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貴族とは、金が掛かる ②

「こんな感じかな」


庭で一人

何かを作っているクロア


(イメージが付きやすい物ならほぼ見ずに完成させられる、なので少しの間だけ見た物を再現しようとするのにどれだけ時間が掛かるかと思って作ってみたけど)


なかなか精巧にできている、ここまでできるならそろそろ良いだろうか

そう思って父の執務室に向かう


「父上、いらっしゃいますか?」


「クロアか、中に入れ」


「失礼します」


部屋に入ると母上とヴォルフォが居た


「あら、クロアも呼ばれたの?」


「俺は自分から来ましたよ、お二人は呼ばれたのですか?」


「はい、隊長が相談があるとの事で」


父上が二人に相談・・・となると俺も話そうとしている事につながってくるかも


「クロアも聞いておいてくれ、三人にはわかっていると思うが我が領はいまだかつてない程の危機的状況だ・・・」

「知っての通り盗賊による被害がかなり大きかった、ほとんど無傷で勝利した戦果は喜ばしい事だったが・・・当然被害も過去最高とも言えなくない」


「盗賊共を追い込むためとは言え、他の村にまでいろいろやりましたからね」

「坊ちゃんのアイディアで戦勝はできたものの、何も残っていませんから・・・」


「侯爵様から頂けるだけ頂いたと聞いていたけど、やっぱりそれだけじゃあ厳しいのね」


「ああ、生き残っている者達が多いのは素晴らしいが同時にそれだけ衣食住に金が掛かるからな」


「もしかしたらお父様が助けてくれるかもしれないけど・・・あまり頼りにはしないでね」


「わかっている、そんな事を頼むために呼んだわけでもない」

「今の現状を君にも知っておいてほしかったんだ」


「隊長はほぼ駆け落ちに近い状態ですから、夫人のご家族からの援助は不可能でしょう」


「クロアの前でやめろ、まったく」


「別に構いませんよ、お二人の逃避行はよくディンからも聞いてますから」


俺の両親から少し恥ずかしさと怒りが伝わってくる、話題を逸らそう


「ところで父上、俺が来た理由についてもそれが理由だったりします」


「つまり金問題を解決する、と?」


「ええ、農産業の方はまだ結果が出ていないのでなんとも言えませんが俺の固有魔法でも使って面白い事でもしようかと」


「クロアの固有魔法って確か『解体』だったかしら、薪でも売るつもり?」


リリーと同じことを言っている・・・


「いやいや、違いますよ母上」

「三人共これを見てください」


机に一つの模型と木で彫られている人形を置いた


「これはもしかして、私なのかしら?」


「はい、母上をイメージしてます」


「よくできていますね坊ちゃん・・・本人にも似てる」


「うむ、これはかなりの出来だな」

「そしてもう一つの模型は我が家か」


「その通りです」


「しかしこれで何を儲けると?」


「この前デモールから買った書物を覚えていますか父上」


「もちろんだとも、彼があそこまで押してくるのは珍しかったからな」


「それがこちらの書物なのですが、これは魔道具の百科事典の様なものなのです」


「魔道具の辞典・・・なるほど、それで魔道具の役割を代わりにお前が果たそうと言うのか?」


「いえ、まずはこの人形の方なのですが」

「父上は覚えていますか、ベニア姉様が騎士になった日にとんでもない額の魔道具を使ったことを」


「写真魔道機だったか、確かそんな名前だったな」


「はい、あれの主な使用用途は貴族が結婚相手を探す時に使う物だと言うのはご存じでしたか?」


「知っているわ、綺麗に撮ってくれるからついつい何枚か取ってしまうのよね」


確か母上の実家に飾られていると聞いたことがある、会った事は無いがお爺様は娘を溺愛していたのかもしれない


「ですがあの写真魔道機は貴族相手にしか使わないことを前提にしているためかかなりの値段が掛かりますよね?」


「王国内でも屈指の値段だな、あれで自分の娘や息子が写真にも残るし他の貴族達にも紹介できるのだから安いとも思うが」


「そんな値段を払えない貴族や写真は残したい平民などが使うことはまず無理でしょう」

「そこで俺の固有魔法です」

「写真の様に色が付いたりはしませんが人形として作ることができます」


「つまり写真の代わりに人形を作るという事か」


「はい、一時ぐらい時間をもらえれば基本的にはその人と同じ人形を作ることが可能かと」

「そしてもう一つはこの模型です」


「隊長・・・この精巧さは・・・」


「ああ、わかっている」

「そもそもクロアもそれをわかっている上で相談しに来たのだろう?」


「はい、人形はあくまでおまけです」

「この模型は我が家をイメージしたものですが、こちらに関しても初めて見る物でも一時の時間をもらえるなら作れそうでした」


父上とヴォルフォがかなり悩んでいる、恐らく俺の予想通りなら


「隊長、これはもはや革命の一つに近いのでは・・・」


「わかっている、もしもここまで精巧に敵のアジトや基地を模型で作れてしまえば相当有利な戦闘になるだろうな」


やはり正しかったみたいだ、この辞典には絵を映し出す写真魔道機はあったが、立体的な模型を作る魔道具は無かった


「これならかなり売れませんか、固有魔法に関してもずっと隠し通せる物でもないのでいっそ大々的にこんな模型や人形を作れると言っておいた方が勘違いも起きてくれそうですから」

「俺自身を軍事的に扱うのは反対されるでしょうから、誰かと言えば土地や家を売買している商人の方に売りたいですけど」

「そんな適任が母上のご家族にいらっしゃいませんでしたか?」


両親は気づく


「トルト叔母さんになら秘密なども守ってもらえるのではと思いまして、如何でしょうか?」


「大丈夫だと思うわ、あの子もクロア達の事を可愛がってくれているもの」

「あなたはどう思う?私はクロアの意見は一考の余地があると思うのだけど」


「確かにいい案だ、しかしクロアよ、それは木が材料でなければいけないものなのか」


「そうなりますね、行く行くは石や鉄でも試してみたいですが今は俺の修練が足りないので木だけです」


「そうか、取り合えずトルト嬢に手紙を書いておこう」


「それなら私がやるわ、あなたはクロアの人形の方をどうするか考えて頂戴」


いつになく母上が乗り気でいてくれている

久しぶりに妹に会えるかもしれないから、楽しみなのかもしれない


「ありがとうございます、俺も修練を重ねていきます」


「相変わらず坊ちゃんはとんでもないところに目を付けますね」


「皆が見てないところをいつも探しているだけだよ」


「でも坊ちゃんの魔法がかなり使い道がある事、俺達の中でも口外しないようにしときます」


「いつもお世話になります」


冗談めかして頭を下げる


「これぐらいならいつもより簡単な事ですよ」


「さっそく手紙を書くわ、クロアもサキユちゃんに手紙を渡すこと伝えておいてね」


「わかりました、俺もこれで失礼いたします」



どれぐらいの価値になるかはまだわからない

それでも何もしないよりは明らかに進めるはず




少しの期待と不安を募らせながら、その時を待つ

時が来るのが以外にも早いということを

クロアはまだ知らない

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