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貴族とは、金が掛かる ④

「一先ず何とかなりそうですね」


父の執務室で報告書を出し合う


「うむ、復興及びに今年の冬は越せそうだな」


「よかったですよ、もしかしたら寒い冬に飯もろくにありつけないかもしれないとディンが嘆いていましたから」


「あいつも来年には家族をこの領に迎えたいと言っていたからな、まだまだ精進せねばな」

「それでクロアよ、実験していた畑はどうなったのだ?」


父が報告書を読みながら農業における成果を聞いてくる


「結論から先に言うと成功しました、色々試したかいがありましたよ」


「おお!」


父上とヴォルフォ歓喜している

俺も今回の件で成果がでたのはかなり嬉しかった


「恐らくですが今から植えて冬に収穫できそうです、寒さがきついですが収穫を手伝ってもらえる人が居れば給金を出して手伝ってもらおうかと」


「それなら俺は手伝いますよ、坊ちゃん」


「ありがとうヴォルフォ、エリア姉様達も手伝いたいって言ってくれてる護衛も兼ねてお願いするよ」


「任せれました」


王都で父に買ってもらった本を読み解き、かなり農業革命が起きている

その中でもウォーター(生活水魔法)を使った水やりと魔物の骨を使った肥料である


「デモールから買っておいた果物の苗木とトルト叔母様から頂いた野菜の苗でも育てましょうか」

「取り合えずこの二つを育ててみて、どれくらいの成長スピードなのか試していきます」


「いいだろう、期待しているぞ」

「今日はここまでにしておく、ヴォルフォはできるだけ皆に安心するように伝えておいてくれ」


「わかりました、それじゃあ今日は安心して飲めそうです」


「ふっ・・・安心して酔うといい」


「では俺もこれで失礼します、ヴォルフォも飲みすぎは気をつけてくださいよ?」


酒浸りを注意しつつ部屋を出る、と言ってもヴォルフォは酒癖は悪くないから大丈夫だろうけど


「まるで母親の様な事を坊ちゃんに言われると大人として悲しくなりますよ・・・」


「お前も妻や子供を作ればいい、獣人でも家庭を持っている者はこの国では多いだろう」


「相手が居ないんですよ、それに俺自身もそこまで望んでないのが原因でしょうけどね」


「では今日は私も付き合ってやろう、久しぶりに酒を出してやる」


「隊長の秘蔵ですか?こりゃ楽しみだ」


冬を乗り切れる目途が立ち、ウィンも嬉しいのかもしれない

男二人の酒盛りが今夜は行われそうである





「さてと」


(まずはデモールから買った果物の方から植えるか)


アップアと言う果物らしい、王都で見かけたが赤くてみずみずしい果物だった


「確かこれは木に成長するんだったかな、後でサボンにも聞きに行こうかな」


少しずつ森を開拓していき、今では一つの畑になっているところに苗木を植えて行く


「これは大変だな・・・」


数が多い、一人でやるには少々量が多いかもしれない


「この頃はみんな忙しいから仕方ないか」


そろそろ母上の誕生日なので領内はひそかに忙しい

姉様や妹達も何か考えているようだし、サキユも配達でかなり動き回っている

かく言う俺もラックモックと料理の打ち合わせをしてたりする


「なんとか今日中に終わらせよう」


無心で苗を植える作業を続ける





「ふぅ、トルト叔母様の方は無理だな」


アップアの苗木は終わる目途が立ってきた


「ちょっと休憩するか」


脇に置いて置いた本を読みながら水を飲む


この本に書かれている知識が凄まじく助かっている

【自然に存在する物すべてに魔力は内包されている】

これを試した実験結果がこの本には書かれている

そのおかげで新たな事を試すことが俺にもできた


まず土や木、草花といった自然に自生している物に魔力が内包されているならできるだけ高い魔力を内包させた方がより成長するのではという事

これは本に書いてあったが魔力を与え続けた木とそうではない木、同時に育ててみたらしいが明らかに魔力を注いだ方が成長が早かったらしい

つまり土に魔力を注ぎ続ければ野菜や果物も成長しやすく、より早く収穫ができるという事らしい

実際に土に魔力を注いだ魔力土(まりょくど)なる商品もある

この土を使えば栽培がしやすいそうだ、しかし効果は永続的ではない

魔力と言う事は当然限度がある、もちろん自然の物も我々の様に魔力を回復させているらしいが生きている者達より回復が非常に緩やかである事が証明されていた

つまり定期的に回復をさせなければ効果は弱まっていく一方だという事

しかし魔導士であったとしても広大な畑の土すべてに魔力を毎日注ぐことは難しい

本来はソイール(生活土魔法)で耕しやすい柔らかさにしたり固くしたりするのだが、これを用いて魔力を注ぐ

俺もやってみた事があるが畑が広ければ広い程魔力の消費は半端ではなかった

しかもこれで注いでも土そのものが魔力の吸収力が悪いのか、かなり微々たるものらしい

それ故この魔力土を使った果物や野菜は少し高価に取引されている


そこで本にはこう書かれていた

【魔力を吸収させやすいようにすればこの魔力土はかなり作りやすい物なのではないか】

これを見てウォーター(生活水魔法)で水やりをすればどうなるのだろうと思っていた

実は魔法を習う上でもっとも覚えたての時に教わる事の一つとして

ウォーター(生活水魔法)で喉を潤してはならないという事を教わる

何故なのか、これは魔法だからと言っていいだろう

普通の水であればそれを飲み、喉を潤し身体に水分を行きわたらせるだろう

しかし魔法でできた水は、飲むことと喉を潤すことはできるのだが身体に水分は一切溜まらないのだ

魔力でできているが故にそれは魔力として身体に分泌される

つまり身体に水分が溜まらないので、ウォーター(生活水魔法)だけを飲み続けていると脱水状態に陥る

覚えたての頃だとこのウォーター(生活水魔法)ヒート(生活火魔法)は特に気を付けるようにと何度も言われてきた

何処の国でもこの二つを覚えたての子供が亡くなる事が後を絶たないのだという

火魔法を使えると思い込み火傷や火事を起こして亡くなったり、水が飲み放題だと思いずっと遊んでいたら身体が急に動かなくなったなど

だが逆に考えればこの水は魔力で出来ている

つまり土や木にはかなりの栄養のある水になるのではないかと思った


実験自体は成功で終わっている

四輪の花と四つの木を用意した

一つは普通の水を

二つ目には普通の水とウォーター(生活水魔法)を混ぜたものを

三つ目はウォーター(生活水魔法)のみを

四つ目にはウォーター(生活水魔法)にかなり魔力を込めたものを


この中で両方とももっとも成長していたのは三つ目のウォーター(生活水魔法)のみの物だった

四つ目は三つ目よりも成長はしていたものの、その差は微々たる物であった

早く吸収するにも限度があるのかもしれない


ただここで一番問題になるのは畑に水をやるほどの量の魔力の水が必要と言う事

普通の人がウォーター(生活水魔法)を使った場合一日せいぜいバケツ五杯程度

広さにもよるが流石に畑全土を補うほどの量を作るのは無理がある

だが俺にはコリーネからもお墨付きの魔力量があるのでこれはゴリ押せた

と言うか使い慣れているせいか一日かなりの量を作れるので農村の人達にも分けれないかを考えていた

結果として俺が水を出し続けることにより農業がかなりの発展をしている


「よいしょっと」


最後の苗木を植えて完了する


「やっぱり夕方になると寒いな」


早く家に帰って暖を取ろう


とは言え水をずっと俺が補い続けるのも限度がある気がする

なにか別の方法を考えなければならない






頭を唸らせながらクロアは家に帰る

家族の事、商売の事、魔法の事、領の事

貴族とは面倒なことが多い

金銭問題や家柄、爵位、跡取り

考えれば考える程キリがない

だがそれを、考えるのやめて楽に生きたくなど彼は無かった

きっと偉そうにするのは楽なんだろう

きっと誰かを貶すのは楽なのだろう

きっと出来上がってるものを奪うのは楽だろう

そんな奴らを見てきたからこそ

同じような奴になりたくなどないから

今も彼は、考え続ける

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