成り上がり貴族の宿命 ⑦
「それでは閣下、よろしくお願い申し上げます」
「ええ、任されたわ」
「けどまだ信頼したわけではないわよ?」
「理解しております、閣下にまず成果を見ていただくために、次の暖季には結果をお見せします」
「あら、そんな早くできるものなの」
「恐らくではありますが、僕の見解が間違えてなければできるはずです」
「あなたが言うなら期待するわ」
「ありがとうございます」
「こちらこそ有意義な時間だったわ」
「今日はここまでにしておきましょうか、ここまで長くなってごめんなさいね」
「いえ、僕にとっても嬉しい話ではあったので」
「改めて申し訳ありません」
「いいのよ、もう終わった話だわ」
「それに・・・」
「?」
(何かまだあったかな、流石に心当たりがないけど)
「今回は、と言っただけだもの」
「えっ!?」
「ふふっ、あなたでも慌てることがあるのね」
「その顔を見れただけでも収穫だったわ」
「お戯れを・・・」
(むしかして茶会を開く度に声を掛けてくる気か?)
「では、これにて失礼致します」
「また誘うわ」
「お声を掛けていただければ、また参ります」
クロアが部屋を後にする
「はぁ・・・」
部屋の中に沈黙が続く
「何をしているの、もうお客様が帰ったのだからあなた達も早く出ていきなさい」
護衛の兵士達がハッとする
バタバタと護衛が部屋を出ていく
部屋にはインチェンス侯爵とローゼスだけになる
「お疲れ様でした、お嬢様」
「紅茶をお入れします」
「ねぇローゼス」
「なんでしょう?」
「私、ちゃんとできていたかしら」
「私から見たら少々焦っていたようにも見えましたが・・・恐らく大丈夫だったかと」
「まったく、厄介な物ね」
「何より話せば話すほど少年には思えないわ」
「私も案内をする間少々雑談などをしましたが、受け答えも含めて六歳の所業では無いですね」
「ホントにね・・・それに」
「ほっほっほ、どうぞ」
「ありがとう」
侯爵はもっとも安心できる紅茶を飲み心を安らげていく
彼女にとってこれは大きな挑戦なのだ
そして賭けでもある
「次の茶会が楽しみだわ」
「大分時間が経ってるな、二人は大丈夫かな」
部屋から会場までは少し距離がある
城の中を走るだけでも運動になりそうだ
「父上の方は上手くいっているかな・・・」
「襲撃などがあったとしても父上の護衛を突破する方法なんて正直思いつかないけど」
今日は自身の油断を見つめなおす事になった
俺はどこかで貴族を軽視する傾向がある
理由は分かっている、だからこそ改める時だ
別に軽視するのはいい、ただそのせいで油断するのは話が違う
ある意味で助かったとも言える今回の件
「心と頭を切り離せ・・・感情だけで生き残れる世界じゃない事を、もう一度理解しろ」
あの時に理解しただろ
姉様・・・
「・・・甘いものでも食べないとな」
「クッソ・・・」
「これで勝負ありですな」
教会の地下
子供達に魔法を教える修練場がある
ショウナから借りる許可をもらえた四人は模擬戦を行っている
「対峙してみて分かりますが、ここまで差があるのですね・・・」
ルールは簡単
十本勝負
攻撃魔法及びに固有魔法の使用は禁止
木剣が一度でも身体に当たったら一本
味方が当たってもその勝負は負けとなる
結果は
「八対二でイストフィース殿達の勝利ですね、それにしても四人共本当にすごいですね」
ショウナも審判と回復役を頼まれたので見守っていた
「ごめんお嬢様、アタシ・・・」
「大丈夫よフェーネ、私達がまだまだ未熟だったわ」
「そうでもないのでは」
「そもそもフェーネ殿もアルティ嬢も魔法剣士ではないのですか?」
「ヴォルフォ殿の言う通り魔法も駆使して戦うのが本来の私達の戦い方ですが」
「剣にも自信はあったのです、そもそも他人に負けた事の方が少ないんですもの」
ちょっぴり怒ってるアルティの口調を聞いて
やってしまったとうなだれるヴォルフォ
「しかしヴォルフォが言う事も一理ありますよ、アルティ嬢」
「普通の剣技では確かに我々の方が強いでしょう、ですがお二人共まだまだお若い」
「その歳でここまでの剣技、お見事です」
さりげなくウィンがフォローを入れる
「それに私の娘も剣士ですが一度たりとも遅れを取ったことはありませんから」
「何度か危ない時もありましたが、まだまだ伸びますよアルティ嬢も」
すかさず子供自慢に入る
「ありがとうございます、しかし攻撃魔法を使えたとしてもあまり勝てる気がしないです」
「そーだよ、それこそあんたの固有魔法を突破する方法がねぇよ」
当然ウィンも固有魔法を使っていない
「それも埋めてしまえるかもしませんよ」
「そうですね、私も使いこなして見せます」
アルティは固有魔法を授かった
「お嬢様は後で確認するんですか」
「ええ、申し訳ないけど・・・」
アルティが後ろめたくウィン達を見る
「アルティ嬢、お気になさらず」
「固有魔法とはみだりに晒すものではありません、我々の居ない場所でごお使い下さい」
「しかし私は教えてもらったのになんだか不公平な気がして・・・」
ウィンはその貴族とは思えない姿勢を見て
(やはり親子なのだな)
ドーバル閣下にも同じ事を言われたことを思い出す
「では帰りの護衛で私の子供の自慢を聞いていただけますか?」
「むしろこちらから聞きたいです、ご息女も剣士なのでしょう?」
「いろいろ聞いてみたいです」
アルティが笑って答える
「では娘だけでなく息子の話もしましょう、この私から一本取ったことのある息子の話です」
その言葉に冗談だと呆れるフェーネと
「ふふっ、聞いてみたいです」
興味津々なアルティ
「皆様、馬車が来るまで少しだけお休みくださいね」
ショウナがまた食料と水を生み出す
「これが聖女様の魔法ですか・・・」
「あまり多くは使えませんが、この程度でしたら」
「ありがとうございます、いただきます」
「まてお嬢様、まずはアタシが試すよ」
「もう、それは流石に失礼ですよ」
「構いませんよ、でも変なものは入ってませんのでどうかご安心を」
「・・・うめぇ」
「まったく、ではいただきます」
「我々の分まで、ありがとうございます」
そうして、迎えが来るまで休息を挟んで
またちょっとだけ模擬戦をして、帰りの馬車ではウィンの自慢話の熱量に圧倒された二人
そして
「今日はお世話になりました」
「またいつか、お手合わせをお願い申し上げます」
「いえ、こちらこそドーバル閣下によろしくお伝えください」
「・・・あんたも強かったぜ、獣」
「それを言うならフェーネ殿もだ、俺個人を考えればあなたには負けていた」
「よく言うぜ、全体をあれだけ気にしながらアタシをいなしやがって」
「次はアタシが全勝してやるからな」
「では我々はこれで」
「ありがとうございました」
「あっ、そうだ」
「何でしょうか?」
「今度はご子息やご息女とお越しください、私達も会ってみたいです」
「機会があれば連れてまいります」
「楽しみにしております!」
ウィンとヴォルフォはカランクレス公爵領を後にする
イストフィース家の一大イベントが終わりを告げる
母の誕生祭をして、次の日には長男も父も他の領で一仕事
そして二人共、無事に帰還する
家族達にはいろいろ聞かれるが
帰ってきて早々に二人が同じ言葉を吐く
「「今日は流石に疲れたから明日にしよう」」
その親子は眠りにつく、今はただこの落ち着ける寝床で
惰眠をむさぼりたい




