表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/21

長く、眩しい夜

燃えている


きっとかなりの防衛、あるいは罠があると思っていた

しかし目の前に見える光景は夜なのに真昼の様な明るさと熱さだけが身体に伝わっている


「な・・・にが・・・起きてやがる・・・!!」


盗賊達は困惑していた

村があるのはわかっていた

だからそこに逃げ込んだのだと思った

だが彼らの目に映るはずの村は煙と炎に包まれていた


「これだけ壮大なのを見ると本当に大丈夫なのか心配になりますね・・・」


「しかしこれなら後ろを気にせず戦るってもんだぜ!!」


さらに後ろから増援が来ている

すでに盗賊達は壊滅的な状況だった


「くっ・・・!」

「おい!あの火を消せるか!?」


「できない事はないけどかなり魔力使うから消したら私は戦わないよ~?」


「構わねぇよ」

「お前ら!気合入れろや!!」


残っている者達で戦う盗賊達


「なかなかやるな!」


「敵を褒めないでくださいよ、隊長」


人との戦闘に慣れているのだろう

元騎士の四人がかりとはいえ、やはり人数差は埋められない


「おらぁ!!」


「しっかり盾してください」


「わかってらぁ!」


剣士二人、弓兵一人、盾一人というバランスは取れているが多勢に無勢

腕の差はあるものの一人一人無力化するのは時間がかかってしまう


「チッ・・・早く消せ!」


「はいはい、今やってるって~!」


「!」


「あれは・・・水の魔法ですか・・・」


「火を消す気か!」


「我々も時間をかけていられないようだ・・・畳みかけるぞ!」


まだ夜は明けない







「うぅ・・・暑い・・・」


「だから後ろに下がっていても良いと言ったでしょう」


「だって・・・私はクロアの護衛だから!」


「わかってますよ、ただ今は特に必要ないと思いますけど!」


村を囲う木壁を魔法で燃やしている

ただ燃やすのでは無く、風魔法も応用しながら木を燃やす

より燃焼させるとすぐ壁が無くなってしまうがこれは父上達を信じるしかない

より派手に、より苛烈に見える方が戦意を失ってくれるかもしれないから

襲いに来た村が燃えているなんて彼らからしたらたまったものではないだろう

ただし燃えているのは木壁だけ、流石に村の中まで燃やしてしまっては本当に意味がない

とはいえ村を囲っているすべてを燃やしてしまっては煙に囲まれて大変になる

故に盗賊達には来てもらう方向を強制させるためにも皆に奇襲をお願いした


「本当に・・・クロアは魔力量が多いわね」


煙や火がこちらに飛び火しないように常に外側へウィンド(攻撃風魔法)を送っている

結構範囲が広いから予想以上に魔力消費が激しいがまだ続けることは可能だ


「父上達の状況がわからないから何とも言えないけど・・・まだなんとかなるよ」


そんな時だった


「!?」


燃えているはずの木壁に違和感

火の揺らぎが弱くなっているのを感じた


「こっちを狙ってくるのか」


当然考えてはいた

向こうにだって魔導士が居るのだ

当たり前の様に消しにくるだろう


「俺に出力で勝れるかな・・・!」


風だけではなく、木に送る魔法に火も混ぜる


(父上達に行かないのは寧ろ好都合だ)


クロアは初めての魔法勝負で少し心が高ぶる

純粋な魔法での戦いは戦争や国の闘技場などで行われたりもする

ただこの小さな領ではクロアと戦える程の魔導士などは居ない

魔物などが居るのだが、子供だったクロアには戦わせてはもらえなかった

彼からしたら初めての経験なのだ、お互いの魔法をぶつけ合うというのは







「くぅ・・・」


(なにこの炎~、全然消えないんですけど・・・)


「おい!まだか!」


着々とウィン達が盗賊を無力化していく

人数が減っていけばいくほど不利になっていく盗賊達


「わかってるけど~!」


魔導士とはそもそも魔力を扱い、攻撃などを行う者達の事を指す

生活魔法ならば誰でも扱えるが攻撃魔法などは修練などを必要とする

どんな魔法でも覚えるのには修練が必要だが、要する時間が違う

生活魔法などは一日あれば覚えてしまう者が多い

しかし攻撃魔法となると場合による

生活を潤す魔法は皆が使っているからこそ皆がイメージが覚えやすいのだ

だが攻撃となると普通の人ではイメージが起こしずらい

飛んでいく火、浮き上がる水、局所的に吹き荒れる突風、空中から落ちる土

特殊属性などはさらに覚えずらいと言われている

人それぞれ得意な属性などがあるのでどれが扱いやすい、上達が早いなども様々だ

その中で女魔導士は水魔法は得意な方だと自覚があったが

魔力量と出力の底上げにはその修練の比にはならない程の時間を要する

故に


「う~・・・」


消えない

この火の向こうに誰かが魔法を使ってることは分かる

しかもそれがとてつもない程の魔力であることも

だからせめて人が通れるぐらいの道を作ろうとしている

だけどまったく押し切れない


「なんなのもう~!」


火力が弱くならない

水と火がぶつかり合っているせいか、最初の時より煙がより多くて周りが見ずらい

だが少しずつ、火が弱まっていく

押し切れる

よく見れば木壁が小さくなっているのがわかる

時間がきたのだ

好機と見るとさらに魔力を絞る


「道作るから早くいって~!」


しかし


「?」


その声に反応できるものは、もう誰も居なかった

振り返ってみればそこには

剣を突き付けている獣人がいた


「あんたの仲間はもう抵抗できないようだ」


「・・・そっか」

「じゃあ降参、煮るなり焼くなりどうぞ~」







「よくやった、二人とも!」


父上が俺と姉様の頭を撫でる


「私、結局なにもしなかった!」


不服そうな姉様

そもそも姉様が戦うといった時点でこの父が素直に戦わせるわけないとも思っていたので、ある意味で予想通りではあるが


「姉様が居たから俺は安心して魔法を使えましたよ、ありがとうございます」


「その通りだ」

「エリア、お前が居たから私達も安心して任せられたのだ」


「・・・ふんっ」


照れている


「クロアもよく持ちこたえた、しかし・・・」


「想像以上に燃え広がってしまいましたね・・・」


気づけば木壁は半分ほど無くなっている

これでは動物や魔物が入りたい放題となってしまう


「早急に手を打たねばならんな・・・」


「盗賊達の生き残りも侯爵様に引き取ってもらわないといけませんね、もちろん迷惑料もきっちり頂きたいところですが」


ヴォルフォが戻ってくる


「盗賊達は離れの倉庫に入り切りました?」


「ええ、坊ちゃんの言う通り一人一人離して縛っておきましたよ」

「魔導士さんはあの特殊な石を首飾りにしてもらってます」


魔封石

名前の通り魔法を抑え込む石

しかしながら範囲が微弱で身に着けていると魔力を弱めるのは確かなのだが加工したりするとその効果が著しく弱くなる

しかも魔力が多い者だった場合たいして効果が無い

クロアが身に着けた場合だと普通に魔法を使えてしまうが威力は下がる

普通の魔導士が身に着けても魔法は使えないこともないがかなり大変で魔力切れを起こす


「ありがとう、一先ず皆無事でよかったってところですね」


「何を言う、この勝利はお前がもたらしたと言っても過言ではないぞ」


「そうですよ坊ちゃん、素晴らしい状況判断と作戦でした」


「ふふん、流石私の弟だわ!」


皆に撫で回される


「取り合えず、皆に報告と祝勝会・・・とまでは言えないが労いの会でもやらんとな」


「久々に酒が進みそうです」


「馬鹿を言え、と言いたい所だが今回ぐらいはいいだろう」


ヴォルフォが嬉しそうにしている

意外に酒好きなのだ


「皆、お疲れ様でした」


「お前が一番動いていただろうクロア」

「だからこそ、お前もゆっくりと休むのだぞ」


「わかっていますよ、でも皆の心を落ち着かせるのが先でしょう?」


ゆっくりと戻っていく、穏やかな日常に

住民達、家族に報告する

村の人達もようやく安心できる

しかしながら復興するのにはどうしても金が掛かる

侯爵様にこのツケは払ってもらわなければ困る

盗賊の次は貴族の戦いをしなければならない

やることはまだまだ多そうだ・・・




長い夜が明ける

随分と眩しい夜だった

空が光で滲んでいく

いつも通りの朝が、また始まる

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ