一人だけ受けるなどが多い

そして給金の多い国の騎士や強ければ稼ぎになる冒険者という人たちもお金に余裕ができるころには10歳を超えてしまっているから受ける意味がないと思われている

つまり今この国にいる儀式をしたことがない騎士や冒険者、下手をすれば平民や村にいる領民の人達も含めて全員が固有魔法を手に入れることができる可能性があるのだ


「これは・・・とんでもないことを聞きましたね・・・」


「確かに大人の方に祝福を授けたことがありませんね、もしかして子供しか授かれないと思われているのでしょうか・・・」


「その通りです、俺達の国では10歳までしか受ける意味がないと思われてます」


「うぅ・・・もしかしたらその中にもお喋りできる人がいたかもしれません・・・」


なんだか悲しそうに花畑をうずくまっている、ちょっと申し訳なさがある

しかしあと一つしか聞けないのか・・・


「ではもう一つだけお聞きしたいのですが」


「はい!私が答えられる事ならなんだっていいですよ!」


これはもう決まっていた


「名前を聞いてもいいですか?」


「へっ?」


女の子が固まっている

そうなのだ、俺の名前は何度も呼んでいたがまだ自己紹介すらされていないししていない


「改めまして、イストフィース・リーゼ・クロア、イストフィース家の長男です、よろしくお願いいたします」


「あわわわ、えーとよろしくお願いいたします///」


「お名前を聞いても?」


「えっと、ごめんなさい・・・私」

「名前が特に無いのです、呼ばれたこともないので」


「・・・もし不敬では無いのでしたら、名前を付けてもいいでしょうか?」


女の子の顔が赤くなっている気がした


「えぇ!?クロアさんが私に名前を考えてくれるんですか!?」


「よかったらですが・・・」


「全然いいです!こんなに嬉しいことがありますか!」


花畑をスキップしている、嬉しそうなら何よりだ

しかし名前か・・・花・・・


「では、コリーネ様ではいかがですか?」


「コリーネですか?」


「はい、父の領地の山にまれに咲いている白くて美しい花の名前です」

「妹達もよく綺麗だーって言って、魔法花壇に飾っているんです」


昔姉さんが風邪を引いた時にこの花が見たいと言って父と山を探したことがあった

何とか一凛だけ見つけたのでもって帰ったら枯れてしまうのは花が可哀そうだと妹達に言われて父が魔法花壇を買ってきたのだ

小さな魔法花壇だったがそれに飾っている限り花が枯れることはない非常に希少な魔道具

父が無理をしたのを覚えている


「嫌でしたか?」


「コリーネ・・・えへへ、コリーネが私の・・・」

「全然嬉しいです!!これからは私コリーネが皆さんに祝福をさせていただきます!!」


よかった、名前が無い

そんな不平等が嫌だった

だから他にも聞きたいことはたくさんあったが


「えへへ・・・私の名前」


こんな寂しがりの精霊が笑ってくれているなら

俺は十分だと、思えた


「ではクロアさんに祝福を授けます!」


「よろしくお願いいたします」


「固有魔法は目覚めたときに使い方がなんとなくわかると思います、目を覚ましたら使えると思うので色々試してみてくださいね」


「わかりました、ありがとうございます」


「それでその・・・」


急にもじもじしている、何だろうか?


「どうしたのですか、コリーネ様?」


「その・・・呼び捨てで呼んでいただけませんか///」


「さすがにそれは・・・精霊に近いと言っても神様でもあるのでは?」


「私にとっては、初めてのお喋りだったのです・・・それで・・・」


なんとなく見たことがある光景だった

領地の同い年の子から、昔同じ事を言われた気がする

今度は俺から言ってみよう


「では、俺の友達になってくれませんか?」


コリーネ様が首をものすごく縦に振っている


「はい!!友達になりましょうクロア君!」


なんだか俺も嬉しくて


「友達なら、俺にも敬語は不要だよコリーネ」


「!!わかりまし・・・えっと・・・わかった、クロア!」


あんなに不思議だったこの空間が、なんだが居心地が良いとまで思えてきた

そうこうしていると

周囲が光に包まれる、時間が来たのだとわかる


「ここでの記憶は残るのかな?」


「完全に残ることはないと思う、でも消えるわけでもないから安心して・・・」


コリーネが寂しそうな顔をしている


「また会うのは難しいかもしれないけど、コリーネは精霊?なんだよね」


「うん、私は神様に近しい精霊」

「だからクロアの世界にはいけないんだ・・・」


「なら覚えている限りのコリーネの姿を覚えて、花と一緒に御神体を作って毎日祈るよ」


コリーネが泣いている


「ありがとう!!いっぱい祈ってね!」


それでも元気そうな声で話す

周囲の光が強くなっていく

ここでの出来事がとても短く感じた


「コリーネと話せてよかった」

「またね、俺の最初の精霊の友達」


「私に名前をくれてありがとう!!」

「またきてね!!」


呼んだのはコリーネなのにまた来てとは、難しいことを言ってくれる


「そうだ、クロア」


もうこの空間がおわる、そんな瞬間


「クロアの固有魔法、かなり変わってるけどクロアなら扱えると思う、頑張ってね!!」


笑って手を振っている、思わずこちらも手を振ってしまう


周囲の光が強くなっていく

花びらが舞っている

鼻孔に幻想的な香りがしている

ここはどこよりも暖かくて、綺麗で、寂しがりな友達がいた

またここに来てみたい

そう思える、世界で一番

美しい花畑だった

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