戦いとは、徹底的にやるべき事
「クロア様」
「おかえり、サキユ」
「盗賊達は森の中で野営をしていました!」
「そっか、ありがとう」
「一先ずサキユも休んでいいよ」
「必要ありません!クロア様のお役に立つ事がボクの使命だから!」
この領で唯一のハーピィ族であるサキユ
前に色々あって俺の奴隷に契約上なっている
奴隷とは言えある程度の自由も約束されていて、他の領地の人達との手紙の運搬や今のように敵の偵察などをしてくれている
「なら今は休むことが俺の役に立つ事だよ、母上達の所で休んでおいで」
「そう言う事なら・・・いってきます!」
駆け足で母上や姉様の休息所に向かっていった
「父上」
「わかっている、私も考えているところだ」
「困りましたね」
「何が困るってんだ?」
「近くにいるなら待ってりゃいいじゃねぇか」
「それではこちらも疲弊してしまうだろう、全員あなたのように体力馬鹿ではないのですよ」
「それにもし今日の夜来るかもしれないからと言って我々も夜間警備をしなければならない」
「今、隊長達が困っているのは今日の夜来るのか明日来るのかで困っているのだ」
「あ~、なるほどなぁ」
「作戦上待っているしかできないのは痛手だな、ある意味で私達はすでに後手に回っているとも言える」
「では強制的に今日の夜に来させますか」
俺の発言に皆がこちらを見る
「クロア様、そんなことが可能なのですか?」
「坊の話なら信じるぜ!」
「簡単・・・とまでは言わないけど、可能だとは思うよ」
「言ってみなさい」
「作戦の事も考慮して父上達に奇襲をかけてもらいます」
「ほぉ、場所はわかってるしいいんじゃねぇか?」
「ただし奇襲をかけたら即刻撤退すること」
「わざとおびき寄せると?」
「奇襲だから機動力のある人二人とかでやってもらいたいな、奇襲が成功したらそのまま«あれ»を使って盗賊達のお尻でも蹴り上げるよ」
「なるほど、成功すれば焦って隊列などを整える時間もなく追ってきてくれるかもしれませんね」
「サキユの報告通りなら問題ないと思うな、恐らく彼らは一人のリーダーと魔導士について行ってるだけのならず者っぽいからね」
「それにヴォルフォに頼んでおいたことも成功してるみたいだ」
「行った村々の牧草を燃やせってやつですか」
「うん、おかげで奴らの乗っていた馬達はほぼほぼ何も食べれてないはずだからかなり移動が遅かったはずだよ」
「確かに、当初の予定よりここまで来るのちょっと遅かったですね」
「それにそんな馬なら人を襲うほどの元気もないだろうから、馬でこちらに突撃してくる事もないだろうからかなり有利なはず」
「坊は相変わらず色々考えてるなぁ、俺には何が何だかさっぱりだ」
「いいだろう、クロアよ私とヴォルフォで奴らに奇襲をかけに行く」
「その後はお前の作戦通り動いてみなさい、我々も全力で戦うがくれぐれも無理はするなよ」
「わかってます、父上」
「では夜になる前に集まっている住民達に再度、避難場所の指示と注意を、もしかするとここが戦場になるかもしれんからな」
「「「はっ!」」」
まだ日が高い、各々できる限りの準備を進めていく
「では、隊長と俺で行ってまいります」
「ヴォルフォ、父上を頼むよ」
「はい、坊ちゃん」
「クロアも無理はするなよ、この作戦はお前が重要になる」
「わかっています父上」
「クロア様なら大丈夫だよ!」
「サキユも、準備はできてる?」
「バッチリ!」
「行くぞヴォルフォ!」
「はっ!」
二人が夜の森を駆けていく
この暗い中でも馬を走らせている二人がどれだけこの森を理解しているかがわかる
「俺にはまだ無理だな・・・」
こちらも準備を始めよう
「皆、避難場所に行ってください」
集まっている住民達に声をかける
「クロア、私は戦うわよ!」
「構いませんよ、姉様は一応俺の護衛ですからね」
「ふふん、私に任せときなさい!」
「おい!クロア、あたし達だって戦いてぇよ!」
そうだそうだとリリーと何人かの子達が文句を言ってくる
「何言ってんだい、リリル様達の所に早くいくよ!」
「離せよ母さん!」
「リリー」
「なんだよ、子供だからダメだってか?お前も一緒じゃねえか」
「違うよ」
「俺の妹達を頼むよ」
「!・・・わかったよ、ぜってぇ守ってやるからな!」
「あら、なら私もお願いしようかな?」
「エリア様の家族はあたしが守りますから、安心して戦ってください!」
「ふふっ、リリーも気を付けてね」
「はいっ!」
リリーとリリーの母に手を振りながら見送る
「姉様は流石ですね」
「それを言うならあんたもでしょ」
姉弟で笑いあう
住民達は不安でたまらないだろう
リリーの母も少し震えていた
母上なら皆をまとめてくれているはずだ
父上達は大丈夫だろうか・・・
「隊長、この先に盗賊達がいます」
「早駆けをしながら一当てする、できる限り捕まった村人達に被害を出すなよ!」
「了解!」
「ふん、この速さなら夜には着けるか」
「まだ着かないの~?」
「うるせぇ、お前は馬に乗ってんだから疲れてねぇだろうが」
盗賊達はクロアの予想通りかなり疲弊している
馬の足も奪われ食料も無く、さらった村人達も歩かせているが戦力ではない
(くそったれが・・・小賢しい領主だ)
疲れている足を動かしながらクロア達の居る村へを進み続けている
しかし
「お頭ぁ!!」
「なんだうるせぇぞ!」
「敵襲だぁ!!」
二頭の馬が早駆けをしながら攻撃をしてくる
「うわぁ!」
「ぎゃ」
「隊長!報告通りの人数です!」
「そうか、ここは一旦引くぞ!」
「逃げる気か!」
「そいつらを逃がすな!」
盗賊達がウィン達を追いかけようとするが
「待てテメェら!!!」
彼らのリーダーの一喝で動きが止まる
「あれは偵察だ、うかつについてってんじゃねぇ」
「だろうね~」
「ワオォォォォォォォォン!!!」
盗賊達にも遠吠えが聞こえてくる
「ヴォルフォの合図か」
サキユが夜空に居るのが見える、あのあたりか
「フレイム!!」
クロアからボールの様な火が二つ発射される
盗賊達の位置にそれらは降り注ぐ
「クロア様特製のこれもあなた達にあげるね」
サキユがさらに何かを森に注いでいく
「・・・みんなよけて~!」
女魔導士の声が盗賊達に届く
瞬間
ボォォォン!!
辺りが火に包まれる
「うわああああぁぁ」
「くそったれ!」
(どっから飛んできやがった・・・しかも火のまわりが早すぎる!)
「逃げろおおお」
「奴らを追え!あいつらの方向は無事だ!」
「なっ!?」
「待てお前ら!」
もはや統率が取れる状況では無かった
パニックになっている盗賊達
「どうするのこれ~?」
「・・・こうなったら追うしかねぇ、領主を殺して何もかも奪う」
「お前にも戦ってもらうぞ」
「はいはい、それが契約だからね~」
盗賊達が追っていく
その先にある光景がどんな地獄かも知らずに