成り上がり貴族の宿命 ②
「クロア様!!」
「どうしたんだ、サキユ」
「クロア様宛にお手紙を持ってきました」
珍しいな、基本的にこの領に来る手紙は父に宛てた物が多い
「ありがとう、見てみるよ」
「この紋章は・・・」
これは、意図的だろうな
「と言う訳でインチェンス侯爵からお茶会のお誘いを受けました」
「しかもカランクレス公爵の依頼と同じ日にです」
「ふむ・・・」
「これは・・・困りましたね」
いつの様に執務室にて父上とヴォルフォと会議である
「意図的なのだろうか」
「意図的と見た方がいいと思いますよ父上」
茶会とは言え手紙には俺だけでも構わないと書いてあるが、目上の貴族に誘われて子供だけで出席すると言うのは少し失礼になる
少なくとも誘われた側である貴族本人と近しい人物及びに護衛がいる
「流石にこの前の事もありますから断るわけにもいきません」
「しかし何故カランクレス公爵様の依頼とぶつかる日にしたのでしょうかね」
「恐らくインチェンス侯爵様からカランクレス公爵様への牽制だろう」
「そもそも我が領は南の領域、つまりこの地帯を統治しているのはインチェンス侯爵様だ」
「違う領の者が自分を無視して私を指名したのだ、侯爵様からすれば面白くもあるまい」
「なるほど、貴族や政治に関してはあまり関心がないものですから助かります」
「簡単に言えばインチェンス侯爵様は警戒してるのだと思いますよ」
「坊ちゃん、警戒と言うと?」
「恐らくインチェンス侯爵はカランクレス公爵が父上にアプローチを掛けているのを知っているはずです」
「その上個人的な依頼までやろうとしている、ならば父上がカランクレス公爵の勢力に加わるのではないかと思っているはず」
「その真意を確かめるためにも同じ日に俺を呼び出したいのでしょうね」
「カランクレス公爵様は武人であるが野心家でもある、常々戦力を欲しているのは国土をさらに広めようと思っている所もあるのだ」
「つまりインチェンス侯爵からするとこれ以上カランクレス公爵に力を付けて欲しくは無いと云う事ですか」
「恐らくな、ただ私としてはカランクレス公爵様の勢力に加わるつもりは無い」
「だけどその事をインチェンス侯爵に伝えるのも良くは無いでしょうね」
「何故ですか、誤解はされない方がいいのでは?」
「いや、ぼかした方が良いでしょうね」
「インチェンス侯爵に対する牽制にもなりますからね」
「その年でそれがわかるのは恐ろしいな、流石我が息子だ」
そこまで言われると少し恥ずかしいが
「どちらに対してもどこに属するか伝えなければ、相手もこちらに対して動きにくくなりますからね」
「カランクレス公爵に付かないのであればインチェンス侯爵の勢力に入る事になる、しかし我々は正式にインチェンス侯爵に仕えているわけでは無い」
「何かあればカランクレス公爵側に付くかも知れないと思ってもらう方が都合が付きやすいんだよ」
「何となくわかりました、けどいざどちらに付くか迫られたときに困るのでは?」
「そうだね、でも今はそれほど緊迫した状況でもないからそこまで迫られる事も無いと思うな」
「なんにせよインチェンス侯爵様からのお誘いも断る事はできん、どうしたものかな・・・」
「姉様と一緒に行くのが一番ですかね、母上はいざと言うとき領地に居てもらわねば困ることもあるでしょう」
「この領の責任者が誰もいないんじゃぁ領民達が困る場合はあるでしょうからね、しかし護衛が困りましたね」
「俺個人としては姉様と二人で行くならいらないと言いたいけど・・・」
「流石にそれは認められん、お前達の力量はこの身が一番理解しているがそれでも貴族が護衛も付けずに他の領に行くなど危険すぎる」
「お茶会を襲いに来る賊などいないとも思いますが・・・」
「それに子供達だけで行くなどリリルが絶対に認めるわけがないだろう」
それはそうだ、母上がもっとも認めないだろうな
俺とエリア姉様だけで行く事を父上が認めたら相当母上に説教されるだろうしな・・・
「ならカランクレス公爵のお嬢さんの護衛の方を割きますか?」
「いや、そもそも少数精鋭の我々がさらに減るというのはカランクレス公爵様に対して失礼が過ぎるだろうな」
「完全に板挟みですね、こういう時に人手が居ない我が領は本当に頭が痛い・・・」
「それは言ってくれるな、この冬に新人として人員が増えることもないだろう」
「依頼が成功し尚且つ農業の収穫などがあれば来年は人を増やすこともできるだろうが、今はその余裕はない」
「ですね、無いものねだりに意味は無かったですね」
「ではサキユを連れていきますよ、護衛としての戦闘力は無いですが俺と姉様からしたら一番気心が知れているし、彼女の能力は役に立ちますから」
「うーむ・・・リリルが納得するだろうか・・・」
「母上には悪いですが明後日にある誕生日に精一杯お祝いして、お願いしてみますよ」
「はぁ、それしか方法が無いか」
「こうなったら腹をくくるしか無いですね、隊長も坊ちゃんも」
「ヴォルフォもだよ、カランクレス公爵の方は頼んだよ」
「もちろんです、坊ちゃんも何があるかわかりませんから気を付けてください」
「では俺はこの事をエリア姉様にお願いしにいってきます」
「リリルの誕生日も近いのだ、無理はするなよ」
「当然です、母上を一番祝うのは俺ですからね」
部屋を出るとサキユが飛んでいるのが見えたので呼び出した
「サキユ」
「あ、クロア様」
「お話があるから一緒に付いてきてくれるかい」
「はい!クロア様と一緒だー!」
随分はしゃいでいる、そういえばこの頃仕事を頼むばかりで一緒に居る時間が無かったな
「サキユにも頼みたいことがあるからね」
「なんでも言って!」
サキユと二人で姉様の所に向かう
姉様は快諾してくれが
その後姉様の鍛錬に付き合わされ続けるのは知っていた未来だった
寒空の下で打ち合いの音を響かせる
それを嬉しそうに眺めているハーピィ
そこに更に彼らの友人や家族も加わっていく
子供達だけで競い合い、高め合う
その光景は、この領では見慣れた様子なのだった




